空軍十字章 (アメリカ合衆国)とは? わかりやすく解説

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空軍十字章 (アメリカ合衆国)

(空軍殊勲十字章 (アメリカ軍) から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/02 08:41 UTC 版)

空軍十字章
Air Force Cross
アメリカ合衆国空軍省[1][2])による賞
種別十字章
受章資格アメリカ空軍又はアメリカ宇宙軍の軍人
受章条件戦闘において比類ない英雄的行為をした空軍又は宇宙軍の軍人[3]
状態運用中
歴史・統計
創設1960年7月6日[1]
初授与1964年1月8日[4]
(最新の授与は2020年12月10日[5]
総授与数203人[6]
死後追贈者50人
受章者198人
序列
上位名誉勲章
下位国防総省 - ディフェンス・ディスティングシュドサービスメダル
国土安全保障省 - 国土安全保障ディスティングシュドサービスメダル

空軍十字章Air Force Cross、AFC)は、アメリカ合衆国勲章アメリカ空軍及びアメリカ宇宙軍の軍人に授与される名誉勲章に次ぐ二番目の高位勲章であり、「武装した敵軍との戦闘において比類ない英雄的行為をした」空軍軍人又は宇宙軍軍人に授与される[7]。この勲章は、アメリカ空軍及びアメリカ宇宙軍の軍人が名誉勲章には該当しないものの、並外れた英雄的行為があり、他の模範となる時に、その行為を表彰する目的で授与される。

空軍十字章は、アメリカ陸軍殊勲十字章海軍及び海兵隊海軍十字章沿岸警備隊沿岸警備隊十字章と同等のものであり、空軍殊勲十字章と訳されることも多い。

1960年7月6日以前は、空軍の軍人であっても殊勲十字章を授与されていた。

概要

歴史

空軍十字章は、当初「殊勲十字章(空軍)」(Distinguished Service Cross (Air Force))という名前で制定された[8]。1947年9月にアメリカ空軍が独立した軍種となった時に提案され、空軍職員のエレノア・コックスによってデザインされ、アメリカ陸軍紋章研究所職員のトーマス・ハドソン・ジョーンズが最初の勲章を作成した。

現在の形での空軍十字章は1960年7月6日に公法86-593(Public Law 86-593)[9]によって成立した合衆国法典第10編第8742条 10 U.S.C. § 8742によって制定された。公法86-593(Public Law 86-593)の合衆国法典第10編第8748条 10 U.S.C. § 8748合衆国法典第10編第8749条 10 U.S.C. § 8749によって空軍十字章を制定し、合衆国法典第10編第8742条 10 U.S.C. § 8742[1]合衆国法典第10編第8744条 10 U.S.C. § 8744合衆国法典第10編第8745条 10 U.S.C. § 8745によって、空軍十字章を殊勲十字章海軍十字章を同等の十字章と位置づけた[10][11]。1960年7月6日以前は、空軍の軍人であっても殊勲十字章を授与されていた[1]

空軍十字章を複数回受章した場合には、綬にオークの葉のクラスターを装着する[12]

受章条件

合衆国法典第10編第857章第8742条「空軍十字章の授与」

大統領は、空軍での地位を問わず、その奉仕する軍人が、名誉勲章の基準に満たないながらも、並外れた英雄的行為をした場合は、綬とメダルを備えた正当なデザインの空軍十字章を授与することができる[13]

  • アメリカの敵に対して行動を起こしている時である。
  • 敵対する外国勢力との武力行使を伴う戦闘作戦に従事している時である。
  • アメリカの交戦国ではない相手国との武力紛争に従事する友好的な外国軍に従軍している時を含む[13][14]

通常は、空軍十字章は、国防総省で挙行される正式な式典において空軍長官から授与される[1]

デザイン

空軍十字章は、酸化サテンでメッキ加工された銅色の十字架で構成されている。十字架の中央には、金メッキ加工の空軍省[1][15]の上で翼を広げるアメリカンハクトウワシが意匠され、緑色のエナメルで加工された月桂樹のリーフで囲まれている。勲章の裏面は空白で、受章者の階級の略称、名、ミドルネームのイニシャル、姓、所属の軍種を大文字で刻印することができる[11]

綬と略綬は、ブルーダニューブで、赤色で縁取られている。赤い縁取りの内側には、白い細い縦縞がある。また綬は、殊勲十字章のものと同様のデザインであり、中央のブルーがより明るいブルーダニューブであることを除き、この2つの勲章に密接な関係があることを示している[11]

受章

空軍十字章の最初の受章は、U-2パイロットのルドルフ・アンダーソン少佐であり、キューバ危機における並外れた英雄的行為に対し、死後に追贈された[11]

2017年10月現在、197人に対し合計202個の空軍十字章が授与されている。最初の受章は、1962年のキューバ危機における行動に対するものであり、その後、3つの空軍十字章が第二次世界大戦での行動に対し、遡及して授与された[16]ベトナム戦争での英雄的行為に対し180人に授与され[注釈 1]、その直後の1975年、マヤグエース号事件における英雄的行為に対しては4人に授与された(なお、この授与に関してはベトナム戦争での授与に含まれる場合もある)[17]

1991年の湾岸戦争では2人に授与された。そのうちの一人は1993年、ソマリアモガディシュの戦闘での英雄的行為に対して空軍パラレスキューマンだったティモシー・ウィルキンソンに対して授与されたものである。

アフガニスタン紛争でも多くの空軍十字章が授与されている。2002年のアナコンダ作戦での英雄的行為に対して3人に空軍十字章が授与されている。空軍パラレスキューマンのキーリー・ミラーとジェイソン・カニンガム、空軍戦闘管制官のジョン・A・チャップマン二等軍曹(死後、一等軍曹に特進)である。また、2008年4月6日のショク渓谷(Shok Valley)における英雄的行為に対し、空軍戦闘管制官のザカリー・ライナー三等軍曹(当時)に授与されている[18] 。2013年12月10日のカンダハール州における英雄的行為に対しては、空軍パラレスキューマンのイヴァン・ルイス一等軍曹に授与されている[19]

2017年10月17日には、2016年11月2日のクンドゥーズ州でのターリバーンに対する英雄的行為で、リチャード・ハンター三等軍曹に空軍十字章が授与された[20]

2017年4月20日、クリス・バラダット三等軍曹に、2013年4月6日のクナル州ソノ渓谷での英雄的行為に対して空軍十字章を授与された。当時、クリス・バラダット三等軍曹は第21遠征特別戦術飛行隊のQRF戦闘管制官を務めていた[21]

50人の受章者は、死後に追贈されたものであり、そのうち30人は作戦行動中行方不明者である。また、そのうち24人は下士官であり、12人のパラレスキューマンを含んでいる。

17人の空軍士官学校卒業生も空軍十字章を授与されている。また13人に対しては、捕虜としての授与である。

以下の4名は、2回以上、空軍十字章を受章している。

主な受章者

マイケル・ブルース・ドンリー空軍長官から空軍十字章を授与されるザカリー・ライナー三等軍曹

脚注

注釈

  1. ^ ベトナム戦争中の実質的な受章数は182個であるが、ウィリアム・H・ピッセンバーガー三等軍曹とリチャード・エッチバーガー最上級曹長の空軍十字章が名誉勲章に格上げされている。

出典

  1. ^ a b c d e f Air Force Manual 36-2806, 10 June 2019. p. 64
  2. ^ DOD Instruction 1348.33, DoD Military Decorations and Awards Program”. Executive Services Directorate (2018年3月29日). 2018年9月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月29日閲覧。
  3. ^ H.R.6395 - 116th Congress (2019-2020): William M. (Mac) Thornberry National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2021”. 2021年1月閲覧。
  4. ^ Major Rudolf Anderson, Jr.”. Air Force Link (USAF). 2009年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月9日閲覧。
  5. ^ “'A tribute to persistence:' SecAF presents Air Force Cross to special tactics Airman”. U.S. Air Force, News. https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/2444136/a-tribute-to-persistence-secaf-presents-air-force-cross-to-special-tactics-airm/ 2020年12月21日閲覧。 
  6. ^ Including 2 upgraded awards (2016)
  7. ^ Air Force Instruction 36-2803 Table 2.1: e-publishing.af.mil”. 2013年2月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月10日閲覧。
  8. ^ Air Force Cross”. 2012年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年5月28日閲覧。
  9. ^ 86th US Congress, 6 Jul 1960, Public Law 86-593”. US Congress (1960年7月6日). 2022年1月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月18日閲覧。
  10. ^ Title 10 U.S.C., Chapter 857, Section 8742. Amended 1960, PL 86–593, S 1(7), 6 July 1960, 74 Stat. 332. Air Force cross: Award
  11. ^ a b c d Air Force Cross”. Air Force Link (USAF). 2010年10月18日閲覧。
  12. ^ Title 10, Sub-Title D Air Force, Part II Personnel, Chapter 857 Awards and Decorations, §8744”. Cornell University Law School. 2009年2月9日閲覧。
  13. ^ a b Title 10 U.S.C., Chapter 857, Section 8742. Air Force cross: Award
  14. ^ Title 10, Sub-Title D Air Force, Part II Personnel, Chapter 857 Awards and Decorations, §8742”. Cornell University Law School. 2009年2月8日閲覧。
  15. ^ United States Air Force Seal, 3. Crest
  16. ^ Air Force Cross (AC) - TracesOfWar.com”. www.tracesofwar.com. 2022年6月6日閲覧。
  17. ^ Vietnam War and Mayagüez Incident Air Force Cross Recipients”. 2022年6月6日閲覧。
  18. ^ Ramsey, John, "Airman Gets Medal For Valor", Fayetteville Observer, March 11, 2009, p. 1.
  19. ^ Maj. Craig Savage, AFSOC Public Affairs /"PJ’s extraordinary heroism earns Air Force Cross"/Published December 17, 2014
  20. ^ “SecAF awards Air Force Cross, 10 medals to Air Commandos” (英語). U.S. Air Force. http://www.af.mil/News/Article-Display/Article/1346342/secaf-awards-air-force-cross-10-medals-to-air-commandos/ 2017年10月18日閲覧。 
  21. ^ Christopher Baradat's Air Force Cross”. Air Force Magazine. 2019年8月24日閲覧。
  22. ^ USAF Air Force Cross Certificate for FLTLT Garry G. Cooper; actions 18 Aug 1968, signed 20 Mar 1981. Awarded 4 Dec 2021.

関連項目

外部リンク




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