伊藤悠貴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/19 06:28 UTC 版)
伊藤 悠貴 (いとう ゆうき) |
|
---|---|
出生名 | 伊藤 悠貴 |
出身地 | ![]() |
学歴 | ![]() |
ジャンル | クラシック音楽 |
職業 | チェロ奏者 |
事務所 | ジャパン・アーツ |
公式サイト | 伊藤悠貴後援会公式サイト |
伊藤 悠貴(いとう ゆうき)は日本のチェロ奏者。セルゲイ・ラフマニノフ作品の演奏・研究をライフワークとする。2025年、日本人チェロ奏者として初めて、デンマークの世界的弦メーカー・ラーセン(Larsen Strings)公認専属アーティストに指名された[1]。イギリス・ロンドン在住。
人物
ライフワークとするセルゲイ・ラフマニノフ作品の演奏において国際的に高い評価を得ており、2012年、日本人チェロ奏者として唯一の全集アルバム『ラフマニノフ:チェロ作品全集』(CHRCD044)をリリース。イギリスBBC、NHKテレビ・ラジオ等にて多数放送され、特にチェロソナタ (ラフマニノフ)の演奏・解釈が著名である。2023年にはラフマニノフ生誕150周年を記念し、初著書『ラフマニノフ考』ーチェロ奏者から見たその音楽像ー(恵雅堂出版)を刊行。演奏家としては異例の学術書出版となった。 また、フランク・ブリッジ、フレデリック・ディーリアス、ジョン・アイアランド等イギリス人作曲家のチェロ作品を広く紹介している。
1996年、東京児童劇団に最高得点で合格するが、同じ土曜日に開かれていた桐朋学園子供のための音楽教室に入室。チェロを倉田澄子に師事した。2004年に渡英。ロンドンでアレクサンダー・ボヤルスキーに師事、また名チェリストダヴィド・ゲリンガスの弟子となる。2015年、王立音楽大学を最優秀弦楽器奏者賞を得て全課程を首席で卒業。
16歳でロンドンにてコンチェルト・デビュー、またクロアチア各都市リサイタルツアーを行い、ヨーロッパデビュー。2010年第17回ブラームス国際コンクール、2011年第3回ウィンザー国際弦楽コンクールにて日本人チェロ奏者として初優勝、それをきっかけにロンドンを拠点に本格的に音楽活動を開始した。
2011年ウィンザー城にて行われたウィンザー音楽祭開幕演奏会のソリストとして、ドヴォルザークのチェロ協奏曲をフィルハーモニア管弦楽団と共演、プロ・デビューを果たす。その後国内外オーケストラと共演を重ねる他、ウラディーミル・アシュケナージ、一柳慧、小澤征爾、ダヴィド・ゲリンガス、小林研一郎、スヴェトラーナ・ザハーロワ、ヨハン・デ・メイ、グザヴィエ・ドゥ・メストレ、オウェイン・アーウェル・ヒューズ、ジュリアン・ロイド・ウェバーなどの指揮者、演奏家、作曲家、舞踊家をはじめとする多分野にわたる世界的アーティストと多数共演を重ねている。
2012年春に英国チャンプスヒル・レコード社よりデビューアルバム「ラフマニノフ:チェロ作品全集」をワールドワイド・リリース。英国のメジャー音楽誌ストラドより「今月の一枚」に選ばれ、ラフマニノフのチェロ作品ディスクの名盤の一つとして数えられている。iTunesおよびAmazonにても入手可能。共演はリーズ国際ピアノコンクール優勝ソフィア・グルャク。
2014年、ロリン・マゼールの前座リサイタルをロイヤル・フェスティバル・ホールで開催。2016年には、文豪宮沢賢治生誕120年を記念し、NHK全国放映リサイタルを開催。その映像は世界放映された(100年記念公演はヨーヨー・マが行っている)。なお、この番組におけるインタビュー中の「生まれ変わったらこの曲(ラフマニノフのチェロソナタ)になる」という言葉は各所で引用される[2]。
2018年6月、イギリスの殿堂、世界三大室内楽ホールの一つであるウィグモア・ホールにて、ホール史上初となる、チェロ奏者によるオール・ラフマニノフ・リサイタルを行い、話題を呼んだ。
2019年2月5日、日本の音楽芸術文化発展への貢献を認められ、小澤征爾、堤剛より、第17回齋藤秀雄メモリアル基金賞を授与された[3]。
2023年11月、ラフマニノフ生誕150周年を記念した単行本『ラフマニノフ考』ーチェロ奏者から見たその音楽像ー(恵雅堂出版)を刊行。演奏家としては異例の学術書出版となる。同月、横浜みなとみらいホール大ホールにおいて、ラフマニノフ本人が所有したピアノ「ラフマニノフ・スタインウェイ」(高木クラヴィア所蔵)を世界で初めてデュオで使用し、「ラフマニノフ生誕150周年記念オール・ラフマニノフ・リサイタル」を行った。
2025年、日本人チェロ奏者として初めて、デンマークの世界的弦メーカー・ラーセン(Larsen Strings)公認専属アーティストに指名された。その他所属アーティストには、ダヴィド・ゲリンガス、ジャン=ギアン・ケラス、ダニエル・ミュラー=ショット、ソル・ガベッタ、ゴーティエ・カプソン、ユリア・フィッシャーらが名を連ねている[4]。
NHK名曲アルバム、クラシック倶楽部、日本テレビ系列「NEWS ZERO」、恋するクラシック、テレビ朝日系列「題名のない音楽会」、テレビ東京系列「出没!アド街ック天国」など、日本のテレビ番組にも頻繁に出演しているほか、2017年よりラジオ冠番組「伊藤悠貴The Romantic」(OTTAVA)で司会を務めている[5]。
パオロ・アントニオ・テストーレが1755年頃にミラノで製作したチェロ "Maragarites"(古代ギリシャ語で「光の子」の意)を所有している[6]。
エピソード
- 5歳でバイオリンを始めるが、「自分が立って弾いているのに何故先生が座っているのか」と反抗し、6歳の時に座って弾けるチェロを始めた[7]。
- 7歳の時に安達祐実などを輩出した東京児童劇団のオーディションを受け、最高得点で合格したが、桐朋学園子供のための音楽教室に通うため、劇団には入らなかった[8]。
- 小学校6年間、麻布科学実験教室に休むことなく通い、2002年に「皆勤賞」を受賞[9]。
- 2005年イギリスで、英国上級数学チャレンジ「銅賞」を受賞した[10]。
- 2016年8月に放映されたNHKテレビ番組でのインタビュー中の「生まれ変わったらこの曲(ラフマニノフのチェロソナタ)になる」という言葉が話題を呼んだ(既述)[11]。
ディスコグラフィー
- 『セルゲイ・ラフマニノフ:チェロ作品全集』(2012年/Champs Hill Records CHRCD-044)
- 『伊藤悠貴/ザ・ロマンティック』(2017年/ソニー・ミュージックダイレクト MECO-1045)
- 『伊藤悠貴/雁部一浩:歌曲全集』(2020年/ディスクアート DACD-201)
- 『アダージョ』~孤独のアンサンブル~(多重録音)(2021年/キングレコード KICC-1587)
- 『カサノヴァ』〜ヨハン・デ・メイ:チェロ&ハープ&ウインドオーケストラのための作品全集〜(2024年/AMSTEL CLASSICS CD 2024-01)
書籍
- 『ラフマニノフ考』ーチェロ奏者から見たその音楽像ー(2023年/恵雅堂出版)
主な受賞歴
- 2000: 札幌ジュニアチェロコンクール第1部門優勝・特別賞。
- 2001: 泉の森ジュニアチェロコンクール小学生の部優勝。
- 2003: 泉の森ジュニアチェロコンクール中学生の部優勝。
- 2003: 日本演奏家協会コンクール弦楽器部門中学生の部優勝。
- 2006: 第6回アントニオ・ヤニグロ国際チェロ・コンクール(クロアチア)優勝・特別賞。
- 2008: 第77回日本音楽コンクール・チェロ部門第2位および岩谷賞(聴衆賞)。
- 2009: 第20回パリFLAME国際音楽コンクール・チェロ部門(フランス)優勝および特別賞。
- 2010: 第17回ブラームス国際コンクール・チェロ部門(オーストリア)優勝および特別賞。
- 2011: 第3回ウィンザー祝祭国際弦楽コンクール(イギリス)優勝および特別賞。
- 2012: ヤング・コンサート・アーティスツ国際オーディションヨーロッパ大会(ドイツ)優勝/アメリカ大会特別賞。
- 2019: 第17回齋藤秀雄メモリアル基金賞。
外部リンク
脚注
- ^ Larsen Strings "Welcome Yuki Ito"
- ^ Webマガジン「ONTOMO」 "生まれ変わったらラフマニノフの『チェロ・ソナタ』に"
- ^ Yahoo!ニュース 第17回〈齋藤秀雄メモリアル基金賞〉チェロ部門受賞者は伊藤悠貴
- ^ International Roster of Larsen Strings Artist
- ^ クラシック音楽専門ラジオOTTAVA "世界で活躍中のチェリスト伊藤悠貴が送る、週末の夜の「ロマンチックな定番プログラム」がスタートします!"
- ^ Yuki Ito plays the "Maragarites" cello by P.A.Testore with Larsen Magnacore Strings
- ^ ジャパン・アーツ "伊藤悠貴エピソード"
- ^ 伊藤悠貴インタビュー
- ^ 麻布科学実験教室
- ^ UK Senior Mathematical Challenge
- ^ Webマガジン「ONTOMO」 "チェリスト伊藤悠貴、生まれ変わるならラフマニノフのソナタに!その愛の源流"
- 伊藤悠貴のページへのリンク