中村一枝 (郷土史研究家)とは? わかりやすく解説

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中村一枝 (郷土史研究家)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/29 14:44 UTC 版)

なかむら かずえ
中村 一枝
生誕1931年
北海道釧路市
死没2019年12月7日(88歳没)
死因脳幹出血
国籍 日本
出身校日本大学
活動期間1972年 - 2019年
時代昭和 - 令和
団体釧路アイヌ文化懇話会
札幌女性史研究会
代表作『永久保秀二郎の研究』(1991年)
『永久保秀二郎の『アイヌ語雑録』をひもとく』(2014年)
影響を受けたもの永久保秀二郎
活動拠点北海道札幌市
宗教キリスト教

中村 一枝(なかむら かずえ、1931年昭和6年〉[1] - 2019年令和元年〉12月7日[2])は、日本の郷土史研究家[3][4]北海道釧路市の釧路アイヌ文化懇話会や札幌女性史研究会に所属し、札幌市を拠点に歴史を掘り起こす地道な活動を続ける一方、現代に警鐘を鳴らすべく、戦争体験の積極的な発信を続けた[2]日本大学文学部卒業[1]。釧路でアイヌ教育に取り組んだ永久保秀二郎の日記『永久保日誌』の研究でも知られる[5]

経歴

北海道釧路市で誕生した[1]。女学生だった1945年(昭和20年)、戦中当時に学校では防空壕を掘らされ、駆り出された援農先では作業の合間に歌を歌った者が目の前で体罰を受けるといった戦時体験が、その後の生涯に影響を及ぼした[6]

1972年(昭和47年)[2]、釧路市でアイヌ民族教育に尽力した永久保秀二郎の日誌や資料と出会い、札幌市へ移り住んだ後も研究を重ねた。永久保の日誌と資料を読み進める内に、永久保がアイヌに対する教育制度上の差別に憤り、その一方で美しいアイヌ語を書き留めていることを知り、『永久保秀二郎の研究』(釧路叢書第28巻)と『永久保秀二郎の『アイヌ語雑録』をひもとく』(寿郎社)の2冊を著した[6]。永久保の最期を「キリスト教徒としての心の平安そのものであった」と自著に書き、自らも洗礼を受けてキリスト教徒となった[2]

釧路アイヌ文化懇話会によるアイヌ文化研究の総合誌「久摺(くすり)」では、釧路で郵便物を輸送中に吹雪で殉職した吉良平治郎の遭難を、釧路地方気象台の観測原簿で当時の気象を確認するなど、詳細な資料を使って考証した[4][7]

2019年(令和元年)10月19日、母校である北海道釧路江南高等学校(中村の在校時は釧路女子高等学校)の創立百年記念式典に合わせて帰郷し、生徒たちの前で戦中の援農体験を話した[2]。これが釧路での最後の姿となった[2]。同2019年12月6日、札幌女性史研究会の会合出席後に、札幌市内で倒れ、同2019年12月7日、脳幹出血により88歳で死去した[2]

評価

著書の『アイヌ語雑録』をひもとく』はアイヌ語検証の集大成と呼べるもので、永久保の集録による約2000のアイヌ語を50音順に再配列し、意味、ローマ字表記による発音、注釈が付けられている[8]。アイヌ語の記録が、入手しやすい状態で提供可能になったことでも評価されている[9]

札幌女性史研究会の代表者は中村の没後、「海外まで聖公会関連の一次資料収集に行く中村さんの姿勢は情熱的でした。聖公会の女性宣教師によるアイヌ民族への教育など、手付かずの歴史を掘り起こしてくれました」と、その生前の姿を振り返った[2]

著作

  • 『永久保秀二郎の研究』釧路市〈釧路叢書〉、1991年3月。 NCID BN06556924 
  • 『永久保秀二郎の『アイヌ語雑録』をひもとく』寿郎社、2014年12月。ISBN 978-4-902269-73-4 

脚注

  1. ^ a b c 釧路地方の地名を考える会講演会” (PDF). 釧路市中央図書館. 2022年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 椎名宏智「釧路出身 中村一枝さん死去 永久保秀二郎を研究 88歳」『北海道新聞北海道新聞社、2019年12月28日、釧A朝刊、12面。
  3. ^ 桜井則彦「ピヤラ 春採アイヌ学校の永久保秀二郎 教育差別抗議 気骨の教師 退職後は文化保存尽力」『北海道新聞』、2013年8月20日、夕東夕刊、8面。
  4. ^ a b 「アイヌ文化研究誌「久摺」第7集完成、販売へ 釧路の文化懇」『北海道新聞』、1998年11月15日、釧B朝刊、27面。
  5. ^ 「行間にアイヌ民族への愛 永久保秀二郎の日誌刊行 釧路の読む会 明治、大正の33年間」『北海道新聞』、2012年2月24日、全道朝刊、28面。
  6. ^ a b 椎名宏智「哀惜 中村一枝さん アイヌ学校教師永久保秀二郎を紹介 札幌女性史研究会会員 12月7日死去 88歳 弱い立場への共感が出発点」『北海道新聞』、2020年3月27日、全道朝刊、6面。
  7. ^ 久田徳二「探る コッコッの足跡 吉良平治郎が生きた時 極貧と差別 吹雪つきなぜ出発 つかんだ定職失えぬ」『北海道新聞』、2006年6月28日、釧C朝刊、27面。
  8. ^ 「北の書棚『永久保秀二郎の「アイヌ語雑録」をひもとく』」『毎日新聞毎日新聞社、2015年1月24日、地方版 北海道、24面。
  9. ^ 中村和之「書評・紹介 中村一枝編注『永久保秀二郎の『アイヌ語雑録』をひもとく』」『北海道民族学』第11号、北海道民族学会、2015年3月31日、94頁、NAID 40020459416 



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