下生信仰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 07:49 UTC 版)
弥勒信仰には、上生信仰とともに、下生信仰も存在し、中国においては、こちらの信仰の方が流行した。下生信仰とは、弥勒菩薩の兜率天に上生を願う上生信仰に対し、弥勒如来の下生が(56億7千万年などの)遠い未来ではなく現に「今」なされるからそれに備えなければならないという信仰である。 浄土信仰に類した上生信仰に対して、下生信仰の方は、弥勒下生に合わせて現世を変革しなければならないという終末論、救世主待望論的な要素が強い。そのため、反体制の集団に利用される、あるいは、下生信仰の集団が反体制化する、という例が、各時代に数多く見られる。北魏の大乗の乱や、北宋・南宋・元・明・清の白蓮教が、その代表である。 日本でも戦国時代に、弥勒仏がこの世に出現するという信仰が流行し、ユートピアである「弥勒仏の世」の現世への出現が期待された。一種のメシアニズムであるが、弥勒を穀霊とし、弥勒の世を稲の豊熟した平和な世界であるとする農耕民族的観念が強い。この観念を軸とし、東方海上から弥勒船の到来するという信仰が、弥勒踊りなどの形で太平洋沿岸部に展開した。江戸期には富士信仰とも融合し、元禄年間に富士講の行者、食行身禄が活動している。また百姓一揆、特に世直し一揆の中に、弥勒思想の強い影響があることが指摘されている。
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