微細構造定数とは? わかりやすく解説

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微細構造定数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/05 10:12 UTC 版)

微細構造定数
fine-structure constant
記号 α
7.2973525643(11)×10−3 [1]
相対標準不確かさ 1.6×10−10
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微細構造定数(びさいこうぞうていすう、: fine-structure constant)は、電磁相互作用の強さを表す物理定数であり、結合定数と呼ばれる定数の一つである。電磁相互作用は4つある素粒子基本相互作用のうちの1つであり、量子電磁力学をはじめとする素粒子物理学において重要な定数である。1916年アルノルト・ゾンマーフェルトにより導入された[2][3]。記号は α で表される。

歴史的な経緯から、複数の電磁気量の単位系とそれらが基づく量体系があるが、微細構造定数は無次元量で、単位はなく、量体系に依らずは変わらない。微細構造定数の値は

電子と光子が相互作用する過程を表すファインマン・ダイアグラムの例。実線は電子の伝播関数、波線は光子の伝播関数であり、それらを結ぶ頂点に α が現れる。

量子電磁力学 (QEDにおいて、微細構造定数は電子光子相互作用結合定数に関係している。QEDでは ħ = c = ε0 = 1とする自然単位系がとられるため、微細構造定数は α = e2/4π となり、e = 4πα の関係が成り立つ。QEDの発展に貢献した物理学者R.P. ファインマンはその著書の中で次のように述べている[26]

結合定数 e、つまりホンモノの電子がホンモノの光子を放出、吸収する振幅については、深遠で美しい問いがある。これは実験ではおよそ0.08542455ぐらいに決まる単純な数だ(友人の物理学者たちは、この数字がわからない。というのも、この逆数の2乗を覚えているからであり、およそ137.03597 、最後の桁には2程度の不確かさがある値だ。これは50年以上前に発見されてからずっと謎であり、優秀な理論物理学者たちは皆、壁に貼り付け、悩んでいる。)。すぐにでもこの結合を表す数がどこから現れたのか、知りたいだろう。円周率や、もしかしたら自然対数の底に関係しているのかもしれない。誰もわからないのだ。こいつは全くもって物理学における重大な謎の一つだ。人間の理解が及ばないところから現れた魔法の数だ。

— R.P. Feynman、QED: The strange theory of light and matter, 129p

脚注

出典
  1. ^ a b CODATA Value
  2. ^ Sommerfeld (1916)
  3. ^ NIST "Current advances: The fine-structure constant and quantum Hall effect"
  4. ^ CODATA Value
  5. ^ NIST "Fundamental Physical Constants-Atomic and Nuclear Constants"
  6. ^ a b Peskin & Schroeder (1995, Notations and Conventions)
  7. ^ Cottingham & Greenwood (2005, p. 25)
  8. ^ Nair (2012, p. 103)
  9. ^ ブリタニカ百科事典
  10. ^ 物理化学で用いられる量・単位・記号 (第3版) p.174 脚注 3)
  11. ^ Mohr, Taylor & Newell (2012), V.A.
  12. ^ Mohr, Newell & Taylor (2016), V.A.
  13. ^ a b c d Tiesinga, Mohr, Newell & Taylor (2021), IV.D.
  14. ^ Mohr, Taylor & Newell (2012), VII.
  15. ^ Mohr,Newell & Taylor (2016), VII.
  16. ^ Kinoshita (1996)
  17. ^ a b c d Tiesinga, Mohr, Newell & Taylor (2021) TABLE XXI.
  18. ^ Hanneke, Fogwell & Gabrielse (2008)
  19. ^ a b Fan, X.; Myers, T. G.; Sukra, B. A. D.; Gabrielse, G. (2023-02-13). “Measurement of the Electron Magnetic Moment”. Physical Review Letters 130 (7): 071801. doi:10.1103/PhysRevLett.130.071801. https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.130.071801. 
  20. ^ Tiesinga, Mohr, Newell & Taylor (2021), X.
  21. ^ Parker et al. (2018)
  22. ^ Bouchendira et al. (2011)
  23. ^ Morel, Léo; Yao, Zhibin; Cladé, Pierre; Guellati-Khélifa, Saïda (2020-12). “Determination of the fine-structure constant with an accuracy of 81 parts per trillion” (英語). Nature 588 (7836): 61–65. doi:10.1038/s41586-020-2964-7. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/s41586-020-2964-7. 
  24. ^ Mohr, Newell & Taylor (2016), VIII.
  25. ^ Stephen Hawking (1988). A Brief History of Time. Bantam Books. pp. 7, 125. ISBN 978-0-553-05340-1. https://archive.org/details/briefhistoryofti00step_1 
  26. ^ Feynman (1986)

参考文献

論文

CODATAの詳説
異常磁気モーメントの測定
原子反跳による測定
  • A. Wicht, J. M. Hensley, E. Sarajlic, and S. Chu (2002). “A Preliminary Measurement of the Fine Structure Constant Based on Atom Interferometry”. Physica Scripta (T102): 82. doi:10.1238/Physica.Topical.102a00082. 
  • R. Bouchendira, P. Cladé, S. Guellati-Khélifa, F. Nez, and F.Biraben (2011). “New Determination of the Fine Structure Constant and Test of the Quantum Electrodynamics”. Phys. Rev. Lett. 106 (8). doi:10.1103/PhysRevLett.106.080801. 
  • R.H. Parker, C. Yu, W. Zhong, B. Estey, and H. Müller (2018). “Measurement of the fine-structure constant as a test of the Standard Model”. Science 360 (6385): 191-195. doi:10.1126/science.aap7706. 

書籍

関連項目

外部リンク





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