小さな図書館とは? わかりやすく解説

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小さな図書館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/11 02:29 UTC 版)

Little Free Library
小さな図書館の例 (マサチューセッツ州)
創立者 トッド・ボル英語版[1]
団体種類 501(c)団体
略称 LFL
設立 2012年 (2012)
ウェブサイト littlefreelibrary.org
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小さな図書館(ちいさなとしょかん)とは、誰でも無料で本の貸し借り交換ができる小さな本箱のこと[注 1]みんなの本棚やマイクロ・ライブラリー[注 2]の一種。

小さな図書館は、非営利団体リトル・フリー・ライブラリー(: Little Free Library)が行っている、アメリカ合衆国および他国にも広がっている運動である。

概要

この運動は2009年にアメリカ合衆国ウィスコンシン州のハドソンで始まった。このアイデアは愛書家で学校の教師だった母親への想いからトッド・ボル (Todd Bol) によって考案された。彼は小さな校舎のような外見を持つ木製の本箱を「無料本交換」(: Free Book Exchange)の看板と共に芝の庭の支柱の上に設置した。ボルはパートナーのリック・ブルックス (Rick Brooks) と共にアイデアを広め、メディアで取り上げられたことから急速に運動は広がった[4]。2012年に非営利団体リトル・フリー・ライブラリーを設立[5]。本部はウィスコンシン州ハドソンにつくられたが、2022年にミネソタ州セントポールに移転[6]。2018年10月、トッド・ボルが死去[7]。当初の目標はカーネギー図書館より1つ多い2,510の小さな図書館を設置することであったが、2012年8月に達成[8]。2025年現在、20万を越える小さな図書館が、128の国と地域に設置されている。

チャーターサイン

小さな図書館を開設するには、チャーターサイン(: Charter Sign)もしくはチャーターサインが付属する本箱などを購入する必要がある[注 3]。また小さな図書館には最低1名「スチュワード」(: Steward)と呼ばれる、小さな図書館の宣伝・管理・維持する人を任命する必要がある。スチュワードは、専用アカウントからリトル・フリー・ライブラリー・マップ[9]に掲載される情報を管理できる[10]

小さな図書館の目的は、誰でも無料で本を貸したり、借りたり、交換したりできる場所を提供すること。その結果、リテラシーの促進やコミュニティーの構築がなされることを期待している[11]。「本を盗む」という概念は存在せず、借りた本は必ずしも返却する必要はない[注 4]。誰でも本を置くことができるが、私有地に設置されている場合は所有者に許可を取るのが望ましい。ただし禁書行為は推奨されない[12]。本箱にはしばしば「一冊借りて返す時はできたら一冊寄付して」 (: Take a Book. Leave a Book.) という依頼が記されている[13][4]

設置例

日本国内での設置例 (秋田県秋田市、新屋駅[14]

小さな図書館は庭先以外に喫茶店やバス停、店先にも設置されている。自作の本箱には木枠やミルクの缶など地元で入手できる材料を用いて工夫して作られたものや、中には自然災害で出た瓦礫で作られたものもある[4]。公園や通りなど所有者がいない所に設置すると落書きをされたりゴミを入れられたりチラシが貼られてしまい失敗に終わる。スチュワードと呼ばれる情熱を持った管理人が毎日世話をする事で成功する。[15]

小さな図書館の設置場所に制限はないが、一般人が入れない場所に設置した場合は、リトル・フリー・ライブラリー・マップへの掲載は推奨されない。マップに掲載されているのを見て、あやまって入ってしまう可能性があるため。

地域によってはゾーニングに関連したトラブルが発生することがある。2012年後半、ウィスコンシン州のホワイトフィッシュ・ベイでは、前庭には郵便受けを含め物を設置してはならないと村が定めた条例に反するとして、小さな図書館を設置した教会に撤去が求められるという事件が起きた。村の委員会は小さな図書館は公共図書館に相当するようなものではないと言い、どの家庭に対しても設置許可を与えようとしないという問題が生じた[16]。2013年8月、村は小さな図書館を私有地に設置することを許可する条例を承認した[17]

小さな図書館は、自前の図書館を持たない農村部や災害で図書館が被害を受けた場所に寄贈されてきた。2013年2月の時点で、全米50州と世界40カ国がこの読書プログラムに関わってきた。現在は世界で5000の登録された小さな図書館があり、登録されていないものも1000ほどはあると推定されている[18]

アフリカでは読むための本を入手するのが極めて困難という状況がある。米国のロータリークラブは小さな図書館を西アフリカのガーナ識字率向上に役立てようとしている。ミネソタ州にある「en:Books for Africa」の会も、本と共に小さな図書館をガーナに送ることにした[13][19]

関連書籍

  • 礒井純充、中川和彦、服部滋樹、トッド・ボル『マイクロ・ライブラリー 人とまちをつなぐ小さな図書館』学芸出版社、京都府、2015年5月1日、160-182頁。ISBN 9784761513511 

関連動画

映像外部リンク
The start of the Little Free Library: Todd Bol at TEDxFargo
映像外部リンク
#lflff - 2013年に行われたFilm Festivalのコンテスト参加作品[20]

関連項目

雑多

  • 「まちライブラリー[21]」と連携しており、まちライブラリーに登録すると、Little Free Libraryとしても公認される[22]
  • 最も大きなマイクロ・ライブラリーネットワーク(: Largest micro-library network)としてギネス世界記録に認定されている[23]

脚注

注釈

  1. ^ NHKによるリトル・フリー・ライブラリーの本箱の呼称[2]。リトル・フリー・ライブラリーでは設置する本箱をLibraryやBook Exchangeと呼んでいる。
  2. ^ 礒井純充の定義では、個人や小さな組織が運営する私設図書館のこと[3]
  3. ^ Little Free Library商標登録されているので無許可で使用できない。
  4. ^ 所有者が返却を求めている場合はその限りではない。なにより所有者の意向が優先される。

出典

  1. ^ Durst, Kristen (2012年3月7日). “'Little Free Libraries' Hope For Lending Revolution”. All Things Considered. National Public Radio. http://www.npr.org/2012/03/07/148170088/little-free-libraries-hope-to-spark-lending-revolution 2013年4月7日閲覧。 
  2. ^ NHK 海外ネットワーク (2013年). “アメリカで人気 "小さな図書館"”. NHK. 2013年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月7日閲覧。
  3. ^ https://readyfor.jp/projects/microlibrary2014
  4. ^ a b c “Using books to build community”. The Daily Nightly. (2012年3月10日). オリジナルの2012年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120501165941/http://dailynightly.msnbc.msn.com/_news/2012/03/10/10634425-using-books-to-build-community 2013年4月7日閲覧。 
  5. ^ https://www.guidestar.org/profile/45-4043708
  6. ^ https://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/libraries/article/91355-little-free-library-launches-indigenous-library-program.html
  7. ^ https://www.jsonline.com/story/news/obituaries/2018/10/18/little-free-libraries-founder-todd-bol-dies-age-62/1688076002/
  8. ^ https://web.archive.org/web/20190804021226/https://littlefreelibrary.org/wp-content/uploads/2013/09/Little-Free-Library-Milestone-Timeline-November-2016.pdf
  9. ^ https://littlefreelibrary.org/map/
  10. ^ https://littlefreelibrary.org/stewards/registration/
  11. ^ 必需品か贅沢品か:Little Free Librariesの課題(文献紹介)”. 国立国会図書館. 2025年10月10日閲覧。
  12. ^ https://littlefreelibrary.org/about/book-bans/
  13. ^ a b “Wis. man's Little Free Library copied worldwide”. Yahoo! News. (2012年11月17日). オリジナルの2018年1月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180103193713/https://www.yahoo.com/news/wis-mans-little-free-library-copied-worldwide-181702969.html 2013年4月7日閲覧。 
  14. ^ https://www.jreast.co.jp/akita/press/pdf/20160520-4.pdf
  15. ^ マイクロ・ライブラリー, p. 178.
  16. ^ Stingl, Jim (2012年11月10日). “Village slaps endnote on Little Libraries”. Wisconsin Journal Sentinel. 2012年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月7日閲覧。
  17. ^ https://web.archive.org/web/20140625152033/http://www.whitefishbaynow.com/news/218695041.html
  18. ^ Building Momentum for Little Free Libraries”. Publishers Weekly (2013年2月8日). 2013年4月7日閲覧。
  19. ^ Books For Africa and Little Free Library Form Partnership to Ship "Little Libraries" to Africa”. Books For Africa. 2013年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月7日閲覧。
  20. ^ https://current.ndl.go.jp/car/24250
  21. ^ https://machi-library.org/
  22. ^ 依田紀久. “E1603 – 庭先の本棚 “Little Free Library”,世界へ,そして日本へ”. 国立国会図書館. 2025年10月9日閲覧。
  23. ^ https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/772672-largest-micro-library-network

外部リンク


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