うがい 効果

うがい

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 05:14 UTC 版)

効果

風邪予防

京都大学教授川村孝のグループが、被験者を「うがいをしない群」「水うがい群」「ヨード液うがい群」に割り付けて、うがいの風邪予防効果を検証した[9][10]

その結果は、1か月あたり100人中の発症率は、うがいをしない群26.4人、水うがい群17.0人、ヨード液うがい群23.6人であった。多変量解析で群間のばらつきを揃えると、水うがいをした場合の発症確率はうがいをしない場合に比べ、40%低下となった。一方ヨード液うがいをした場合はうがいをしない場合に比べ、12%の低下にとどまり、統計学的に意味のある抑制効果は認められなかった。

この結果について川村教授は、うがいをすることにより、水の乱流によってウイルスや、埃の中にありウイルスにかかりやすくするプロテアーゼという物質が洗い流されること、水道水に含まれる塩素が何らかの効果を発揮したことなどが考えられ、またヨード液でそれほど効果が出なかったことについては、ヨード液がのどに常在する細菌叢を壊して風邪ウイルスの侵入を許したり、のどの正常細胞を傷害したりする可能性があるとみている。

発熱予防

浜松医科大学の野田龍也助教(公衆衛生学)らは、研究者から疑問視されているにもかかわらず、日本国内でうがいが推奨され続けていることを不思議に思い、調査を実施した。調査は、2006年平成18年)1〜2月の20日間、福岡市の保育所145か所で、2〜6歳の子ども1万9595人を対象に行った。保育所で1日1回以上、水道水や緑茶などでうがいを行ったグループと、行っていないグループに分け、37.5度以上の発熱をした子どもの割合に差があるかどうかを調べた。その結果、うがいをする子どもが発熱する割合は0.4%だったのに対し、うがいをしない子どもは1%が発熱していた。また、緑茶でうがいをした子どもが最も発熱しにくく、食塩水、水道水の順に発熱者の割合が増えた[11][12]

虫歯予防

コクラン共同計画によれば、フッ化物洗口は永久歯の虫歯を歯面数では平均27%、歯数では平均23%減少する。この効果はフッ化物配合歯磨剤の使用や水道水フッ化物添加環境下においても失われない。また有害事象は、ほとんど報告されていない[13]

急性上気道感染症の症状緩和

コクラン共同計画によれば、鼻洗浄は、鼻汁、咽喉痛、鼻呼吸スコア、鼻づまりなどの症状が有意に減少し、また追加の鼻炎薬の使用も減少する[14]

アレルギー性鼻炎の症状緩和

コクラン共同計画によれば、鼻洗浄は、成人も小児も共に、何もしないよりアレルギー性鼻炎の症状緩和に効果があり、また副作用との関連はなさそうである[7]

口臭のコントロール

コクラン共同計画によれば、洗口液には、香料に加えて抗菌剤が含まれており、これらは一般に、中和するものと臭いを隠すものに分類される[15]。中和する成分はさらに、細菌に直接影響を与える成分または細菌が生成する化合物に分類でき、クロルヘキシジン、フェノール、トリクロサン、二酸化塩素、アルコール、および金属イオンがある。最も一般的なものは亜鉛である(Carvalho 2004[16] ; Farrell 2006[17])。いくつかの臭気マスキング剤はエッセンシャルオイルで構成されており、これは好ましくない悪臭を隠すことができる可能性がある。

コクラン共同計画によれば、クロルヘキシジンと酢酸亜鉛を含むうがい薬とプラセボうがい薬の場合、OLTスコア(歯科医師による官能検査)のエビデンスは非常に不確実である[18]

インフルエンザに関して

東京大学医科学研究所河岡義裕教授は、「(うがいは)インフルエンザに関しては、意味がないと思います」と効果を否定した[19]

首相官邸ウェブページでも「インフルエンザを予防する効果については科学的に証明されていません」と掲載しており、世界では有効な風邪の予防法にも掲載されていない[20]


  1. ^ 広辞苑 第五版 p.223「うがい」
  2. ^ a b ストップ!肺炎”. 日本呼吸器学会. 2020年7月15日閲覧。
  3. ^ a b c 川村孝. “うがいで風邪は予防できるか”. 日本野鳥の会京都支部. 2020年7月15日閲覧。
  4. ^ 「うがい」はインフルエンザ予防に効果なし?有効な予防法は”. ウェザーニュース (2018年1月27日). 2021年7月4日閲覧。
  5. ^ a b c ウミウ”. 日本野鳥の会京都支部. 2020年7月15日閲覧。
  6. ^ a b c d 水と四季 2010冬号”. 名古屋市上下水道局. 2020年7月15日閲覧。
  7. ^ a b アレルギー性鼻炎に対する、生理食塩水を用いた鼻うがい(コクラン共同計画)PMID 29932206
  8. ^ ハナノア(小林製薬)
  9. ^ 京都大学保健管理センターflu
  10. ^ Kazunari Satomura; Tetsuhisa Kitamura, Takashi Kawamura, et al. (November 2005). “Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling: A Randomized Trial”. American Journal of Preventive Medicine 29 (4): pp. 302-307.  PMID 16242593
  11. ^ うがい効果あった…浜松医大助教ら調査
  12. ^ Gargling for oral hygiene and the development of fever in childhood: a population study in Japan(PMC free article)PMID 22123226
  13. ^ Fluoride mouthrinses for preventing dental caries in children and adolescents(コクラン共同計画) PMID 27472005
  14. ^ 急性上気道感染症の症状に対する生理食塩水による鼻洗浄(コクラン共同計画)PMID 25892369
  15. ^ Interventions for managing halitosis Version published: 25 May 2016(コクラン共同計画)
  16. ^ Impact of mouthrinses on morning bad breath in healthy subjectsPMID 15016031
  17. ^ Oral malodor reduction by a combination of chemotherapeutical and mechanical treatmentsPMID 16622641
  18. ^ Interventions for managing halitosis Version published: 11 December 2019(コクラン共同計画)
  19. ^ 爆笑問題のニッポンの教養』「File090 新型インフルエンザの真実」 2009年11月3日放送
  20. ^ 首相官邸「冬の感染症にご注意! ~インフルエンザ&ノロウイルス特集~」2013年1月31日閲覧
  21. ^ マウスウォッシュ(洗口液)・デンタルリンス(液体歯磨)(ライオン歯科衛生研究所)






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