ギョウジャニンニク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 08:35 UTC 版)
栽培
栽培が始まったのは近年[いつ?]で、まだ新しい作物である[24]。夏期は冷涼、冬期は寒冷な地帯に自生することから、夏期高温になる地域には向かず、北陸地方の栽培地の場合では標高350 m以上が望ましいとされる[33]。また標高800 m以下の圃場では定植後の遮光が必要になる[33]。夏期は気温19 - 22度が適しており、これ以上の気温上昇を抑制するには、遮光率の高い資材を使って地温を下げてやる対策を講じることができる[31]。冬場の休眠打破も必要なことから、確実に休眠打破が可能な地域で、夏期の気温が22 - 23度以上に上昇しないことが、栽培に必要な要件となる[31]。
園芸栽培
1990年頃から北海道や日本海側の雪の多い地域で園芸栽培されている。
根株の増殖方法には播種、株分け、不定芽の利用がある[41][42]。生育のサイクルが極めて長く、種をまいてから収穫まで8〜10年、株分けを用いても5〜6年を要する[42]。北海道では露地軟白栽培法が行われている[42]。軟白茎を生産するには、実生から根株となる鱗茎の養生、および経年茎から根株を養生して軟白する工程が必要になる[31]。
栽培地は、基本的に充分耕して膨軟な土壌に堆肥を充分に施して、ギョウジャニンニクのひげ根が伸長できるような圃場にする[31]。採種適期は、果球上部の果実が裂開して、下部の果実の色が淡くなり始めたころが良く、種子にしわができ始めるころまでは発芽率が良い[31]。実生栽培では、種を採取するための母株と種子の確保、播種後3か年の育苗管理、定植後2 - 3か年におよぶ根株養生管理が重要で、順調にいけば最短でも5年目以降に軟白生産が可能となる[43]。種子は乾いてしまうと極端に発芽率が悪くなってしまうことから、種子を採取後に素早く播種することが大切である[43]。播種後の覆土は厚さ2 cmほどにする[41]。育苗期の管理は、地域の気象条件に応じた土壌の乾燥防止と除草、早春の施肥を実施する[41]。根株の養成期は、堆肥による施肥を行うと増殖反応が良いことがわかっている[44]。根株が経年化するとひげ根が多くなり、人力での掘り起こしが困難となるので、機械力を利用して横取り作業(株分け)が行われる[44]。
軟白生産の技術は、主に伏せ込み方式と露地軟白方式の2種類の方法がある[44]。伏せ込み方式は伏せ込み床方式とボックス方式があり、伏せ込み床方式ではビニールハウスを使用し、ボックス方式ではミニコンテナを使用する[45]。出荷する場合には、自生するギョウジャニンニクを採取する時期より2 - 3週間早く生産できるトンネル栽培を行い、1度収穫したら2か年間は根株を養生して3年目に再び収穫する[45]。
ギョウジャニンニク栽培圃場に発生する病害[46]も報告されている。病害としては根株の腐敗が散発的に発生し、タマネギの乾腐病に似ている[43]。害虫では、土壌中に生息するコガネムシとコメツキムシ(俗称:ハリガネムシ)の幼虫による根株の食害がみられる[43]。
品種改良
各地から集められた個体群の中には、形態や生産性に差が存在することが知られている[31]。生産地に沿った個体群でも、生産目的に沿った選抜を行うことにより、生産性の高い系統を造成することは可能と考えられており、大量増殖するためには種子繁殖によらなければならず、選抜増殖による場合と、同系統間の交配による集団育種によってF1品種を作出することが考えられている[31]。
宇都宮大学農学部藤重宣昭助(当時)らのグループにより、ギョウジャニンニクとニラを交配した「行者菜(ぎょうじゃな)」が開発された。外観はニラに近いが、ギョウジャニンニクから受け継いだ形質として、茎が太いのが特徴で、ニラ同様1年で収穫が可能。2008年から山形県長井市で販売が開始されている[47]。
注釈
出典
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