デジタル認証アプリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 04:59 UTC 版)
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開発元 | デジタル庁 |
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初版 | 2024年6月24日 |
最新版 |
1.8.0 / 2025年4月1日
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対応OS | iOS, Android |
対応言語 | 日本語, 英語 |
公式サイト | services |
デジタル認証アプリ(デジタルにんしょうアプリ)とは、デジタル庁が提供する、官民の各種サービスにおける「本人確認」部分を請け負うスマートフォン向けアプリケーションソフトウェア。本人確認が必要なサービスに関して、マイナンバーカードによる認証やJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)への有効性確認部分を本認証アプリへ委ねることによって、サービス事業者はコア業務の提供に専念でき、開発負荷の軽減を図るもの[1]。
また、2023年時点では民間サービス分野ではほとんど利用されていなかった、利用者証明用電子証明書を用いた本人確認を普及・浸透させる目的を持つ[注 1][2]。
特徴
デジタル認証アプリは、他のアプリ・サービスから呼び出される形で利用する[3]。デジタル認証アプリ単体での利用は想定されていない。本認証アプリは、原則として利用者証明用電子証明書を用いた本人確認を実施するもの。既に民間で多数開発し実用化されている署名用電子証明書を用いた公的個人認証サービスには、民間サービス分野では対応しない(公共サービス分野での公的個人認証は可能)[注 2]。
認証情報の要求/応答には業界標準技術であるOpenID ConnectとOAuth 2.0を用いる[4][5]。
本認証アプリは、将来的にマイナポータルアプリとの統合を予定している[6]。
経緯
デジタル認証アプリは、2023年3月22日に「認証スーパーアプリ」としてその構想が報じられ[7]、同年3月30日、浅沼尚デジタル監のデジタル庁四半期活動報告会見で正式に発表された[8][9]。その後、同年6月9日閣議決定[10]の2023年版「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に、アプリの開発が明記された[注 3]。アプリは2024年4月にサービス開始の予定であったが[7]、後掲のプライバシーリスク懸念により導入が一時延期された[11][12]。
プライバシーリスクの懸念と解消策
本認証アプリの展開は個人の各種サービスの利用(認証)情報がデジタル庁のシステムへ集約されることでもあり、プライバシーリスクを懸念する意見もある[13][14]。デジタル庁は、システムに持つのは「電子証明書発行番号、事業者別リンクコード、認証状況」であり「氏名、住所、生年月日、性別」といった個人情報は持たないため問題はないとの見解を示している。また、2024年6月のアプリリリース時には、認証した結果情報は1時間以内に削除する旨も示された[注 4][15]。本認証アプリは本人確認機能に限定しており、呼び出し元のサービスIDとのひも付けは行なわない[16]。
政令改正とアプリリリース
デジタル庁は本認証アプリの導入のため、2024年1月26日から2月29日の期間に政令改正のパブリックコメントを募集した[17][18]。政令改正は3月に施行予定であったが、上掲のプライバシーリスク懸念から施行を見合わせた[12][19]。6月12日、政令改正が公布・施行され[20][注 5]、6月24日にデジタル認証アプリがリリースされた[21][22]。
リリースから3ヶ月後、2024年9月24日時点で、デジタル認証アプリに関し200以上のサービス事業者から問い合せがあり、50超のサービスが利用申込を行なった[注 6]。
デジタル認証アプリの利用
公共サービス
横浜市「パマトコ」[23]、東かがわ市公式アプリ[24]、愛知県一宮市「イチ・デジ」[25]などで利用可能。
民間サービス
三菱UFJ銀行「スマート口座開設」[26][27]、チケミー[28]、近畿大学[29]、playground「MOALA」[30]などで利用可能。
汎用プラットフォーム
サイバートラスト[31]、TIS[32][33]、施設予約システム「PORTAL X」[34]、トヨクモ[35]等が、デジタル認証アプリの利用を前提とした汎用プラットフォームを提供している。
脚注
注釈
- ^ “デジタル認証アプリについて” (pdf). public-comment.e-gov.go.jp. デジタル庁 (2023年12月14日). 2023年12月14日閲覧。
解決すべき課題
・利用者証明用電子証明書利用のうち、97%を行政機関が占め、民間での利活用が進んでいない。
・コスト面の負担が原因。たとえJ-LISの手数料を無償化しても、プラットフォーム事業者のサービス提供コストがかかるため、国が主導してナショナルサービスとして完全無償化しなければ状況は変わらない。
対応策
・マイナンバーカードの電子証明書読み取り機能を共通アプリ化し、組み込みやすいAPIを提供することで、マイナンバーカードによる利用者証明の利活用を促進する。
・国が直接利用者証明サービスを提供することで、利用者証明に必要となる費用(J-LIS費用、及びプラットフォーム事業者のサービス提供コスト)を事実上無償化し、マイナンバーカードによる認証をナショナルインフラとして広く様々な市場に根付かせることが必要。 - ^ “デジタル認証アプリについて” (pdf). public-comment.e-gov.go.jp. デジタル庁 (2023年12月14日). 2023年12月14日閲覧。
デジタル認証アプリのサービス提供領域
デジタル認証アプリは、既にPF事業者によるサービスの導入が広がっている民間事業者向けの署名検証・有効性確認サービスは、提供しません。 - ^ “デジタル社会の実現に向けた重点計画 本文”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2023年6月9日). 2025年4月5日閲覧。
第3-2 各分野における基本的な施策
1.国民に対する行政サービスのデジタル化
(3)マイナンバーカードの普及及び利用の推進
4 マイナンバーカードの「市民カード化」の推進
マイナンバーカードの認証体験の共通化、類似機能の重複開発の排除、円滑な機能拡張及び実装の実現を目的として、2024 年度(令和6年度)中の運用開始に向けて個人認証用アプリケーションの開発を進めるとともに、行政機関、民間事業者等への当該アプリの普及活動を進めることにより、マイナンバーカードの利活用シーンの更なる拡大を目指す。 - ^ “デジタル認証アプリ よくある質問”. services.digital.go.jp. デジタル庁 ウェブサービス・アプリケーション. 2025年4月4日閲覧。
Q アプリを通じて、氏名や住所等をはじめ、個人情報が国に収集されませんか
A 「デジタル認証アプリ」のサービス提供に必要な個人に関する情報として、デジタル庁は、「電子証明書のシリアル番号」を保有しますが、氏名や住所等をはじめ、その他の個人に関する情報は保存しません。(デジタル庁は、行政機関等及び民間事業者から依頼を受けて署名API又は4情報連携機能を提供する場合は、氏名等の4情報を一時的に保持しますが、1時間以内に必要な処理を行った後、デジタル認証アプリサーバから削除します。)
デジタル庁は、認証等の結果を含め、サービスに関する情報を、厳格なアクセス制限、暗号化などのセキュリティ対策を講じ、関係法令及びプライバシーポリシーに基づき、しっかりとお守りします。 - ^ “デジタル庁・総務省令第十二号 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律施行規則の一部を改正する命令”. www.kanpo.go.jp. インターネット版 官報 令和6年6月12日(本紙 第1241号) (2024年6月12日). 2024年6月19日閲覧。
デジタル庁・総務省令第十二号 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律施行規則の一部を改正する命令
この命令は、公布の日から施行する。 - ^ “河野大臣記者会見(令和6年9月24日)”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2024年9月24日). 2024年10月24日閲覧。
リリースから3か月が経過して、200サービス以上の方々から問合せをいただき、利用申込に至ったサービスが50を超えております。広く利用の検討をいただいていることに、改めて感謝申し上げたいと思います。
出典
- ^ “デジタル認証アプリについて” (pdf). public-comment.e-gov.go.jp. デジタル庁 (2023年12月14日). 2023年12月14日閲覧。
- ^ “マイナンバーカードでオンライン本人認証、企業も利用可能に”. www.nikkei.com. 日本経済新聞 (2023年10月31日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “「デジタル認証アプリ」公開 マイナカードで安全ログインを実現”. Impress Watch. 株式会社インプレス (2024年6月24日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “デジタル認証アプリについて” (PDF). www.digital.go.jp. デジタル庁 (2024年6月21日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “デジタル庁 認証スーパーアプリ”. datasign.jp. 株式会社DataSign (2023年3月23日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “今後の普及に向けて、マイナポータルアプリ等の既存アプリへの統合、各種機能の追加拡張、スマートフォンへの本アプリのプリインストール化等、ご検討されていることがありましたら、ご教示ください。”. support.aas.digital.go.jp. デジタル認証アプリ 民間事業者向けよくある質問 (2024年6月14日). 2025年4月4日閲覧。
- ^ a b “デジタル庁が「認証スーパーアプリ」を24年度提供へ、官民サービス横断で狙う地位”. xtech.nikkei.com. 日経クロステック(xTECH) (2023年3月22日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “デジタル監による四半期活動報告”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2023年3月30日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “マイナンバーカードを使う「新認証アプリ」 デジタル庁開発へ”. Impress Watch. 株式会社インプレス (2023年3月30日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2023年6月9日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ 若江雅子編集委員「国の個人認証アプリ 迷走…デジタル庁 構想・開発」『読売新聞』2024年3月30日、朝刊 解説面。
- ^ a b “デジタル庁の「デジタル認証アプリ」迷走…オンライン利用履歴、政府に集中するリスク”. www.yomiuri.co.jp. 読売新聞オンライン (2024年4月24日). 2024年5月9日閲覧。
- ^ “マイナカード利用「認証アプリ」、個人の利用状況を国が一元管理のプライバシーリスク”. xtech.nikkei.com. 日経クロステック(xTECH) (2024年2月26日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “デジタル庁のマイナンバーカードの「デジタル認証アプリ」で個人の官民の各種サービスの利用履歴が一元管理されるリスクを考えた”. www.naka2656-b.site. なか2656のblog (2024年2月26日). 2024年3月1日閲覧。
- ^ “デジタル庁「認証アプリ」が目指す「オンライン本人確認の基盤」”. Impress Watch. 株式会社インプレス (2024年6月21日). 2024年6月25日閲覧。
- ^ “マイナンバーカードを使った本人確認を手軽に デジタル庁が「デジタル認証アプリ」を公開 無料で利用可能”. www.itmedia.co.jp/mobile. ITmedia Mobile (2024年6月21日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “公的個人認証法施行規則の一部を改正する命令案に係る意見募集を行います”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2024年1月26日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律施行規則の一部を改正する命令案に対する意見募集について”. public-comment.e-gov.go.jp. e-Govパブリック・コメント (2024年1月26日). 2024年4月5日閲覧。
- ^ “デジタル庁のデジタル認証アプリに関する読売新聞記事を読んでみた”. www.naka2656-b.site. なか2656のblog (2024年3月30日). 2024年4月5日閲覧。
- ^ “公的個人認証法施行規則の一部を改正する命令案に係る意見募集の結果が公表されました”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2024年6月17日). 2024年6月19日閲覧。
- ^ “デジタル認証アプリをリリースします”. www.digital.go.jp. デジタル庁 (2024年6月21日). 2024年6月25日閲覧。
- ^ “デジタル庁、マイナカードの「認証アプリ」公開 オンラインの本人確認にICチップ活用 何が変わる?”. www.itmedia.co.jp/news. ITmedia NEWS (2024年6月21日). 2024年6月25日閲覧。
- ^ “横浜市子育て応援アプリ パマトコ WEB版を7月1日にリリースします!”. www.city.yokohama.lg.jp. 横浜市 (2024年6月13日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “東かがわ市公式アプリ〜手のひらに市役所を。〜”. www.higashikagawa.jp. 東かがわ市ホームページ (2025年2月1日). 2025年4月5日閲覧。
- ^ “愛知・一宮市が公式ポータルサイト「イチ・デジ」をリリース 「将来的には、スーパーの特売情報なども…」 市のデジタルサービスの入口に”. news.ntv.co.jp/n/ctv. 中京テレビNEWS NNN (2025年2月4日). 2025年2月28日閲覧。
- ^ “デジタル認証アプリを活用した公的個人認証サービスの導入検討について” (pdf). www.bk.mufg.jp. 株式会社三菱UFJ銀行 (2024年6月21日). 2024年6月26日閲覧。
- ^ “デジタル庁の個人認証、三菱UFJが口座開設で導入検討”. www.nikkei.com. 日本経済新聞 (2024年6月21日). 2024年6月27日閲覧。
- ^ 『マイナンバー認証を日本初NFTチケットプラットフォームを提供する「TicketMe」が導入へ。不正転売防止強化の観点から』(プレスリリース)チケミー、2024年7月9日 。2024年7月9日閲覧。
- ^ “【NTT西日本】マイナンバーカードを活用して大学DXを推進!証明書発行業務を効率化、在学生・卒業生の利便性を向上|ニュースリリース - 通信・ICTサービス・ソリューション”. www.ntt-west.co.jp. NTT西日本 (2025年3月5日). 2025年3月24日閲覧。
- ^ 『ライブイベントにおけるチケット不正転売防止・業務効率化等に、マイナンバーカードを活用する実証実験へ技術提供事業者として協力します』(プレスリリース)playground株式会社、2025年1月17日 。2025年4月5日閲覧。
- ^ 『サイバートラスト、デジタル庁のデジタル認証アプリを利用した本人確認を容易に実現するSDKを提供開始』(プレスリリース)サイバートラスト株式会社、2024年12月11日 。2025年4月5日閲覧。
- ^ 『TIS、「マイナンバーカード本人確認サービス」でデジタル庁が提供する「デジタル認証アプリ」を活用』(プレスリリース)TIS株式会社、2025年1月9日 。2025年2月5日閲覧。
- ^ “TIS、「マイナンバーカード本人確認サービス」をデジタル庁の「デジタル認証アプリ」と連携”. クラウド Watch. 株式会社インプレス (2025年1月10日). 2025年2月5日閲覧。
- ^ “在住証明をオンラインで手続きできる機能を『デジタル認証アプリ』を利用して提供開始”. 株式会社スカラコミュニケーションズ (2025年1月27日). 2025年2月5日閲覧。
- ^ “PrintCreator電子契約機能で「マイナンバーカードで本人確認」を利用可能に”. www.toyokumo.co.jp. トヨクモ株式会社 (2025年2月12日). 2025年2月28日閲覧。
関連項目
外部リンク
- デジタル認証アプリ - デジタル庁 ウェブサービス・アプリケーション
- デジタル認証アプリのページへのリンク