ヒュドラーの毒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 06:30 UTC 版)
戦いの後、ヘーラクレースはアテーナーの助言に従い、ヒュドラーの体を切り裂いて猛毒を含んだ胆汁を取り出し、自分の矢に塗ってその後の戦いに用いた。ヘーラクレースの膂力とヒュドラーの毒の力でヘーラクレースの矢は一撃必殺の武器となった。 その威力を最初に知らしめたのは第4の難行、エリュマントスの猪の生け捕りである。ヘーラクレースはエリュマントス山(英語版)に向かう途中、ケンタウロス族との間にトラブルを起こし戦いとなった。ヘーラクレースはヒュドラーの毒を塗った矢を放ち、ケンタウロス族を倒しながらペロポネーソス半島の東南端のマレアー岬に追い詰めた。さらにケンタウロス族の賢者ケイローンのもとに逃げ込んだケンタウロス族を討とうとした。ところがヘーラクレースの放った矢はエラトスの腕を貫通してケイローンに当たってしまった。ケイローンは酷く苦しんだが、ケイローンの薬も効果はなく、不死ゆえに死ぬことも出来なかった。またヘーラクレースをもてなしたポロスは彼の矢の威力に驚いて矢を手に取ったが、手を滑らせた拍子に鏃が脚を傷つけ、ヒュドラーの毒で死んでしまった。 後にケイローンは毒の苦痛に耐えきれず、プロメーテウスが解放された際に不死を返上することで苦痛から解放された。 さらに後、ヘーラクレースは妻デーイアネイラを攫おうとしたネッソスをヒュドラーの毒を塗った矢で射殺した。ネッソスは死に際にデーイアネイラに、「自分の血は媚薬の効果がある。夫が心変わりしそうになったら彼の衣服に塗るといい」と吹き込んだ。デーイアネイラは後にそれを実行したが、ネッソスの血には矢を通してヒュドラーの毒が混じっていたためヘーラクレースの体を蝕み、ヘーラクレースは癒されぬ苦痛に耐えかね、我が身を焼き尽くすことを選んだ。こうしてヘーラクレース自身もヒュドラーの毒によって人間としての生に終止符を打つことになった。
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