ヒメジャコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/27 06:12 UTC 版)
ヒメジャコ | |||||||||||||||||||||||||||
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ヒメジャコ(ティモール島)
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
T. crocea Lamarck, 1819[3] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ヒメシャコ(姫車渠)[4] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
boring clam[5], crocus clam[6] |
ヒメジャコ(姫硨磲、学名Tridacna crocea)はシャコガイ科に属する二枚貝の1種で[注釈 1]、シャコガイ類の中では小型の種。「ヒメシャコガイ」と呼ばれることもある[7]。
分布
主な分布域は奄美群島以南、オーストラリア北東岸にかけての熱帯西太平洋[5][8]。
形態
- 貝殻
- 殻長約15cm以下。前後にやや長く、左右の殻は膨らむ。表面に7条程度のゆるやかな放射肋が広がり、それらの上を波形の成長脈が密に描かれる。左右の殻が閉じられるときは、貝殻の縁が組み合わされる。表面は淡い紅色を帯びることが多い。内面は白色。殻頂の前側には、足糸孔が広く開く。靭帯は殻頂の後ろ側にある[9]。
- 軟体部
- オオシャコガイ属特有の構造をもつ。ザルガイ科のような頑丈な足は持たず、かわりに足糸をもって、サンゴに付着する。したがって前部閉殻筋は退化している。外套膜は青色で、管のような水管はもたず、かわりに吸水孔が前方に開き、排水孔は中央やや後方寄りに突き出る。後部閉殻筋は殻のほぼ中央部近くにある。鰓は蝶番近くから前方にかけて伸びる。外套膜に褐虫藻をすまわせて、その部分を広く日光側へさらせるように、出水孔と殻頂の間が広く離れている点が、ザルガイ科の他の貝と異なる[10][11]。
生態
外套膜表皮の下部にゾーザンテラを共生させる。藻類が光合成で産生した栄養分をもらって暮らす。琉球石灰岩、キクメイシやハマサンゴに埋没して生活し、昼は貝殻を開いて腹を上に向け、日光浴をする。 こどものころはすべてオス。大きくなると雌雄同体になる。春に水温上昇とともに生殖巣が成長し、夏季に産卵すると考えられるが、台風による影響を受けることもある。受精した卵は20時間程度でD型幼生となる。一週間ほど浮遊生活したのち、変態して初期殻頂期となり、底生生活をするようになる。その後一週間以内に共生藻を取り込む。稚貝は適当なサンゴのくぼみに入り、生後数か月、殻長4mm以上に達すると、自力で穿孔を始めると考えられる。約3年後に殻長約5cmに成長し、このころ雌雄同体となって産卵に参加する。放精にはより若い段階から参加する[12]。
人との関係
江戸時代後期の武蔵石壽著「目八譜」には「姫車渠」として紹介されている[4]。ヒメジャコは美味しく、沖縄で漁獲され、養殖も行われている[13][14]。
脚注
注釈
出典
- ^ 松隈 2004, p. 312.
- ^ 佐々木 2010, p. 42.
- ^ a b “Tridacna crocea ”. WoRMS. 2025年3月23日閲覧。
- ^ a b 石壽 & 雪斎 1843, p. 74.
- ^ a b 波部 & 小菅 1966, p. 157.
- ^ アボット et al. 1985, p. 337.
- ^ 佐々木 2010, p. 42,140.
- ^ Higo, Callomon & Goto 1999, p. 844.
- ^ 奥谷 & 松隈 2004, p. 312-313.
- ^ “Clam anatomy ”. Nano-Reef.com. 2025年3月23日閲覧。
- ^ Javier H. Signorelli; Mauricio Leme da Fonseca; Fabrizio Scarabino; Flávio Dias Passos (2019). “The genus Dallocardia (Mollusca: Bivalvia: Cardiidae) in the Southwestern Atlantic Ocean”. Marine Biodiversity (Senckenberg Gesellschaft für Naturforschung) 49: 2753-2773. doi:10.1007/s12526-019-01004-3.
- ^ 村越 1997, p. 330-332.
- ^ 村越 1997, p. 329,344.
- ^ “ヒメシャコガイ ”. 市場魚貝類図鑑. 2025年3月23日閲覧。
参考文献
- 武蔵石壽・服部雪斎「四十四 姫車渠」『目八譜』 四、1843年。NDLJP:1287299/74。
- 波部忠重・小菅貞男『原色世界貝類図鑑(Ⅱ)熱帯太平洋編』保育社、1966年。 NCID BN02353787 。
- R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。 ISBN 4582518117。 NCID BN00814197。NDLJP:12602136。
- 奥谷喬司・村越正慶『貝のミラクル』東海大学出版会、1997年。 ISBN 4-486-01413-8。全国書誌番号: 98059996 。
- Shunichi Higo; Paul Callomon; Yoshihiro Goto (1999). Catalogue and Bibliography of the Marine Shell-bearing Mollusca of Japan. Elle scientific. ISBN 4-901172-02-6
- 奥谷喬司、松隈明彦『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。 ISBN 978-4-418-04904-2。全国書誌番号: 20617488 。
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。 ISBN 978-4-13-060190-0。全国書誌番号: 21846371 。
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