夏の海水兵ひとり紛失す
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
夏 |
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
この句は、あの「戦争が廊下の奥に立ってゐた」の白泉の作だ。 昭和十年から十六年・・・日本は急速に転がるように戦争へ突き進んで行った。家の中に土足で入ってきた戦争は、若者を容赦なく拉致していく。 そしてやがて、「お国のために」陸に空に海に散っていった。白泉はその理不尽な死を「水兵ひとり紛失す」と冷徹な眼で表現する。 すでに殆どの民は、軍国主義一色の体制に抗うこともなく、今でいうマインドコントロールがほぼ達成されていた時代だ。そのような時代に、個を紛失せざるをえない理不尽を恐れることなく白泉は詠んだ。やがて新興俳句や川柳はほぼ壊滅的な状態に追い込まれる。白泉も「京大俳句」の弾圧事件で逮捕される。 あの厳しい時代に「人間」を詠み、「戦争の理不尽」を詠み続けた白泉の姿勢を決して忘れてはならないと思う。戦後60年、戦争の出来る国の準備が着々と進む今だからこそ・・。 |
評 者 |
|
備 考 |
- 夏の海水兵ひとり紛失すのページへのリンク