クレベリン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 03:46 UTC 版)
製品概要
クレベリンは、大幸薬品のブランドで、同社の登録商標(第5593423号ほか)である[10][11]。「ウイルス除去・除菌・消臭」を謳って販売されていたが、医薬品・医療機器ではなく、雑貨であるため、日本の薬機法に基づいた有効性・安全性・品質は確認されていない[12]。
部屋に置いて二酸化塩素を室内に放出させるゲルタイプや、スプレータイプ、気体を出す容器を胸ポケットなどに持ち歩くペンタイプがあり、ウイルスから体を守ることをイメージさせる広告が氾濫していた[13][14]。しかし、二酸化塩素ガスによる健康被害があることから[15][16][17]、アメリカでは米環境保護局(EPA)がAmazonとeBayに対してこの種の製品の販売停止を命令している[18][19]。日本では、消費者庁が広告や表示の是正を求める処分を下したが、製品が「雑貨」に区分されるため薬機法による販売停止を命じることが出来ず、雑貨として販売が続けられている[8][9]。
製品名である「クレベリン」とは「今までになかった方法でclever(賢く)clean(キレイにする)」からの造語である[20]。
2018年9月に発売以来初となる全面リニューアルが行われた[21]。デザインが刷新され、容器は白基調となり、新たに設けた「シードット」と呼ばれるアイコンと「cleverin」の英字のロゴを表記するのみとなり、外箱に表示のブランドロゴは従来の英字ロゴメインからカタカナロゴメインに改められた。また、外箱や置き型・スプレーの容器ラベルに大幸薬品の社章である「ラッパのマーク」を表記しない代わりに、英字の「TAIKO」ロゴを表記するようになった。
2019年5月、日常除菌分野に特化した姉妹ブランド「クレベ&アンド」を立ち上げると発表。同年9月より3つの新商品が発売されている。
クレベリン 置き型
部屋に置いて使うゲルタイプ。大幸薬品によれば、容器内のゲル剤から発生する二酸化塩素により空間中に存在するウイルス、菌、ニオイを除去する効果があると謳われている[22]。主な使用場所は寝室やリビング等の室内で、内容量60gと150gの2種類がある。
発売当初は「クレベリン ゲル」として発売されていたが、2018年9月のリニューアルで製品名が改められた。また、翌月には「置き型 専用ケース」が発売された。専用ケースには置き型 150gが同梱されており、同梱分が交換時期を迎えても新しい「クレベリン 置き型」に交換して継続使用が可能である。
クレベリン スプレー
空間中にスプレーしたり、直接吹きかけて使うスプレータイプ。大幸薬品によれば、長期間溶液中に二酸化塩素の有効濃度が維持していると謳われている。 使用場所は、居住空間、洗面所、トイレ、キッチン用品等。 また、嘔吐物、オムツや生ゴミ、ゴミ箱内等には直接吹き付けて使う[23]。 300ml入りの「クレベリン スプレー」と、60ml入りの「クレベリン ミニスプレー」、がある。
クレベリン スティック
スティックタイプ。スティックを曲げることで、スティック内の液剤とゲル化剤が混り、成分(二酸化塩素)が発生しはじめる。ペン型の専用ケースにスティックを入れ、ケースを胸ポケットやネームホルダーなどに装着して使用する[24]。
発売当初は「クレベリン パワーセイバー」として発売されていたが、2018年9月のリニューアルで製品名が改められた。
また、白のみだったカラーバリエーションが2019年9月にブラックを追加して2色展開となり、同時に、着脱可能なフックパーツを同梱し、ベビーベッドにかけたり、机に置くことが可能な「スティック フックタイプ」が発売された。
なお、キャラクターとのコラボレーションによる数量限定品が発売されており、専用ケースを収納するストラップカバーが追加される。
「クレベ&アンド」ブランド
- クレベ&アンド ウイルス・菌除去スプレー - テーブルや食器、子供のおもちゃ等に直接吹き付けて使う。万が一口に入っても問題のないアルコール製剤を使用している。
- クレベ&アンド ハンドスプレー - 手に直接吹き付けて使う。ベンザルコニウム塩化物と弱酸性エタノールにより、幅広いウイルスや菌の除去ができる。20mlのミニスプレーで展開。
- クレベ&アンド ハンドジェル - 上記ハンドスプレーと同様の成分が配合されたジェルタイプ。300mlのポンプ式ボトルで展開。
- クレベ&アンド ウイルスプロテクトマスク - 2020年12月に発売。マスク表面に付着したウイルスの数を減少させる「抗ウイルス加工不織布」、細菌の増殖を抑制する「抗菌防臭加工不織布」を採用。1袋5枚入り、ふつうサイズと小さめサイズで展開。
- クレベ&アンド ウイルス・菌除去シート - 一袋50枚入り。
開発経緯
二酸化塩素を液体に溶存させたとき、二酸化塩素ガス濃度は時間経過と共に減少してしまうため、その濃度を一定化させることが不可能であったとされる。大幸薬品は、「溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩、pH調整剤を構成成分とすることで二酸化塩素濃度を一定にできる」という理論により、液体中の二酸化塩素濃度の一定保持化に成功。この技術により、今まで困難であった二酸化塩素液剤・ゲル剤の流通製品化が可能となった[25]。
国民生活センターは2010年8月~10月、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品について、使用中にどのくらいの二酸化塩素が放散されているのか等を消費者に情報提供をすることを目的に9銘柄[26]に関して調べた。この結果、クレベリンは二酸化塩素ガスの安定的な放散が認められることが示され、国民生活センターの報告書に記載された。なお同センターは発表に際し、「明らかな放散があればよいといった判断をしたものではない」旨コメントしている[27]。
- ^ a b c “景表法違反の「クレベリン」も雑貨なら合法…根拠のない「健康に良い商品」の販売を止められない根本原因”. PRESIDENT (2022年7月1日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ a b c “【識者の眼】「空間除菌は無意味どころか…」倉原 優|Web医事新報|日本医事新報社”. www.jmedj.co.jp. 2022年4月14日閲覧。
- ^ a b c d e “5. (補論)空間噴霧について”. 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “空間噴霧でコロナ対策できない理由”. 画像診断医k (2021年3月8日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “Q&A 二酸化塩素による除菌等をうたった製品の使用について”. 日本学校保健会 (2014年3月12日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “「空間除菌」根拠なし 消費者庁、17社に措置命令”. 日本経済新聞 (2014年3月27日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “「空間除菌」クレベリン 置き型も「根拠なし」 大幸薬品に措置命令”. 朝日新聞 (2022年4月15日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ a b “大幸薬品 「クレベリン」の広告表示 景品表示法違反を認める”. NHK (2022年5月5日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ a b “クレベリンの浮遊ウイルス除去効果は「根拠ない」…大幸薬品「深くおわび」「返品は受け付けず」”. 読売新聞 (2022年5月4日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ a b “クレベリン |ブランドサイトTOP | 大幸薬品株式会社”. 大幸薬品. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “特許・実用新案照会(固定アドレス)、特許5593423”. 特許情報プラットフォーム. 2022年7月2日閲覧。
- ^ “気休めにしては危険すぎる…現役医師が「空間除菌グッズは使うな」と断言する理由”. president (2021年9月15日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ 一ノ瀬正樹、児玉一八、小波秀雄、髙野徹、高橋久仁子、ナカイサヤカ、名取宏『科学リテラシーを磨くための7つの話』あけび書房、2022年3月3日。ISBN 978-4871542043。
- ^ クレベリンとは? - 大幸薬品
- ^ “安全データシート 二酸化塩素”. 厚生労働省. 2022年7月17日閲覧。
- ^ “Injury Alert(傷害速報)No. 40 ウイルス除去と称されている製品による中毒” (PDF). 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. 2022年7月17日閲覧。
- ^ “市販の二酸化塩素製剤の殺菌効果と人体への安全性は?”. 日本医事新報社 (2019年5月11日). 2022年7月17日閲覧。
- ^ “EPA Orders Amazon and eBay to Stop Sale of Certain Pesticide Products”. EPA (2020年6月11日). 2022年7月17日閲覧。
- ^ “AmazonとeBayに「COVID-19に効果的」とうたう偽商品の販売を停止するようアメリカ合衆国環境保護庁が通知”. gigazine (2020年6月12日). 2022年7月17日閲覧。
- ^ “クレベリン”. Yellow Hat. 2022年7月2日閲覧。
- ^ 『衛生管理製品の国内トップブランド nendo(代表・佐藤オオキ)デザインで『クレベリン』初の全面リニューアル 2018年9月13日(木)より、全国発売決定!!』(PDF)(プレスリリース)大幸薬品株式会社、2018年9月3日 。2018年12月18日閲覧。
- ^ “クレベリン 置き型|製品情報”. 大幸薬品株式会社. 2018年12月18日閲覧。
- ^ “クレベリン スプレー|製品情報”. 大幸薬品株式会社. 2018年12月18日閲覧。
- ^ “クレベリン スティック|製品情報”. 大幸薬品株式会社. 2018年12月18日閲覧。
- ^ 二酸化塩素ガス濃度長期保持の成功 - 大幸薬品
- ^ テスト対象銘柄は、部屋等に置いて使用するタイプとし、販売時からゲル状のもの(ゲルタイプ)5銘柄、使用開始時に液体に粉末剤を入れてゲルを生成させるもの(ゲル生成タイプ)3銘柄、使用開始時に容器に錠剤と水道水を入れるもの(錠剤タイプ)1銘柄の計9銘柄とした。
- ^ 二酸化塩素による除菌をうたった商品 -部屋等で使う据置タイプについて- - 独立行政法人 国民生活センター
- ^ 野口博之 (2021年2月25日). “ピアノのそばに「クレベリン」で「弦さびた」報告 大幸薬品に見解を聞いた”. J-CASTニュース編集部. 2022年1月3日閲覧。
- ^ “大幸薬品、「クレベリン」の航空輸送で注意喚起 搭載禁止物質や危険物に該当”. TRAICY(トライシー) (2020年2月13日). 2021年2月25日閲覧。
- ^ “jajp”. ana.force.com. 2021年2月25日閲覧。
- ^ “機内に消毒液は持ち込めますか。”. faq.jal.co.jp. 2021年2月25日閲覧。
- ^ “二酸化塩素を利用した空間除菌を標ぼうするグッズ販売業者17社に対する景品表示法に基づく措置命令について” (PDF). 消費者庁 (2014年3月27日). 2017年2月13日閲覧。
- ^ “大幸薬品株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について” (PDF). 消費者庁 (2022年1月20日). 2022年1月20日閲覧。
- ^ “「クレベリン置き型」に関する仮の差止めの申し立てにおける勝訴と消費者庁の措置命令について” (PDF). 大幸薬品 (2022年1月20日). 2022年1月20日閲覧。
- ^ “大幸薬品VS消費者庁「クレベリン」巡る対立の論点 | 医薬品・バイオ”. 東洋経済オンライン (2022年1月27日). 2022年2月5日閲覧。
- ^ “仮の差止めの申立てに関する東京高等裁判所の判断について” (PDF). 大幸薬品 (2022年4月13日). 2022年4月15日閲覧。
- ^ “大幸薬品株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について” (PDF). 消費者庁 (2022年4月15日). 2022年4月15日閲覧。
- ^ “弊社商品の表示に関するお知らせ”. 大幸薬品 (2022年5月3日). 2022年5月4日閲覧。
- ^ 共同通信 (2022年5月4日). “大幸薬品、広告表示で違反認める ウイルス除去の「クレベリン」 | 共同通信”. 共同通信. 2022年5月4日閲覧。
- ^ なお、理由は不明であるが当初このページにはmetaタグ
<meta name="robots" content="noindex">
がHTMLに挿入されていたため、Googleなどのサーチエンジンからは表示されない状態であった。5月12日現在タグは取り除かれている。 - ^ “二酸化塩素の安全性と有用性について|大幸薬品株式会社”. 大幸薬品. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “クレベリン|総合TOP | 大幸薬品株式会社”. 大幸薬品. 2022年5月4日閲覧。
- ^ 「空間除菌」クレベリン、大幸薬品に課徴金6億円 不当表示で最高額 - 朝日新聞デジタル 2023年4月11日
- ^ “車内除菌サービス表示に根拠なし デンソーなどに優良誤認で措置命令”. 朝日新聞. (2024年3月19日) 2024年3月22日閲覧。
- ^ 「車両用クレベリン「科学的根拠なし」デンソーなど景品表示法違反」『毎日新聞』、2024年3月19日。2024年3月19日閲覧。
- ^ “導入企業様のご紹介”. 大幸薬品. 2022年7月2日閲覧。
- ^ “その「空間除菌」グッズ、本当に効果はありますか? コロナ禍で宣伝を強める商品に物申す”. buzzfeed (2021年2月22日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ a b c d “空間除菌、病院への寄贈は何のため? 知名度上がっても喜べない理由”. withnews (2021年7月16日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “大幸薬品、西アフリカのギニア、リベリアにウイルス除去製品「クレベリン」を無償提供”. searchina (2015年2月17日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “大幸薬品、中国の武漢市・北京市・深圳市内の4病院に衛生管理製品『クレベリン』シリーズを計10,000個寄付”. PRタイムス (2020年2月14日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ “大幸薬品、クレベリン12万個を無償提供 全国の病院に”. 日本経済新聞 (2021年2月16日). 2022年7月2日閲覧。
- ^ 『アース製薬と大幸薬品による「二酸化塩素」ビジネスの将来性について共同事業発表会を開催』(PDF)(プレスリリース)アース製薬、大幸薬品(2社連名)、2017年1月12日 。2018年12月18日閲覧。
- ^ 『ジョンソントレーディング株式会社と大幸薬品株式会社ペット向けの除菌消臭剤を共同開発『ジョイペットxクレベリン ペットまわりの除菌・消臭ゲル/スプレー』を新発売』(PDF)(プレスリリース)ジョンソントレーディング、大幸薬品(2社連名)、2017年2月7日 。2018年12月18日閲覧。
- ^ a b “アース製薬株式会社が保有する当社株式の売却及び業務提携継続に関するお知らせ” (PDF) (2022年7月8日). 2022年7月17日閲覧。
- ^ a b “アース製薬、大幸薬品株を売却 資本関係を解消”. 日本経済新聞 (2022年7月8日). 2022年7月17日閲覧。
- ^ 共同通信 (2020年5月12日). “大幸薬品、クレベリン特需最高益 ウイルス除去製品が業績押し上げ | 共同通信”. 共同通信. 2020年5月12日閲覧。
- ^ “正露丸の大幸薬品、社員1割強の希望退職募集…措置命令で「クレベリン」販売不振”. 読売新聞 (2022年5月31日). 2022年5月31日閲覧。
- ^ “大幸薬品会長に96億円請求 クレベリン巡り、株主が提訴”. 産経新聞. (2023年5月19日) 2023年5月19日閲覧。
- クレベリンのページへのリンク