曼珠沙華あつけらかんと道の端

現代俳句データベース(俳句)

曼珠沙華あつけらかんと道の端

作　者	夏目漱石
季　語	曼珠沙華
季　節	秋
出　典
前　書
評　言	この数年必ず秩父の巾着田を彩る曼珠沙華を見に行く。確かに圧巻である。この花の句は実に多い。句材として色々発想しやすいからだろうか。それでも私は見るたびにこの句を思い出す。平凡な写生の句のようにも思えるが「あつけらかん」と咲いているという表現に惹かれる。彼岸花とか死人花、捨て子花とも呼ばれて時に縁起が悪く嫌われる花を、漱石は「あつけからんと」句にしているのだ。漱石の文学に共通する客観的で、感情移入を抑える姿勢をこの句にも感じることができる。実はその奥に漱石の狂気が秘められているのだが。 　安々と海鼠の如き子を生めり（長女筆子誕生）
評　者	田付賢一
備　考