カート (植物)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 03:58 UTC 版)
別名
英語のカート(Khat)は、アラビア語から取り入れた呼称である[2]。英語圏以外での表記は、アラビア語: قات 、ソマリ語: qaat [ˈkæt]、ゲエズ文字: ጫት: č̣āt 等が見られる。ケニアのスワヒリ語でミラー (miraa)、ソマリアのソマリ語でガット (qat)、ウガンダのガンダ語などバンツー系諸語ではマイルンジ (mayilungi)[2]。エチオピアでは公用語アムハラ語のチャットが一般的で、オロモ語のジマ (jimaa) も広く用いられ、スラングはバルチャ (barcha) [2]。別の文献では、イエメンでカート、ソマリ語でチャットやカート、ケニアでミラー、南部ソマリアでもケニアの影響でミラーと呼ぶ人が多いとされる[5]。さらに別称として、qaat, quat, jaad, chad, chaadなど、様々な別称が存在する。
生態
和名はニシキギ科アラビアチャノキ属アラビアチャノキと言う常緑樹である[2]。アフリカに自生しているものの、詳細な原産地は不明である[2]。
標高1200メートルから2500メートル程度の高地での生育例が多いものの、500メートル程度でも生育が可能である[2]。アフリカではエジプトから南アフリカ共和国まで高地林に自生し、生産地はエチオピアやケニアなど北東アフリカの高原地域や、アラビア半島南部のイエメンである[2]。抽出液は、苦味、甘味、独特の香りを有す[2]。
効果と使用法
カートの葉には、アンフェタミンに似た覚醒作用をもたらすアルカロイドの一種であるカチノン(Cathinone、(S)-1-フェニル-2-アミノ-1-プロパノン)が含まれており、新芽の葉を噛むと、高揚感や多幸感が得られる[6]。食欲を抑制する効果もある[6]。その効果は非常に弱く、コーヒーや酒などの刺激物を飲み慣れているヒトには、殆ど効かないと思われている[7]が、それは誤解であり、カートの効果が出始めるまで(消化吸収に時間がかかるため)30分〜1時間ほど食べ続けなければならない[5]。10時間近く噛み続ける愛好者もいる[1]。使用方法としては、新鮮な若葉を噛み潰し、頬の片側に噛みくずを貯めながら、汁を飲む。枝単位で売られており、葉を何枚か千切りながら噛み、最後には枝を噛み潰す。
- ^ a b c イエメン男性の嗜好品「カート」内戦下 不安解消へ多用する人も『東京新聞』夕刊2023年3月8日3面(2023年4月5日閲覧)
- ^ a b c d e f g h i j k l m 落合雄彦 『アフリカ・ドラッグ考―交錯する生産・取引・乱用・文化・統制』晃洋書房〈龍谷大学国際社会文化研究所叢書〉、2014年、103-104頁。ISBN 978-4-7710-2506-6。
- ^ a b c d Khat drug profile (英語) 欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)
- ^ a b 松下正明(総編集) 著「IV 国際向精神薬条約」、編集:牛島定信、小山司、三好功峰、浅井昌弘、倉知正佳、中根允文 編 『薬物・アルコール関連障害』中山書店〈臨床精神医学講座8〉、1999年6月、109-123頁。ISBN 978-4521492018。
- ^ a b 高野 2013[要ページ番号]
- ^ a b c d e f 朝日新聞 2014年4月1日
- ^ 松本 2009[要ページ番号]
- ^ 二宮書店編集部 2012, p. 171
- ^ 二宮書店編集部 2012, p. 170
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