緑膿菌の物質産生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/08 14:21 UTC 版)
緑膿菌は、色素やムコイド、外毒素など、本菌特有の多種類の物質を産生する。これらの物質は緑膿菌の菌体外に分泌され、その生育環境に影響を与えることで緑膿菌の生育を助ける役割を果たすだけでなく、宿主細胞に作用することでその病原性とも密接に関連している。 これら緑膿菌の物質産生の多くは、その生育環境での菌数を感知する、クオラムセンシングと呼ばれる機構で制御されている。緑膿菌は、N-アシル-L-ホモセリンラクトン (AHL) と呼ばれる、菌体の内外を自由に行き来することが可能な低分子物質(オートインデューサー)を産生しており、環境中での生育密度が上がると、この物質の濃度も上昇する。この物質は、緑膿菌のさまざまな遺伝子に対して転写因子として働き、さまざまな物質産生を誘導する。AHL自身もまたAHLによってその産生が誘導されるため、この機構は正のフィードバックによる制御を受けている。これらの機構を巨視的に見ると、緑膿菌が自らの生育密度を感知して、その上昇に伴って、さまざまな物質産生を行うことになる。クオラムセンシングは、緑膿菌同士が細胞間で行う1種の情報伝達機構と考えることができる。
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