葛飾北斎_(2代目)とは? わかりやすく解説

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葛飾北斎 (2代目)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/22 16:59 UTC 版)

二代目 葛飾 北斎(にだいめ かつしか ほくさい、生没年不詳)とは、江戸時代浮世絵師

来歴

葛飾北斎の門人とされるが、北斎の二代目を称した者は二人いたといわれている。

『浮世絵師伝』では「二代北斎を名乗りし者二人あり」とし、千葉県銚子市の円福寺所蔵の大絵馬「平敦盛と熊谷直実組討図」に、「文化十三丙子歳(1816年)秋八月吉辰 東都二世鈴木北斎辰政画」の落款と「江戸南茅場町 願主橋本市兵衛」という墨書があり(『浮世絵師伝』は「某寺所蔵」の「武将組打之図」とする)、一方で天保13年(1842年)版の『広益諸家人名録二編』には、「北斎 名辰政 為一翁門人 浅草山谷 橋本庄兵衛」とあることを指摘している。よって、北斎の二代目を称する者が「鈴木」と「橋本」で二人いたとしているが、同一人物ともいわれており、二代目北斎を名乗った者の素性については明らかではない。

新増補浮世絵類考』には、葛飾為一(初代北斎)の項に「二代目北斎は本所の産なりしが、後吉原仲の町亀屋といふ茶屋になる」との記述があり、この人物は両国回向院布袋の大画を描いたという。「名古屋にて出山釈迦を画けり」ともある。また『葛飾北斎伝』によれば、初代北斎が弘化3年(1846年)、大坂の「書物屋衆中」に宛てた手紙にも「此節門人戴斗の画を北斎と唱へ候由、是は新吉原亀屋喜三郎と申す者へ、三十年以前ゆずり遣し候」とあり、それが「漫りに戴斗の画を、北斎と申しふらし候儀」があったと述べている。

青葱堂冬圃の随筆『真佐喜のかつら』も二代目北斎について記しており、それによれば二代目北斎は「深川高橋に住ける橋本何某が悴喜三郎と云もの」で、幼少のころ商家に丁稚奉公に出たが、暇さえあれば絵ばかり描いていたので、暇を出されて実家に戻った。そして北斎の門人となり「二代北斎」を称したという。しかし後に「新吉原遊女屋の養子となり、画名発せず、末ハいかゞなりしや」とも記している。

二代目北斎の作とされるものは「傘持ち美人図」や「十六羅漢図」などの肉筆画があるが、安政5年(1858年)刊行の『利根川図志』には他の絵師たちとともに「葛飾北斎」が挿絵を描いており、これも二代目北斎の事といわれている。

作品

版本挿絵

  • 続膝栗毛』 ※十返舎一九作。文政2年(1819年)の序文がある第九編の「信州水内郡川中島 善光寺之図」に、「二世北斎写」の落款がある。
  • 利根川図志』 ※赤松宗旦作、安政5年刊行。第一巻の「凡例」に、「巻中の画図名印無きは葛飾北斎なり」とある。

肉筆画

  • 「平敦盛と熊谷直実組討図」 扁額(絵馬)、板地彩色 円福寺所蔵 ※文化13年
  • 「十六羅漢図」 絹本着色 ※「葛飾為一翁門人 北斎辰政筆」の落款、「鈴辰政印」の白文方印と印文不明の朱文方印あり
  • 傘持ち美人図」 絹本着色 東京国立博物館所蔵 ※「二世葛飾北斎辰政筆」の落款、「北齋之印」の白文方印あり。ウィリアム・スタージス・ビゲロー旧蔵品
  • 「三美人図」 絹本着色、三幅対 ボストン美術館所蔵 ※三幅いずれも画賛あり、「雷震」の白文方印を捺す。「季鷹」とは賀茂季鷹のこと。落款と画賛は以下の通り。
    • 「二代目北斎筆」 / 「山吹の 花色衣 来て見よと いはぬはかりの 香にゝほひつゝ 季鷹」[1]
    • 「二世北斎筆」 / 「深み草 ふかき色香に さきにほふ 心の花を 折人やたれ 季鷹」[2]
    • 「二代め北斎筆」 / 「たをや女か 休らふ花の 外に亦 心の花の 色もみえける 季鷹」[3]
  • 文読む美人図」 絹本着色 ボストン美術館所蔵 ※「葛飾の住 二世北齋筆」の落款と「北齋之印」の白文方印、「浅からぬ 浅香の沢の 花かつみ かつ見る文の 中そゆかしき 蜀山人」の画賛あり
  • 「三国志英雄肖像 張飛・趙雲・諸葛亮・黄忠・関羽・馬超」 紙本着色、額装6枚 ウィーン国立工芸美術館所蔵 ※「張飛」に「葛飾北齋辰政画」の落款、「鈴辰政印」の白文方印と「弘頁」の朱文方郭内円印あり。もとは六曲一隻の屏風だったのではないかといわれている。
  • 「七福神図」 絹本墨画淡彩 日本浮世絵博物館所蔵 ※七人の合筆によるもので、弁財天に「二代目北齋筆」の落款と「葛飾」の朱文方印あり
  • 「雉子図」 ※「富ヶ岡 鈴北齋画」の落款あり
  • 「万才図」 絹本着色 ※「應需模先師之図 北斎辰政」の落款、「よろつ代と さかゆく春の うれしさを つゝみあまりて たちやまふらむ □平」の画賛あり

参考文献

  • 飯島半十郎(虚心) 『葛飾北斎伝』(上巻) 蓬枢閣、1893年 ※国立国会図書館デジタルコレクションに本文あり[4]
  • 井上和雄編 『浮世絵師伝』 渡辺版画店、1931年 ※国立国会図書館デジタルコレクションに本文あり[5]
  • 日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』(第2巻) 大修館書店、1982年 ※128頁
  • 楢崎宗重編 『肉筆浮世絵Ⅲ(化政~明治)』〈『日本の美術』250〉 至文堂、1987年 ※49頁
  • 『秘蔵日本美術大観11 ウィーン国立工芸美術館/プラハ国立美術館/ブダペスト工芸美術館』 講談社、1994年
  • 小林忠編 『肉筆浮世絵大観(2) 東京国立博物館Ⅱ』 講談社、1995年 ※219頁
  • 辻惟雄監修 『ボストン美術館 肉筆浮世絵』(第三巻) 講談社、2000年 ※196 - 197頁
  • 『千葉県文化財実態調査報告書 ―絵馬・奉納額・建築彫刻―』 千葉県教育委員会、1996年 ※47頁
  • 『北斎一門肉筆画傑作選 ―北斎DNAのゆくえ―』 板橋区立美術館、2008年 ※110頁、121頁
  • 川名登 『評伝 赤松宗旦 「利根川図志」が出来るまで』 彩流社、2010年

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