ミズヒキミノカサゴ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/21 13:28 UTC 版)
ミズヒキミノカサゴ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Pteropterus paucispinula (Matsunuma and Motomura, 2014) |
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シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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ミズヒキミノカサゴ (水引蓑笠子、学名:Pteropterus paucispinula) は、フサカサゴ科に分類される魚類の一種。西部太平洋に分布する[2]。胸鰭軟条に赤色と白色の縞が入ることが特徴である。
分類と名称
2011年に Pterois mombasae として日本から初めて報告され、和名が提唱された[3]。ネッタイミノカサゴと類似しており、同論文でも「過去にネッタイミノカサゴと同定されていた個体が実際には本種であった例」がいくつか紹介されている。その後 P.mombasae と日本沿岸の個体群は別種とされ、2014年に新種記載された[4]。松沼瑞樹と本村浩之によって、高知県の柏島から得られた標本を基に記載された[5]。その後もミノカサゴ属に分類されていたが、2023年に発表された遺伝子解析研究の結果、ネッタイミノカサゴやキミオコゼとともに Pteropterus 属に分類されることが明らかになった[6]。2025年にはこの属にキミオコゼ属という和名が提唱された[7]。
種小名は「少数の小棘」を意味し、P. mombasae と比較して頭部と鱗の棘が少ないことに由来する[8]。和名の「ミズヒキ」は、本種の胸鰭条に赤色と白色の縞模様があることを、祝儀袋の飾り付けなどに用いる紅白の水引になぞらえたものである[3]。
分布と生息地
西はインドネシアから東はウォリス・フツナ、北は南日本、南はオーストラリア北部まで、西太平洋に分布する[1]。日本では房総半島以南の南日本の太平洋側および琉球列島で見られる[3]。オーストラリアでは西オーストラリア州北西部から、ノーザンテリトリーのメルヴィル島沖のティモール海まで分布する[9]。生息水深は1-440mで[2]、主に砂泥底などの軟らかい底質を好み、海綿などの無脊椎動物が多い場所に棲む[9]。
形態
背鰭は13棘と10(まれに11)軟条から、臀鰭は3棘と6軟条から成る。胸鰭条数は17-19本で、一般的には18本である[2]。体色は桃色がかったクリーム色から白色である。目の周囲には幅広い赤黒または黒色の帯が入り、白く縁取られる。鰓蓋下部には大きな黒斑がある。項には3本の帯が入り、体側面には赤褐色から薄褐色の幅広い帯が多数入り、その間に細い帯が入る。体側面の帯は背鰭と臀鰭まで達する。胸鰭基部には比較的大きな黒斑が入り、その中には小さな白斑がある。背鰭棘条部には2-6本の赤褐色から黒色の縞模様が入り、背鰭軟条部、臀鰭、尾鰭の鰭膜には多数の小さな黒斑が散らばる。胸鰭には14-28個の赤黒色から黒色の大きな斑点が散らばる[9]。体長は15cmほど[2]。
ネッタイミノカサゴと似るが、ネッタイミノカサゴの胸鰭軟条は一様に赤色または白色であるのに対し、本種の胸鰭軟条は赤や褐色の縞が入る[3]。P. mombasae と比較すると体高が低く、頭部が狭く、側線下方横列鱗数がわずかに多い。胸鰭鰭条数は、P. mombasae の西部個体群では通常19本だが、本種は通常18本である。また、背鰭棘が比較的長い。スリランカの P. mombasae の個体群は、胸鰭軟条が通常18本で、背鰭棘が長い。ミズヒキミノカサゴに居ているが、種内変異と考えられる。P. mombasae の大きな特徴は、胸鰭基部、側線下方、尾柄の側面に櫛鱗を持つことである。本種の場合は円鱗または数枚の櫛鱗が存在する程度である[4]。
生態
単独または小さな集団で行動する[1]。他のミノカサゴ類と同様、背鰭の棘に毒を持つ[10]。夜行性で、昼間は岩陰などに隠れている。主にエビやカニなどの甲殻類や貝類、多毛類などを捕食する。
出典
- ^ a b c Motomura, H.; Matsuura, K. (2016). “Pterois paucispinula”. IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T79800135A79800138. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T79800135A79800138.en 2025年8月21日閲覧。.
- ^ a b c d Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2022). "Pterois paucispinula" in FishBase. February 2022 version.
- ^ a b c d 松沼瑞樹; 本村浩之 (2011). “ミノカサゴ亜科魚類ミズヒキミノカサゴ(新称)Pterois mombasae の日本からの初記録および近縁種ネッタイミノカサゴ P. antennata との形態比較”. 魚類学雑誌 (日本魚類学会) 58 (1): 27-40. doi:10.11369/jji.58.27 .
- ^ a b Matsunuma, M.; H. Motomura (2014). “Pterois paucispinula, a new species of lionfish (Scorpaenidae: Pteroinae) from the western Pacific Ocean”. Ichthyological Research 62 (3): 327–346. doi:10.1007/s10228-014-0451-6.
- ^ “CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Pteropterus”. researcharchive.calacademy.org. 2025年8月21日閲覧。
- ^ Chou, Tak-Kei; Liu, Min-Yun; Liao, Te-Yu (2023-05-15). “Systematics of lionfishes (Scorpaenidae: Pteroini) using molecular and morphological data”. Frontiers in Marine Science 10. doi:10.3389/fmars.2023.1109655. ISSN 2296-7745 .
- ^ 松沼瑞樹、本村浩之「フサカサゴ科ミノカサゴ亜科に帰属する属の標準和名」『ICHTHY,Natural History of Fishes of Japan』第54巻、2025年、69-71頁。
- ^ “Order Perciformes (Part 9): Suborder Scorpaenoidei: Family Scorpaenidae”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (2025年6月6日). 2025年8月21日閲覧。
- ^ a b c Bray, D.J. (2017年). “Pterois paucispinula”. Fishes of Australia. Museums Victoria. 2025年8月21日閲覧。
- ^ “ミズヒキミノカサゴ | 公益財団法人 黒潮生物研究所”. kuroshio.or.jp. 2025年8月21日閲覧。
関連項目
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