双対加群とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 双対加群の意味・解説 

双対加群

(dual module から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/06 00:15 UTC 版)

双対加群(そうついかぐん、: dual module)とは、(主に) R 上の加群 M に対し、M から「RR-加群とみなしたもの」への加群準同型全体 \[ M^{*}=\operatorname{Hom}_{R}(M,R) \] に、点ごとの加法とスカラー倍を入れて得られる加群である。線型代数学における双対ベクトル空間の一般化として扱われ、文脈により M^{\vee} などとも表記される。可換環の場合は左右加群の区別が不要であるが、一般の(非可換)環では左加群の双対は自然に右加群となる点に注意が必要である。[1]

定義

R を環、M を(例えば)左 R-加群とする。R を自然な(左)R-加群とみなすとき、 \[ M^{*}=\operatorname{Hom}_{R}(M,R) \] は集合としては R-線形写像全体である。加法を点ごとに \[ (f+g)(m)=f(m)+g(m) \] で定めると、M^{*} はアーベル群となる。さらに(非可換環の場合)右 R-作用を \[ (f\cdot r)(m)=f(m)\,r \] で定めると、M^{*} は右 R-加群となる。可換環の場合には左作用と右作用が一致するので、M^{*} を通常ふたたび R-加群とみなす。[2][3]

関手としての性質

双対の対応 M \mapsto M^{*} は、加群の射 \varphi: M\to N に対し合成により \[ \varphi^{*}:\operatorname{Hom}_{R}(N,R)\to \operatorname{Hom}_{R}(M,R),\quad f\mapsto f\circ \varphi \] を与える。したがって双対は一般に 反変関手(contravariant functor)として振る舞う。[4]

また、短完全列に双対を適用すると一般には完全性が保たれないが、Hom関手の一般論として、射影加群などの条件の下で挙動がよくなることが知られている。[5]

自由加群の場合

M\cong R^{n} が有限ランクの自由加群(可換環の場合、あるいは適切に左右をそろえた場合)であるとき、M^{*} も同じランクの自由加群となり、基底に関して M^{*}\cong R^{n} が得られる。これは双対ベクトル空間の有限次元の場合と同様の性質である。[6]

有限生成射影加群の場合

M射影加群で(典型的には)有限生成であるとき、後述の正準写像 M\to M^{**} が同型になることが多く、双対は幾何学・可換代数における「局所自由性」の代数的反映として現れる。[1]

二重双対と正準写像

M の双対 M^{*} のさらに双対 \[ M^{**}=\operatorname{Hom}_{R}(M^{*},R) \] を M二重双対加群(double dual module)という。各元 m\in M に対し評価写像 \[ \operatorname{ev}_{m}:M^{*}\to R,\quad f\mapsto f(m) \] は R-線形であるから、写像 \[ j:M\to M^{**},\quad m\mapsto \operatorname{ev}_{m} \] が定まる。これを M から二重双対への正準写像(canonical map, natural map)という。[7]

一般に j は同型とは限らず、M の性質(例えば torsion-free や reflexive など)を反映する。たとえば整域上では、二重双対はねじれがない(torsion-free)性質と関係し、j の核・余核がねじれ加群になるといった事実が知られている。[7]

反射的加群

j:M\to M^{**} が同型であるとき、M反射的加群(reflexive module)であるという。反射的加群は、幾何学的には(特に可換環・ネーター環の文脈で)正則性や特異点の研究と結びつき、可換代数・代数幾何で重要な役割を持つ。[1]

関連項目

脚注

  1. ^ a b c Reflexive modules (Tag 0AUY) — The Stacks project”. stacks.math.columbia.edu. 2026年3月6日閲覧。
  2. ^ Atiyah, Michael F.; I. G. MacDonald (1969). Introduction to Commutative Algebra. Addison-Wesley. ISBN 9780201003611 
  3. ^ Hungerford, Thomas W. (1980). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 73. Springer. ISBN 9780387905181 
  4. ^ Lang, Serge (2002). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 211. Springer. ISBN 9780387953854 
  5. ^ Hungerford, Thomas W. (1980). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 73. Springer. ISBN 9780387905181 
  6. ^ Lang, Serge (2002). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 211. Springer. ISBN 9780387953854 
  7. ^ a b Lemma 15.23.2 (Tag 0AV0) — The Stacks project”. stacks.math.columbia.edu. 2026年3月6日閲覧。

参考文献

  • ブルバキ (1970). 数学原論 代数 2. 金行壮二・銀林浩 訳. 東京図書. NDLJP:1383300 
  • Atiyah, Michael F.; I. G. MacDonald (1969). Introduction to Commutative Algebra. Addison-Wesley. ISBN 9780201003611 
  • Hungerford, Thomas W. (1980). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 73. Springer. ISBN 9780387905181 
  • Lang, Serge (2002). Algebra. Graduate Texts in Mathematics. 211. Springer. ISBN 9780387953854 



英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語
  •  双対加群のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「双対加群」の関連用語

双対加群のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



双対加群のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの双対加群 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2026 GRAS Group, Inc.RSS