無線呼出局
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無線呼出局(むせんよびだしきょく)は、無線局の種別の一つである。
定義
総務省令電波法施行規則第4条第1項第7号の2に「無線呼出業務を行う陸上に開設する無線局」と定義している。 ここでいう「陸上」とは、第3条第1項第5号により「河川、湖沼その他これらに準ずる水域を含む」ものである。
無線呼出業務は、第3条第1項第8号の3に「携帯受信設備(陸上移動受信設備であつて、その携帯者に対する呼出し(これに付随する通報を含む。)を受けるためのものをいう。)の携帯者に対する呼出しを行う無線通信業務」と定義している。
引用の促音および送り仮名の表記は原文ママ
概要
無線呼出し、すなわち携帯受信機器(英語ではpager、日本ではポケットベル、ポケベルと呼ばれる。)に一方的な送信(呼出し)を行う無線局のことである。
文字通り、利用者に対し送信を行うのみの業務である。無線工学など技術的な側面からは基地局であるが、電波法令上は独立した種別の無線局である。陸上局の一種でもある。
免許
外国籍の者に免許は原則として与えられないことは電波法第5条第1項に定められているが、例外として第2項に
- 第7号 自動車その他の陸上を移動するものに開設し、若しくは携帯して使用するために開設する無線局又はこれらの無線局若しくは携帯して使用するための受信設備と通信を行うために陸上に開設する移動しない無線局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く。)
- 第8号 電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局
があり、外国人や外国の会社・団体でも無線呼出局を開設できる。
種別コードはRP。免許の有効期間は5年。但し、当初に限り有効期限は4年をこえて5年以内の5月31日[1] となる。
- 用途
局数の推移に見るとおり電気通信業務用が多数を占める。 #沿革にあるとおりポケベルが事業化された際に公衆通信業務用(現行の電気通信業務用)として新設された種別であったからである。 総数のピークは平成5年度末の3,859局[2]であった。 21世紀初頭には、携帯電話の普及に伴いポケベルの需要が減退し電気通信事業者が相次いで撤退し、局数も減少した。 しかし唯一の事業者となった東京テレメッセージが市町村防災行政無線の同報無線システムを開発、ピーク時には及ばないが増加に転じてきた。
その他の用途としては、鉄道事業者、サービス業者など業務上で呼出しを要する事業者に陸上運輸用、サービス用などとして免許される。
電気通信業務用には、250MHz帯を最大空中線電力250Wで無線呼出用に割り当てる [3] としている。 その他の業務には26MHz帯の専用波の4波 [4] もしくは他業務の60MHz帯、150MHz帯または400MHz帯を兼用して割り当てる [5] としており、150MHz帯および400MHz帯で免許されたものもある。 また、実例は無いが、電気通信事業者は76MHz~90MHzのFM放送に重畳して無線呼出業務を行う [6] ことができる。
旧技術基準の機器の使用
無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [7] により、旧技術基準に基づく無線設備が免許されるのは「平成29年11月30日」まで [8]、 使用は「平成34年11月30日」まで [9] とされた。
対象となるのは、
- 「平成17年11月30日」[10]までに製造された機器または特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則により認証された適合表示無線設備
- 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに製造された機器[11]または認証された適合表示無線設備[12]
である。
新規免許は「平成29年12月1日」以降はできないが、使用期限はコロナ禍により[13]「当分の間」延期[14]された。
詳細は無線局#旧技術基準の機器の使用を参照。
運用
無線局運用規則第4章 固定業務、陸上移動業務及び携帯移動業務の無線局、簡易無線局並びに非常局の運用による。
操作
無線呼出局は、陸上の無線局であり、最低でも第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理(常駐するという意味ではない。)を要する。電気通信事業用は空中線電力100W又は200Wが標準であり、第一級陸上特殊無線技士以上を要する。
検査
- 落成検査は、登録検査等事業者等による点検が可能で、この結果に基づき一部省略される。
- 定期検査は、電波法施行規則第41条の2の6第6号により空中線電力が1Wを超えると行われる。周期は別表第5号第27号により1年。登録検査等事業者等による検査が可能で、この結果に基づき省略される。
- 変更検査は、落成検査と同様である。
沿革
1968年(昭和43年)- 電波法施行規則に信号報知局が「もつぱら信号受信設備に対して送信するための陸上に開設する移動しない無線局」と、信号報知業務が「信号受信設備(陸上(河川、湖沼その他これらに準ずる水域を含む。)を移動中又はその特定しない地点に停止中に使用する無線設備であつて、もつぱらその携帯者に対する単なる合図としての信号を行なうためのものをいう。)と信号報知局との間の無線通信業務」と定義され、免許の有効期間は5年とされた。 [15]
- 当初は公衆通信業務用に150Mc[16]帯が割り当てられ、単に音響を発するためだけの信号を送信するのみであった。
- 以後、5年毎の一定の日に満了するように免許された。
1978年(昭和53年)- 公衆通信業務用に150MHz帯の周波数逼迫に伴い、デジタル方式250MHz帯が新たに割り当てられた。 [17]
1985年(昭和60年)- 信号報知局が無線呼出局と改められ、定義が「専ら携帯受信設備に対して送信するための陸上に開設する移動しない無線局」となった。 また、信号報知業務が無線呼出業務とされ、定義が「携帯受信設備(陸上(河川、湖沼その他これらに準ずる水域を含む。)を移動中又はその特定しない地点に停止中に使用する無線設備であつて、専らその携帯者に対する単なる呼出し又はこれに付随する信号を受けるためのものをいう。)と信号報知局との間の無線通信業務」と、用途も公衆通信業務用が電気通信業務用とされた。 [18]
- 業務の定義の変更により、付随する情報も送信できることとなった。実施されたのは文字情報であるが、その他の画像などの情報を否定するものでもない。
1986年(昭和61年)- 電気通信業務用への150MHz帯の割当ては全て廃止、250MHz帯のみに[19][20]
1993年(平成5年)
1995年(平成7年)-
1998年(平成10年)- 空中線電力が1Wを超える電気通信業務用以外の無線呼出局は定期検査を要しないものに[26]
2009年(平成21年)- 無線呼出局は無線業務日誌の備付けが不要に[27]
引用の促音および送り仮名の表記は原文ママ
年度 | 平成13年度末 | 平成14年度末 | 平成15年度末 | 平成16年度末 | 平成17年度末 | 平成18年度末 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 1,850 | 1,800 | 1,753 | 1,709 | 1,629 | 1,340 | |
電気通信業務用 | 1,223 | 1,222 | 1,218 | 1,200 | 1,194 | 1,156 | |
年度 | 平成19年度末 | 平成20年度末 | 平成21年度末 | 平成22年度末 | 平成23年度末 | 平成24年度末 | |
総数 | 203 | 189 | 173 | 158 | 100 | 95 | |
電気通信業務用 | 32 | 32 | 32 | 32 | 29 | 29 | |
年度 | 平成25年度末 | 平成26年度末 | 平成27年度末 | 平成28年度末 | 平成29年度末 | 平成30年度末 | |
総数 | 87 | 82 | 79 | 70 | 70 | 77 | |
電気通信業務用 | 30 | 32 | 34 | 37 | 54 | 47 | |
年度 | 令和元年度末 | 令和2年度末 | 令和3年度末 | 令和4年度末 | |||
総数 | 73 | 94 | 101 | 99 | |||
電気通信業務用 | 47 | 69 | 87 | 89 | |||
各年度の用途・局種別無線局数[28]による。 |
- 電波利用料額
電波法別表第6第2項の「移動しない無線局」が適用される。
年月 | 料額 | 備考 |
---|---|---|
1993年(平成5年)4月[29] | 12,100円 | |
1997年(平成9年)10月[30] | ||
2006年(平成18年)4月[31] | 7,900円 | 空中線電力により区分される。 例示は10mWを超えるもの |
2008年(平成20年)4月[32] | 9,400円 | |
2011年(平成23年)10月[33] | 10,600円 | |
2014年(平成26年)10月[34] | 8,900円 | |
2017年(平成29年)10月[35] | 12,700円 | |
2019年(令和元年)10月[36] | 5,900円 | |
2022年(令和4年)10月[37] | 6,400円 | |
注 料額は減免措置を考慮していない。 |
その他
1986年(昭和61年)に構内無線局が制度化された際、工場敷地内、ビル内など狭い範囲を対象とした構内ページング用があった [38]。 1989年(平成元年)に制度化された特定小電力無線局にも無線呼出用がある [39]。 構内ページング用構内無線局は、2000年(平成12年)に廃止され、特定小電力無線局に統一された [40] [41]。
脚注
- ^ 平成19年総務省告示第429号 電波法施行規則第8条第1項の規定に基づく陸上移動業務の無線局等について同時に有効期間が満了するよう総務大臣が毎年一の別に告示で定める日 第1号(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)に6月1日とあることによる。
- ^ 各年度の情報通信白書による。
- ^ 電波法関係審査基準 地域周波数利用計画策定基準一覧表 第8号無線呼出局 2.電気通信業務用無線呼出局
- ^ 同上 第8号無線呼出局 1.専用無線呼出局
- ^ 同上 第2号陸上移動業務及び携帯移動業務の局
- ^ 告示周波数割当計画 第2周波数割当表 第2表27.5MHz―10000MHz
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項
- ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第5条第4項
- ^ 無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集 -新スプリアス規格への移行期限の延長-(総務省報道資料 令和3年3月26日)(2021年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正
- ^ 昭和43年郵政省令第3号による電波法施行規則改正
- ^ McはメガサイクルでMHzに相当、ヘルツが法制上の単位になったのは1972年(昭和47年)7月
- ^ 周波数割当(2)業務別周波数割当の現状キ.その他の地上業務(エ)その他 昭和53年版通信白書 第2部第6章第1節 周波数の監理3(総務省情報通信統計データベース)
- ^ 昭和60年郵政省令5号による電波法施行規則改正
- ^ 周波数管理及び無線従事者 (1)周波数管理 ア.周波数の割当て (ク)その他の業務 昭和60年版通信白書資料編 第2通信メディア 5(総務省情報通信統計データベース)
- ^ 周波数管理及び無線従事者 1.周波数管理 (1)周波数の割当て ク.その他の業務 昭和61年版通信白書(資料編)第5(同上)
- ^ 平成5年郵政省告示第601号(後に平成19年総務省告示第429号に改正)
- ^ 平成5年郵政省令第61号による電波法施行規則改正
- ^ 平成7年郵政省令第76号による電波法施行規則改正
- ^ FM多重無線呼出しの制度化・事業化 平成8年版通信白書 第2章第4節3.(3) ア.(総務省情報通信統計データベース)
- ^ 平成7年郵政省令第77号による無線設備規則改正
- ^ 平成9年郵政省令第75号による電波法施行規則改正の施行
- ^ 平成21年総務省告示第321号による昭和35年郵政省告示第1017号改正
- ^ 用途別無線局数 総務省情報通信統計データベース - 分野別データ
- ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
- ^ 平成9年法律第47号による電波法改正
- ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の施行
- ^ 平成20年法律第50号による電波法改正
- ^ 平成23年法律第60号による電波法改正
- ^ 平成26年法律第26号による電波法改正
- ^ 平成29年法律第27号による電波法改正
- ^ 令和元年法律第6号による電波法改正
- ^ 令和4年法律第63号による電波法改正
- ^ 昭和61年郵政省告示第378号制定
- ^ 平成元年郵政省告示第42号制定
- ^ 平成12年郵政省告示第272号による平成元年郵政省告示第42号改正
- ^ 平成12年郵政省告示第311号による昭和61年郵政省告示第378号改正
関連項目
- 無線呼出局のページへのリンク