ディープ・ブルー (コンピュータ) 概要

ディープ・ブルー (コンピュータ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/03 04:53 UTC 版)

概要

大学の研究室で生まれたチェス専用スーパーコンピュータ「ディープ・ソート」の研究を引き継ぐ形で、IBMが1989年より開発を開始したもので、ディープ・ソートを破った当時チェスの世界チャンピオンだった、ガルリ・カスパロフを打ち負かすことを目標とした。当時のIBMの開発チームの責任者は後の香港大学電子商業科技研究所所長の譚崇仁中国語版[1][2]、主任設計者は後に中国北京マイクロソフトリサーチアジア上級研究員[3][4] となる許峰雄だった。

ディープ・ブルーは、32プロセッサー・ノードを持つIBMのRS/6000 SPをベースに、チェス専用のVLSIプロセッサを512個を追加して作られた。プログラムC言語で書かれ、オペレーティングシステムAIXが使われていた。開発チームは、グランドマスターであるジョエル・ベンジャミンを含めて6名。

1秒間に2億手の先読みを行い、対戦相手となる人間の思考を予測する。予測の方法は、対戦相手(この場合カスパロフ)の過去の棋譜を元にした評価関数(指し手がどのぐらい有効かを導く数式)を用いて、効果があると考えられる手筋すべてを洗い出すというものである。

過去に2回の対戦が行われ、1回目(1996年2月)はカスパロフが3勝1敗2引き分けで勝利、2回目(1997年5月)には使命を果たす形で6戦中2勝1敗3引き分けでディープ・ブルーが勝利した(ディープ・ブルー対ガルリ・カスパロフを参照)。現在では解体されてしまっているが、一部はコンピュータ歴史博物館などに展示されている。

表向きの使命はチェスで人間の世界王者に勝利するというものであるが、その背景には、より知能的な問題処理能力、高速な計算能力、莫大な量のデータマイニングといった多くの分野に貢献するという目的もあった。実際にIBMは、この研究を通して得た技術を自社製品などに適用している。

現在では、アルゴリズムの改良およびパーソナルコンピュータの計算能力の向上により、一般消費者向けのチェス対局ソフトが人間のトッププレーヤーに匹敵するようになってきている。

さらにディープ・ブルーの目的を引き継いで、世界最強のチェスコンピュータを作ろうという試みがヒドラ (Hydra) プロジェクトとして進められていたが、2009年に開発は中止された。







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