エレクトリック・ギター エレクトリック・ギターの概要

エレクトリック・ギター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/27 08:34 UTC 版)

代表的なエレクトリックギターの1つ、フェンダー・ストラトキャスター
同じく代表的なエレクトリックギターの1つ、ギブソン・レスポール

エレクトリック・ギターは、その金属製のの振動をピックアップで(微弱な)電気信号に変えるギターであり、そのエレクトリック・ギター本体とアンプを、(電気信号を伝えるための)シールド・ケーブルで接続し、(信号を受け取った)アンプの側で電気信号を増幅を出す。アンプで音をひずませたり大音量の音を出したり、様々なエフェクターを用いて音質を多彩に変化させることが可能で、それらがエレクトリック・ギターの大きな特徴となっている。

歴史

弦楽器の振動を電気的に増幅する実験は20世紀初頭まで遡る。1910年代には、ヴァイオリンバンジョーの内部に電話の受信機を取り付け、音を増幅させる特許が出た。1920年代にはカーボン・マイクロフォンを弦楽器のに取り付けて音を増幅させる実験が行われた[2]。1920年代から1930年代初頭にかけて、数多くの人々が電気楽器の実験・製作を行っており、それぞれを「最初のエレキギターの発明者」とする様々な主張がある。

最初期のエレキギターの発明は、電気的なピックアップ共鳴胴を持つ半電気的アコースティックギターであった。これは、タングステンのピックアップの付いたスティール弦アコースティックギターであった。最初の電気的に音を増幅するギターはジョージ・ビーチャムによって1931年に発明され、1932年にRo-Pat-Inコーポレーションによって商業生産された (Electro-Patent-Instrument Company Los Angeles) [3][4]

1932年リッケンバッカーが発売したラップスチール型の「フライングパン」と、他社製ボディにピックアップを追加した「エレクトリック・スパニッシュ・ギター」も世界初のエレキギターと見なされることもある。その後1940年代にかけて、ホロウボディのGibson ES-150、ソリッドボディの Bigsby マール・トラヴィスモデルなど新しいモデルが次々と登場し、エレクトリック・ギターが広く一般に認知された。

1930年代から1940年代にかけて登場した様々なエレキギターについては、英語版の記事"Electric guitar#History"に詳しい。

ピックアップ

エレクトリック・ギターは、アコースティック・ギターとは異なる形状・構造をもち、専用のマイクピックアップ」を有しているため、アンプを介して出力される音色はアコースティック・ギターとはかなり異なるものとなる。ピックアップはエレクトリック・ギターの音色の大きな部分を決定する。

ピックアップは電磁誘導を利用して音を拾っている。ピックアップには永久磁石が内蔵されており、それによって生じる磁界中で鉄やニッケルなどの磁性体を含有する弦が振動するとピックアップ内のコイルを通過する磁束が変化し、弦の振動にほぼ相似した交流電流が発生する。その電流は導線(シールド)等を通してアンプに送られ、アンプによって音として増幅されスピーカーから音として出力される。電磁誘導を利用するため、エレクトリック・ギターにナイロン等の非磁性金属製の弦は使用できない(ギターのブリッジ部分に音響マイクロフォンを供えたものもあるが、そのようなものは一般にエレクトリック・ギターとは呼ばない)。またピエゾ素子のような物理的変形を電気信号に変換する素子を使ったピックアップもあるが、こちらも音響マイクロフォンと同様に「エレクトリック・ギター」の範疇には含まないのが一般的である。

ピックアップの種類は以下の二つに大別できる。

エレクトリック・ギター用のピックアップは、一般的に板状の磁石の上に並べた棒(ポールピース)の周囲にワイヤを巻いたもの(コイル)だが、この構造が一つのものをシングルコイルと呼ぶ。そのサウンドはカラっとした乾いたような音色が特徴である。対してハムバッカーは、シングルコイルを弦に対して平行または直角に二つ並べてコイルの極性を逆接続することで商用交流電源による磁界の影響を打ち消してノイズに強い構造になっているが、肝心の弦の振動の信号も特に高調波成分が打ち消し気味になり、太く暖かいサウンドが持ち味となる。「ハム」とは、商用交流電流による「ブ〜〜ン」と言うノイズのことである。ギブソンのモデルはハムバッカーが多く、フェンダーはシングルコイルのモデルが多い。「ハムバッキング(バッカー)」のことを「ハバッキング(バッカー)」と書くこともある。

電気信号の増幅方法は以下の二つに分類される。

  • パッシブ(passive)
  • アクティブ(active)

ピックアップは内部のコイルで音を交流電流として取り出すが、スピーカーから音として出力するには、この電流を増幅させる必要がある。この増幅作業の一切をエフェクターやアンプなどのギターの外部に依存したピックアップをパッシブと呼ぶ。対して、電池と微小信号用アンプをギター内に内蔵し信号をある程度増幅させてからアンプに送信するタイプのものをアクティブと呼び、コイルの巻数が少なくすみノイズに強い。一般的にエレクトリック・ギターではパッシブが主流で、アクティブは鉄弦を使ったアコースティック・ギターに付加的に追加したピックアップに多い。また、一つのギターでパッシブとアクティブの切り替えも可能なものもある。

一つのギターに複数のピックアップが搭載されている場合、ネック側から以下のように呼ばれる。

  • フロント(ネック、リズム、ベース) 高調波成分が少くソフトな音の傾向がある
  • センター(ミドル)
  • リア(ブリッジ、リード、トレブル) 高調波成分が多く鋭い音の傾向がある

複数のピックアップを持つギターでは、ボディのスイッチで演奏中にピックアップを切り替えたり複数のピックアップを並列または直列接続して「混ぜた」信号を取り出せるのが普通である。


  1. ^ Oxford Dictionary. "A guitar with a built-in pickup or pickups which convert string vibrations into electrical signals for amplification."
  2. ^ Wheelwright and Carter
  3. ^ Richard R. Smith (1987-09-01). The history of Rickenbacker guitars. Centerstream Publications, 1987. p. 10. ISBN 9780931759154. https://books.google.co.jp/books?id=NlscjoFVcs0C&pg=PA10&dq=Ro-Pat-In+Corporation&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=Ro-Pat-In%20Corporation&f=false 2011年5月18日閲覧。 
  4. ^ Guitar E - berichte und fotos. ViewGoods.de”. viewgoods.de. 2011年5月18日閲覧。
  5. ^ 「青少年のの仲間集団<盛り場に集まる若者たち>」『更生保護 17(3)』 p.27 日本更生保護協会 1966年3月 [1]
  6. ^ 朝日新聞 1965年10月19日朝刊 等


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