袖犬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2009/04/27 13:46 UTC 版)
袖犬(そでいぬ)は、中国原産の愛玩用犬種である。英名はスリーブ・ドッグ(英:Sleev Dog)。ペキニーズの小型版犬種でもある。
もう一つのペキニーズの小型版犬種であるペン・ローについても解説する。
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歴史
袖犬は8世紀以前から存在していた古い犬種で、ペキニーズと共に宮廷で愛玩されていた。袖犬は通常のペキニーズよりも小型の亜種の犬で、貴族や役人の着る長い袖の中に入れられるほど小さかったのでこのような犬種名が付けられた。しかし、サイズ以外にペキニーズとの違いが明確でなかったため19世紀頃にペキニーズが外国へ持ち出され、ショードッグとして使われ始めると統括が行われ始め、頭数は減少していった。更に、1908年に最大の愛好家であった皇太后が死去すると中国のペキニーズと袖犬の犬舎が取り壊され、犬たちは売り飛ばされてばらばらになってしまった。しかし、アメリカ合衆国やイギリスに輸出された袖犬はブリーディングに成功し、珍種のペキニーズとして注目を浴びて生き残ることができた。その後中国で起こった戦中の飼い犬虐殺令の廃止の後に数頭の袖犬が原産地へ送り返され、再びそこでもブリーディングが行われるようになった。
現在袖犬はFCIの見解上、ペキニーズの亜種として見られているため、ドッグショーには出場できないが珍種としてやや人気があり、原産地等ではペットとして飼育も行われている。なお、日本国内では正式な袖犬は飼育されていないが、サイズがスタンダード(犬種基準)より小さいペキニーズは飼育されている。
特徴
ペキニーズよりも小型で、マズルがあまりつぶれていないのが特徴である。それ以外の外見はペキニーズと一緒で、ずんぐりとした体型で頭部が大きく、短足・がに股である。垂れ耳・背中に背負った巻き尾には飾り毛がある。コートは豊かなロングコートで、毛色の制限は無い。体高15cm以下、体重3.2kg以下の小型犬で、性格はマイペースでのんびりしている。運動量は少ないが、普通のペキニーズと同じく水頭症、眼疾患、心臓疾患、椎間板ヘルニア、腎臓結石になりやすいのが欠点である。また、暑さに弱いため夏は熱中症にならないように部屋を涼しくする事が求められる。
最小種 ペン・ロー
ペン・ロー(英:Pen-lo)は、袖犬を小型化して作り出したペキニーズの最小版の犬である。後述する理由により「犬種」として認められていない。別名をペン・ロー・パ・エルフ(英:Pen-lo Pa Elf)という。
1900年ごろから存在していて、袖犬の小さい個体同士を掛け合わせ続けて小型化して作られた。一時人気が出て袖犬に取って代わった時期もあったが、犬質を省みない急速な小型化が進んだ事と乱繁殖が多く行われたことにより犬質が悪化し、奇形や水頭症、気管虚脱、緑内障、先天性白内障、心臓病、椎間板ヘルニア、腎臓病、腎臓結石、難産、癌などの多くの病気にかかりやすくなってしまい、人気が暴落した。その上に、この後中国で行われた飼い犬虐殺令の施行によって希少化が進み、現在は絶滅したか絶滅寸前であるといわれている。はっきりした調査が行われていないため、ペン・ローが絶滅したか否かははっきり決着がついていない。なお、犬質やサイズの維持、ブリーディングなどが難しいため、2008年の時点では再生活動は行われていない。
容姿はほとんど袖犬及びペキニーズと一緒であるが、体高9cm以下、体重1.1kg以下の非常に小さい犬である。ちなみにこのサイズはチワワ、プラシュスキー・クリザジーク、トイ・ムンチキンよりも小さい。しかし、もとよりこの犬はペキニーズの小型版の一種として認知されていて、高い犬質を保ったままのブリーディングが非常に困難なため犬種として認められていない。そのため、これを世界最小犬種とは呼べない。
参考
『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著、福山英也・大木卓訳 誠文堂新光社、2007年
関連項目
固有名詞の分類
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