モーザーの円分割問題
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幾何学においてモーザーの円分割問題[1](モーザーのえんぶんかつもんだい、英: dividing a circle into areas, Moser's circle problem)は円に内接するn角形の辺と対角線(円の弦)によって分割される円の領域の個数の最大化問題である。レオ・モーザーに因み名づけられ、帰納法などで解決されている。領域の個数の最大値は 円の上にn点を用意し、新たな1点Aを取り円上を動かす。Aともとのn点を結ぶことによりnつの線分を描く。今、新たに描いた線分が、もとのn点をそれぞれ結ぶ線分の交点のどれかを通る場合(これをaとする)と、新たに書いた線分がもとのn点をそれぞれ結ぶ線分と先のどの交点とも異なる場所で交わる場合(これをbとする)が考えられる。
補題: 円上に新たな点Aを、場合bが起こるように定めることが可能である。
証明: 場合aでは、A、n点のうちの1点O、n点をそれぞれ結ぶ線分のうち2つの交点Iの3点が一直線上に存在する。Oの取り方はn通りあるのでIの取り方も有限個となる。直線OIはOと異なる点で再度円と交差するが、円上にはいくらでも多くの点が存在するから、Aをどの直線OI上にもない点として定めることができる。したがってこのような場合の点Aとすべてのもとのn点Oについて場合bが実現される。
この補題は、k本の線分がAOと交わるとき、k本の線分とAOの交点をすべて異なる場所で交わるように設置し、新たにk + 1個の領域を生むことができることを意味する。
補題によって問題の解決のための重要な性質が確立された。数学的帰納法を用いてn - 1点の場合の領域の個数の最大値f(n - 1) により、n点の場合の領域の個数の最大値f(n)を表現する。
図の実線の1, 2, 3, 4の点を通る線分は円を8つの領域に分割している(すなわちf(4) = 8)。図はn = 4の場合から、破線を加えたn = 5の場合を導くことを説明している。1, 2, 3, 4の点から5の点へ新たに4つの線分が結ばれている。この4線分の出現によって新しく生まれた領域の個数を数える。
一般に、図の1, 2, 3, 4のように数iを定める。新たな点とどの点とを結ぶか(iの値)に応じて、交差する既存の弦の本数が変わる。また、新たに加えられた弦同士は新たに取った1点以外の点で交わることはない。
新しい点と点iを結ぶ新たな弦が交わる既存の弦の個数は、新たな弦の「左側」にある点の個数と「右側」にある点の個数によって定められる。任意の既存の点はそれら同士が線分で結ばれているから、「左側」にある既存の点の個数と「右側」にある既存の点の個数の積は、円の内部で新しい弦と交わる既存の弦の個数と等しい。点iについて、n - i - 1個の点が「左側」に存在しi - 1個の点が「右側」に存在するとしたとき、円の内部で新たな弦と交わる既存の弦は(n - i - 1)(i - 1)本ある。
たとえば図(n = 5)においてi = 1の場合とi = 4の場合、つまり1と5、4と5を結ぶ線分は円の内部にて他のどの線分とも交わっていない。一方i = 2, i = 3の場合は、円の内部にて、もとの線分のうち2つと交わっている。
新たな弦に交わる既存の弦らが成している領域の個数は、弦の個数に1を加えた値と等しい。新たに加えた弦によってそれぞれの領域は2つに分割されるので、次の式が成立する。
先の補題は、"内部の"交点がどれも単純(どの3つの弦も円の内部で共点でない)ならば、領域の個数が最大値をとることを示している。これは点を一般の位置に置いた場合であるといえる。一般の位置にあるという仮定の下、領域の個数は(ここでは2次元球面に埋め込まれたグラフとしてみなすことができる)連結平面グラフのオイラー標数の公式を用いて数えることができる。
連結平面グラフがF個の面、E個の辺、V個の頂点で平面を分割したとする。このとき、2次元球面において、オイラーの関係式より、
ベルヌーイの三角形の5列目(k = 4)は3 < nにおいて、n + 1の場合のモーザーの円分割問題の解である。
円内において粒子の力を与えない運動を考えたとき、円周にて粒子が特定の角度で跳ねかえるとすると、粒子の軌跡に関連する円分割の数列が等差級数で与えられる[7]。
4より大きい偶数個の場合で点が均一に並べられているとき、領域の個数は減少する。オンライン整数列大辞典の数列 A006533。
正整数nの階乗の正の約数の個数はn = 1, 2,...,6のときこの数列と一致するが、n = 6から先は異っている[8]。
問題の解
帰納法
円内で反射する粒子の軌跡
均等な点の配置
n
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
...
rG
1
2
4
8
16
31
57
99
163
256
386
562
794
1093
1471
1941
2517
3214
4048
5036
6196
7547
9109
10903
12951
...
rG′
1
2
4
8
16
30
57
88
163
230
386
456
794
966
1471
1712
2517
2484
4048
4520
6196
6842
9109
9048
12951
...
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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