生理的食塩水とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学試験 > 食塩水 > 生理的食塩水の意味・解説 

生理食塩水

(生理的食塩水 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/20 14:54 UTC 版)

生理食塩水(せいりしょくえんすい)とは、ヒト体液とほぼ等張に調製された、塩化ナトリウム水溶液である。生理食塩液などの名称で呼ばれる場合もある。日本薬局方・処方箋医薬品では、塩化ナトリウムを0.9 w/v%含有する食塩水を「生理食塩液」と定義している。日本では2005年4月1日の薬事法改正に伴い生理食塩水は処方薬扱いとされ、処方箋無しでの薬局店頭での販売ができなくなった。

生理的食塩水

ヒトの生理的食塩水の事を、生理食塩水と呼んでいる。なお、所詮は浸透圧がほぼ等しいだけであって、体液の他の溶質については無視した溶液に過ぎない。したがって、その欠点を補うために、リンゲル液タイロード液英語版ロック液英語版などが考案されてきた歴史を有する [1]

ヒト

1 L[注釈 1]精製水に対して、9 gの塩化ナトリウムを溶解させて作った食塩水を、生理食塩水と言う [2] 。 こうして調製した生理食塩水は、ヒトの体液と等張である [3] 。 ナトリウムイオンは1価の陽イオンなので、生理食塩水のナトリウムのミリ等量は、153.8 (mEq Na+/L)である [2]

ナトリウムの原子量を23.00、塩素の原子量を35.50とすると、ナトリウムのミリ等量は次の計算で算出できる。
{9.000×1000×1/(23.00+35.50)}/1≒153.8 (mEq Na+/L)
参考までに、生理食塩水のモル濃度は、次の計算式で算出できる。
{9.000/(23.00+35.50)}/1≒0.1538 (mol/L)=153.8 (mmol/L)

また、塩化物イオンは1価の陰イオンであり、ナトリウムイオンは1価の陽イオンであり、塩化ナトリウムの電離度は1と考えて良いため、その浸透圧は次の計算で算出できる。

153.8×(1+1)=307.6 (mOsm/L)

なお、生理食塩水にヒトの血球を投入しても、ほぼ浸透圧が等しいため溶血は起こらない [4] 。 ただし、ここまでの話はヒトの場合である。

ヒト以外

生物の種が異なれば、体液の浸透圧が異なる例もある。それぞれの生物の血液と等張に調製した食塩水を、生理的食塩水(せいりてきしょくえんすい)と言う [1] 。 例えば、哺乳類では0.85 w/v%から0.9 w/v%程度が、生理的食塩水である [1] 。 これに対して、両生類などの冷血動物では0.6 w/v%から0.7 w/v%程度が、生理的食塩水である [1] 。 生物学の実験では、それぞれの生物に対応した生理的食塩水を用意する場合も有る。

用途

大塚生食注(大塚製薬工場が製造・販売する生理食塩液)

生理食塩水は、比較的安価に調製が可能であり、注射用の溶液だけでなく、傷の洗浄など外用でも用いられる [3] 。 具体的には、細胞外液欠乏時やナトリウム欠乏時の輸液用の電解質溶液、麻酔薬や注射薬の希釈 [注釈 2] 、粘膜・創傷面の洗浄などに使用される。生理食塩水の浸透圧は、ヒトの体液の浸透圧とほぼ同じなので、粘膜や傷口に対して浸透圧の差による刺激をほとんど与えないため、鼻洗浄などにも用いる場合が有る [注釈 3] 。 さらに、豊胸手術の生理食塩水バッグ法などでも利用されている。

また、ヒト以外の動物に対しても、生理的食塩水を調製する場合がある。研究のための用途としては、生物の臓器や組織を、一時的に生かしたまま保持する目的などに用いられる場合がある。

脚注

注釈

  1. ^ リットルは小文字の「l」と大文字の「L」のどちらを用いてもよいが、本項では「L」を用いる。
  2. ^ ただし、薬の成分だけでなく、製剤の成分によっては、生理食塩水で希釈すると変質する場合も有る。これを配合変化と呼ぶ。例えば、シスプラチンの希釈には生理食塩水を使用できるのに対して、同じ白金製剤のオキサリプラチンには生理食塩水を使用できないなど、多くの事例が知られている。
  3. ^ 粘膜に真水が接した際に、痛みを感ずる場合が有る理由の1つが、真水と体液との浸透圧の差のためである。ここで生理食塩水を使用すれば、この痛みを出さずに済む。粘膜や創傷面の洗浄に使う理由も同様である。無論、安価である事も、洗浄液のような大量に使用する用途に向く理由の1つである。

出典

  1. ^ a b c d 藤田 尚男・藤田 恒夫 『標準組織学 総論(第3版)』 p.185 医学書院 1988年2月1日発行 ISBN 4-260-10047-5
  2. ^ a b 久保田 晴寿、桜井 弘(編集)『無機医薬品化学(第3版)』 p.117 廣川書店 1999年3月15日発行 ISBN 4-567-46054-5
  3. ^ a b 久保田 晴寿、桜井 弘(編集)『無機医薬品化学(第3版)』 p.119 廣川書店 1999年3月15日発行 ISBN 4-567-46054-5
  4. ^ 小野 哲章・峰島 三千男・堀川 宗之・渡辺 敏(編集)『臨床工学技士標準テキスト』 p.29 金原出版 2002年8月30日発行 ISBN 4-307-77125-7

関連項目


生理的食塩水

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/23 00:27 UTC 版)

生理食塩水」の記事における「生理的食塩水」の解説

ヒトの生理的食塩水の事を、生理食塩水呼んでいる。なお、所詮浸透圧ほぼ等しいだけであって体液の他の溶質については無視した溶液に過ぎない。したがって、その欠点を補うために、リンゲル液やタイロード液(英語版)やロック液(英語版)などが考案されてきた歴史有する

※この「生理的食塩水」の解説は、「生理食塩水」の解説の一部です。
「生理的食塩水」を含む「生理食塩水」の記事については、「生理食塩水」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「生理的食塩水」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「生理的食塩水」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



生理的食塩水と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「生理的食塩水」の関連用語

生理的食塩水のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



生理的食塩水のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの生理食塩水 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの生理食塩水 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS