等比列の収束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/08 15:58 UTC 版)
スペクトル半径は行列の等比列の収束性と次のようにして密接に関係している。 A ∈ C n × n {\displaystyle {\boldsymbol {A}}\in {\mathbb {C} }^{n\times n}} を複素行列、 ρ ( A ) {\displaystyle \rho ({\boldsymbol {A}})} をそのスペクトル半径とすると、 lim k → ∞ A k = 0 {\displaystyle \lim _{k\to \infty }{\boldsymbol {A}}^{k}=0} のとき、およびそのときに限り ρ ( A ) < 1 {\displaystyle \rho ({\boldsymbol {A}})<1} である。 これは特に、任意の行列ノルム ||・|| について ρ(A) < 1 ならば ||A|| → 0(ノルムの連続性により) ρ(A) > 1 ならば ||A|| → ∞(ノルムの同値性により) ということを導く。 lim k → ∞ A k = 0 {\displaystyle \lim _{k\to \infty }{\boldsymbol {A}}^{k}=0} が ρ(A) < 1 を導くことは以下のようにしてわかる。 (v, λ) を行列 A の固有ベクトル-固有値の組とすると、 A k v = λ k v {\displaystyle {\boldsymbol {A}}^{k}{\boldsymbol {v}}=\lambda ^{k}{\boldsymbol {v}}} であるから、 0 = ( lim k → ∞ A k ) v = lim k → ∞ A k v {\displaystyle 0=(\lim _{k\to \infty }{\boldsymbol {A}}^{k}){\boldsymbol {v}}=\lim _{k\to \infty }{\boldsymbol {A}}^{k}{\boldsymbol {v}}} ここで、v ≠ 0 であることより、 lim k → ∞ λ k = 0 {\displaystyle \lim _{k\to \infty }\lambda ^{k}=0} でなければならないが、これは、|λ| < 1 であることを意味する。これがすべての固有値 λ に対して成立しなければならないから、ρ(A) < 1 と結論づけることができる。 一方、ρ(A) < 1 が lim k → ∞ A k = 0 {\displaystyle \lim _{k\to \infty }{\boldsymbol {A}}^{k}=0} を導くことは以下のようにしてわかる。ジョルダン標準形の理論から、任意の複素行列 A ∈ MnC について、互いに可換な半単純行列 S とベキ零行列 N があって、A = S + N、ρ(A) = ρ(S) が成立している。 K をNK = 0 であるような自然数とすれば、任意の自然数 k について A k = S k + k S k − 1 N + ( k 2 ) S k − 2 N 2 + ⋯ + ( k K − 1 ) S k − K + 1 N K − 1 {\displaystyle {\boldsymbol {A}}^{k}={\boldsymbol {S}}^{k}+k{\boldsymbol {S}}^{k-1}{\boldsymbol {N}}+{\binom {k}{2}}{\boldsymbol {S}}^{k-2}{\boldsymbol {N}}^{2}+\dotsb +{\binom {k}{K-1}}{\boldsymbol {S}}^{k-K+1}{\boldsymbol {N}}^{K-1}} が成り立っている。ρ(S)が1より小さいため任意の j について ( k j ) S k − j → 0 ( k → ∞ ) {\displaystyle {\binom {k}{j}}{\boldsymbol {S}}^{k-j}\rightarrow 0\quad (k\rightarrow \infty )} であり、したがって上式右辺の有限和の各項は 0 に収束している。
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