増田屋半次郎とは? わかりやすく解説

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増田屋半次郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/18 05:36 UTC 版)

増田屋 半次郎(ましだや はんじろう、生没年不詳)は、江戸時代中期の蕎麦屋。江戸新吉原で開業し、当時の吉原名物として知られた[1]

概要

新吉原五十間道の蕎麦屋・増田屋は18世紀中ごろに新吉原五十間道に開業された蕎麦屋で、その蕎麦は「釣瓶蕎麦(つるべそば)」の名で知られた。若松屋幸助という人が升形の釣瓶を出前器に用いたことに始まるという。この若松屋の店を継いだと思われるのが明和4年(1767年)頃に現れる「増田屋次郎介」で[注釈 1]、程なく店主の名は半次郎に代わる。なお明和9年(1772年)には遊廓内伏見町にも釣瓶蕎麦を号する増田屋清吉の名が見られる[1][2]

当時の「吉原細見」には「名物つるべそば」の肩書が記載されており、また巻末広告に「吉原名物」の一つとして釣瓶蕎麦が掲載されている[注釈 2][4][5][6]寛政年間の『江戸見物道知辺』には浅草黒船町の砂場蕎麦、駒形の正直蕎麦、鎌倉河岸の東向庵、堺町の福山蕎麦と並んで江戸の名店として挙げられる[7]吉原遊廓を舞台とした明和7年(1770年)刊行の洒落本『遊子方言』にも釣瓶蕎麦が登場している。またその頃の『武江年表』や江戸蕎麦の名店の一つに名を挙げられている[1][8][7]。増田屋は吉原五十間道、即ち吉原遊廓大門の外に位置した。釣瓶蕎麦の店舗前は吉原へ向かう駕籠の乗降地点と目されていたらしく、その事を題材とした川柳もいくつか詠まれている[注釈 3][1][10]

天明3年(1783年)には店主の名が増田屋半四郎に交代する。そして天明5年(1785年)春の「吉原細見」では増田屋の木版が削られており、以後は見られなくなり釣瓶蕎麦は廃絶。店舗は隣家の兵庫屋藤介に買い取られたようである[5][1][11]

脚注

注釈

  1. ^ 安永4年(1775年)発刊の「吉原細見」には、増田屋の隣に「若松屋隠居」の記載がある[1]
  2. ^ 吉原名物として掲載があるのは「袖の梅(丸薬)」「巻煎餅」「吉原細見」「甘露梅」「釣瓶蕎麦」「最中の月(菓子)」「山屋豆腐」の七点。『浅草志』には加えて「安寧湯(薬湯)」「昆布巻」「漬菜」「喜の字屋」「駕籠屋」「舟宿」の記載がある[3]
  3. ^
    乗リつけハ つるべそば あたりへおろし — 安永九年万句合 満印[9]
    あの四ツ手 壱分〆たと 釣瓶蕎麦 — 『川傍柳』四編(天明2年刊)[9]
    そば屋の前で 客みんな 下乗なり — 『玉柳』(天明7年序)[9][10]

出典

  1. ^ a b c d e f 青木 1982, pp. 182–183.
  2. ^ 『絵本江戸土産』, p. 164.
  3. ^ 松宮 1973, pp. 294–295.
  4. ^ 青木 1982, p. 182.
  5. ^ a b 新島 1975, p. 415.
  6. ^ 松宮 1973, p. 295.
  7. ^ a b 新島 1975, p. 128.
  8. ^ 青木 1982, p. 179.
  9. ^ a b c 青木 1982, p. 183.
  10. ^ a b 『絵本江戸土産』, pp. 164–165.
  11. ^ 『絵本江戸土産』, p. 165.

参考文献

  • 青木迷朗「江戸の蕎麦屋(一)」『川柳蕎麦切考』太平書屋、1982年。 
  • 松宮三郎『江戸歌舞伎と広告』東峰書房、1873年。 
  • 新島繁『蕎麦史考』錦正社、1975年。 
  • 『絵本江戸土産』佐藤要人(解説)、有光書房、1975年。 



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