ストックホルム症候群
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リマ症候群
ストックホルム症候群と同様の状況下で、監禁者が被監禁者に対して同情的な態度をとるようになる現象が提示されており、「リマ症候群」と呼ばれている。監禁者が考えを改めたり、被害者に対して共感を覚えることもあるとされる。
リマ症候群は、1996年から1997年にかけてペルーのリマにおいて発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件にちなんで命名された。このとき武装した一団は、各国の駐ペルー特命全権大使、日本企業のペルー駐在員ら約600人を人質にした。しかし監禁者の一団は人質に同情し、数時間以内に200人以上の人質を解放した[8]。
回復
症候を示す被害者は心的外傷後ストレス障害として扱われ、回復するために心理カウンセリングが行われる。ここで被害者は、自身の行為や感情が『人間のサバイバル術に由来すること』であり、『危機的状況における順応であること』を再認識するように促される。回復過程の期間は、サバイバル術由来の行動を減らすことを含めて、日常生活を取り戻すことに充てられる[9]。
スペイン・バルセロナ自治大学の教授によると、加害者が元カレでも家族でも、一人ひとり状況が違うので注意が必要だという。親密な暴力によってストックホルム症候群が引き起こされると、歪んだ信頼関係によって被害者の反応や正常な判断力が損なわれると言う。教授によると、一般的な症状としては、圧倒的な罪悪感、恥ずかしさ、孤独感などがあり、被害者は「自分は傷つけられたが、相手は大切な存在だ」と感じているそうである。愛する人からの間接的、直接的な暴力に直面し、行動しなければならないという信じられないようなストレスに加え、被害者はさらに押しつぶされそうになるという。
そもそも、被害者はすでに加害者からの暴行から逃れられない状況にあり、トラウマから被害者からの十分な状況説明も期待できない。したがって、被害者を批判しないこと、すなわち5W1Hを詳しく聞かないことが重要であるが、もちろんこの場合、精神的なサポートは特に重要である。この症状は、特に未成年の場合に顕著である。被害者に、自分は生きている、加害者から離れなければいけないということを認識させることが重要である。
また、被害者は加害者をかばう傾向があり、自分の私生活を他人に知られたくないため、被害者の身近な他の重要人物は、被害者が加害者に翻弄されている状況に意外と気づいていないことが多い[10]。
分析報告
精神障害の診断と統計マニュアル(DSM5、2013年)
本書は、心理障害の分類のための共通言語と標準的な基準を示すものである。ストックホルム症候群は、かつて一度も本書に記載されたことはない。多くの関係者が、心的外傷後ストレス障害に分類されると信じているからである。2013年に第5版が出版され、その日本語訳は2014年に出版されたが、ストックホルム症候群については記載されていない[11]。
Namnyak=Tuftonらの調査(2008年)
研究グループは「ストックホルム症候群が多くメディアで報道されているものの、この現象について専門的な研究はあまりなされていないこと」を見つけた。あまり研究されてこなかったとは言うものの、ストックホルム症候群とは何かについて合意されているわけでもない。この用語は「誘拐」以外にも、あらゆる種類の虐待に使われるようになってきている。また「診断」するための症候について明確な定義も無いとしている[12]。
FBI Law Enforcement Bulletin(1999年)
FBIの1999年の報告書は、誘拐被害者のうち8%のみがストックホルム症候群の兆候を示したに過ぎないとしている。ドラマチックな事例のセンセーショナルな性質は、人々をしてこの現象を例外的なものではなく法則と見なせしめている。ストックホルム症候群が起きるための3つのカギとなる要素が識別されている(1.時間の経過、2.条件つきの接触、3.直接かつ継続的な虐待を伴わない不親切)[3]。
ロビンス=アンソニーの調査(1982年)
ストックホルム症候群と同様の症状(破壊的なカルト被害)を史学的に研究してきたロビンスとアンソニーは、彼らの1982年の調査において「1970年代には洗脳のリスクと潜在的に関連するような逮捕事例が豊富にあること」を見つけた。彼らは「洗脳がこの時期にメディアによって注目されていたことが、ストックホルム症候群を心理状態と見なすような解釈をもたらした」[13]と主張する。
- ^ Jameson, Celia (2010). “The Short Step From Love to Hypnosis: A Reconsideration of the Stockholm Syndrome”. Journal for Cultural Research (Elsevior) 14.4: 337–355.
- ^ Sundaram, Chandar S. (2013). “Stockholm Syndrome”. Salem Press Encyclopedia.
- ^ a b Fuselier, G. Dwayne (July 1999). “Placing the Stockholm Syndrome in Perspective”. FBI Law Enforcement Bulletin 68: 22 .
- ^ Adorjan, Michael; Christensen, Tony; Kelly, Benjamin; Pawluch, Dorothy (2012). “Stockholm Syndrome As Vernacular Resource”. The Sociological Quarterly 53 (3): 454–74.
- ^ “The six day war in Stockholm”. New Scientist 61 (886): 486–487. (1974) .
- ^ a b Kathryn Westcott (2013年8月22日). “What is Stockholm syndrome?”. BBC News Magazine. 2016年6月23日閲覧。
- ^ 日野原重明『人生、これからが本番:私の履歴書』日本経済新聞、2006年。
- ^ Kato N; Kawata; M, Pitman RK (2006). PTSD: Brain Mechanisms and Clinical Implications. Springer Science & Business Media. ISBN 978-4-431-29566-2
- ^ Åse, Cecilia (2015-05-22). “Crisis Narratives and Masculinist Protection” (英語). International Feminist Journal of Politics 17 (4): 595–610. doi:10.1080/14616742.2015.1042296.
- ^ “V4_5 La aplicación de PAP en situaciones de violencia de género y de agresiones sexuales - Módulo 4 - PAP en colectivos especialmente vulnerables”. Coursera. 2022年9月28日閲覧。
- ^ 『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』医学書院、2014年。
- ^ “'Stockholm syndrome': psychiatric diagnosis or urban myth?”. Acta Psychiatrica Scandinavica 117 (1): 4–11. (January 2008). doi:10.1111/j.1600-0447.2007.01112.x. PMID 18028254.
- ^ Young, Elizabeth Aileen (2012-12-31). “The use of the »Brainwashing« Theory by the Anti-cult Movement in the United States of America, pre-1996” (英語). Zeitschrift für junge Religionswissenschaft (7). doi:10.4000/zjr.387 .
- ^ しげる (2018年4月10日). “「ベルリン・シンドローム」自分探しの一人旅からの拉致監禁、監禁被害者の心理の迫真”. エキレビ! 2018年11月11日閲覧。
ストックホルム症候群と同じ種類の言葉
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