ガストン・ネサン 714-X

ガストン・ネサン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/25 05:36 UTC 版)

714-X

観察の末、彼はクスノキの樹液に注目し、それを製剤化。免疫強化剤「714-X」と命名した。714-Xの名前は、ガストン・ネサンのイニシャル(GとN:アルファベットの第7と第14の文字)、および彼の出生年である1924年の24からアルファベットの第24の文字「X」をとって命名された。

714-Xは、リンパ組織(鼠径リンパ節)に注射で投与する方法、もしくは吸入器(ネブライザー)を使ってから吸収させる方法で用いられ、あらゆる種類の癌に対して投与開始後3週間で、完治率75%の治癒率を示したと主張された。

714-Xは、窒素アンモニウム塩塩化ナトリウムエタノールなどと結合したカンファー(樟脳)から成る製剤であると宣伝された。アメリカ食品医薬品局(FDA)の分析によれば、94%のと5%の硝酸塩、1.4%のアンモニウム、各1パーセント未満のエタノール、ナトリウム、塩化物および0.01%未満の樟脳から構成されているとの報告がある[8]

人に対する安全性及び治癒効果についての論文は発表されておらず、また実施された動物実験の結果は報告されていない。アメリカがん協会は、「714-Xが癌やその他の病気に対して治癒的効果を持つという科学的証拠は確認できなかった」と報告している[9]

この714-Xが薬品として正式に認可されていない時期、ネサンは薬事法違反で摘発された。カナダに移住した後は、714-X投与によって末期癌患者が死亡したという嫌疑での訴訟が起こり、最も重ければ殺人罪終身刑もあり得たが、X-714使用者たちによって結成された「ガストン・ネサンを守る会」の活動もあり、無罪となった。その後カナダにおいて714-Xは末期の癌患者への使用が認可された(この認可を受けたものには、「通常療法に見放された末期の癌患者に限って、使用を許可する」として、カウンセリングや食事療法など患者の心理的な安心を図るための幅広い治療法が含まれる)[10]


注釈

  1. ^ 光学顕微鏡の拡大倍率は1000倍-1500倍程度が限界である。これは光の波長の大きさにより光学顕微鏡の分解能の限界が0.2μm程度である[6]ことによる。すなわち、ネサンのソマトスコープが3万倍率(分解能:0.015μm)の機能をもつと主張することは、科学の原理ではない疑似科学に属する機器であることを示す。

出典

  1. ^ Le chercheur Gaston Naessens n'est plus” (フランス語). La Tribune (2018年2月21日). 2018年9月2日閲覧。
  2. ^ CERBE DISTRIBUTION INC. - 1147135975 - Quebec” (英語). b2bhint (2023年9月6日). 2023年9月23日閲覧。
  3. ^ がん情報各論(患者さん向け): 714-X(PDQ)”. 神戸医療産業都市推進機構. 2018年9月25日閲覧。
  4. ^ a b Naessens G., 714-X: a highly promising non-toxic treatment for cancer and other immune deficiencies. (1996). Centre expérimental de recherches bi-logiques de l’Estrie (Centre d’orthobiologie somatidienne).
  5. ^ a b Peter Havasi (2013). Education of Cancer Healing Vol. VII - Heretics. Lulu. pp. 115-124. ISBN 9781291453683 
  6. ^ 1.4 分解能と開口数|1.顕微鏡光学の基礎|顕微鏡の基礎─日本顕微鏡工業会(JMMA)
  7. ^ Kaegi E., Unconventional therapies for cancer: 6. 714-X. Task Force on Alternative Therapeutic of the Canadian Breast Cancer Research Initiative., CMAJ. 1998 Jun 16;158(12):1621-4.
  8. ^ Paula Kurtzwei (1996年11月1日). “Promoter of 714X Cure-All Faces Prison for Selling Unapproved Drug” (英語). Quackwatch. 2023年9月25日閲覧。
  9. ^ 714-X” (英語). アメリカがん協会 (2008年11月1日). 2010年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月24日閲覧。
  10. ^ 714-X (PDQ)” (英語). アメリカ国立生物工学情報センター (2002年). 2023年9月23日閲覧。






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