コモチカナヘビ 生態

コモチカナヘビ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 15:36 UTC 版)

生態

草原湿原・林縁・開けた森林・海岸・農耕地などに様々な環境に生息する[1]。日本では湿原内の低木のある草地に生息する[5]。南部に生息する個体群は、アルプス山脈の3000m以上の高標高地に分布する。北部の個体群は疎林や牧草地、原野、ヒース、湿地帯、砂丘、岩石地帯、道路脇、生け垣や庭等を含む、より乾燥した低地で見ることができる。地上性であるが、石や倒木、低木植生などに上ることもある。

昆虫クモなどを食べる[4][5]。大きな獲物は咀嚼し飲み込む前に口の中で振り回す。昼行性で、早春や晩秋、夏の寒い日には体温が活動に最適な約30度になるまで、日光浴を行う。繁殖期は4月から5月にかけて。オスは交尾の前にメスをあごで捕まえる。メスがオスに興味がなかった場合、激しくオスをかむ。子はメスの体内で約3ヶ月間発達する。

繁殖形態は胎生だが、ピレネー山脈産亜種Z. v. louislantziには卵生の個体群がいる[3][4]。和名は繁殖形態に由来する[4]。1回に3 - 15頭の幼体を産む[4]。幼体は黒色で約3cmで、生まれたばかりの時は卵の薄膜に覆われており、数日後に剥離する。オスは2年で、メスは3年で性成熟する。卵生および卵胎生の個体群が混ざり合う地域の個体は雑種ができるが、胎児の奇形が伴う[9]

北部の個体群は9 - 10月頃から、地中や倒木の下などで冬眠を行う。冬眠は2月中旬頃に終わる。南部の個体群は一年中活動する。

人間との関係

都市開発や農地開発・観光開発などによる生息地の破壊により、生息数は減少している[1]。分布が非常に広いことから、種として絶滅のおそれは低いと考えられている[1]。一方でオランダやスイスなどの個体群単位では絶滅のおそれがある地域もあり、イタリア低地部などのように絶滅した個体群もいる[1]

Z. v. pannonica
VULNERABLE (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))[1]
日本
分布が限定的であることに加えて、農地開発による生息地の破壊により生息数は減少している[5]。生息地である湿原での木道設置による捕食者の侵入、および木道で日光浴を行う本種の発見が容易になることで捕食や人間による採集の増加などが懸念されている[5]。生息地の一部は国立公園に指定され、浜頓別町では町の天然記念物に指定されている[5]
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト[5]

ギャラリー


  1. ^ a b c d e f Agasyan, A., Avci, A., Tuniyev, B., Crnobrnja Isailovic, J., Lymberakis, P., Andrén, Dan Cogalniceanu, C., Wilkinson, J., Ananjeva, N., Üzüm, N., Orlov, N., Podloucky, R., Tuniyev, S., Kaya, U., Böhme, W., Nettmann, H.K., Crnobrnja Isailovic, J., Joger, U., Cheylan, M., Pérez-Mellado, V., Borczyk, B., Sterijovski, B., Westerström, A. & Schmidt, B. 2010. Zootoca vivipara. The IUCN Red List of Threatened Species 2010: e.T61741A12552141. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2010-4.RLTS.T61741A12552141.en. Downloaded on 26 September 2018.
    European Reptile & Amphibian Specialist Group. 1996. Zootoca vivipara ssp. pannonica. The IUCN Red List of Threatened Species 1996: e.T61742A12552947. doi:10.2305/IUCN.UK.1996.RLTS.T61742A12552947.en, Downloaded on 26 September 2018.
  2. ^ a b 日本爬虫両棲類学会(2018) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2018年7月19日版). http://herpetology.jp/wamei/ (2018年9月26日閲覧)
  3. ^ a b 海老沼剛 「CLOSE UP CREEPERS -注目の爬虫両生類-」『クリーパー』第48号、クリーパー社、2009年、99 - 100頁。
  4. ^ a b c d e f g 池田純 「コモチカナヘビ」『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』千石正一監修 長坂拓也編著、ピーシーズ、2002年、317頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 竹中践 「コモチカナヘビ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-3爬虫類・両生類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社ぎょうせい2014年、56 - 57頁。
  6. ^ a b c d Zootoca vivipara. Uetz, P. & Jiri Hošek(eds.), The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 8 July 2018.
  7. ^ a b c d 富田京一、山渓ハンディ図鑑10 日本のカメ・トカゲ・ヘビ、山と渓谷社、2007年7月15日初版、pp. 134 - 135、ISBN 978-4-635-07010-2[出典無効]
  8. ^ 竹中践、北海道産コモチカナヘビの生殖の記録 爬虫両棲類学雑誌 1991年 14巻 2号 p.79-80, doi:10.5358/hsj1972.14.2_79
  9. ^ Heulin, B., Arrayago, M. J., and Bea, A. 1989. Experience d'hybridation entre les souches ovipare et vivipare du lezard Lacerta vivipara. Comp. Rend. Acad. Sci. Series 3 308: 341 - 346.


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