松尾半左衛門
(生年不詳)
芭蕉の兄。松尾与左衛門の(2男4女の)長男で松尾家の当主。弟であった芭蕉のような文学的才能も無かったと見えて俳諧に志すことは遂に無かった。伊賀上野のように狭い社会で、しかも伊賀蕉門は芭蕉を尊敬してやまなかったから、そのことが兄の得意でなかったわけはないにもかかわらず、俳諧にいささかもタッチしていないところをみると余程その方面の才能はなかったのであろう。他方、生活力も優れたものを持ち合わせなかったと見えて、経済的には相当に困窮していたようである。芭蕉が、少しでも俗世間的栄達、経済的野望を持っていれば援助は十分に得られたのであろうが、それは全く望むべくもなく、近江蕉門や伊賀蕉門門人たちからの何がしかの救済があったかもしれないが、それとても見るほどのものではなかったようである。
「総領の甚六」の、優しい性格の持ち主であったようで、そのことが芭蕉の度重なる帰郷につながったのであろう。先妻を失い、再婚している。半左衛門に宛てた芭蕉の書簡は6通現存している。
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