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グロテスク (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/14 15:14 UTC 版)

グロテスク
作者 桐野夏生
日本
言語 日本語
ジャンル サスペンス
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 週刊文春2001年2月1日号ー2002年9月12日号
出版元 文藝春秋
刊本情報
出版元 文藝春秋
出版年月日 2003年6月30日
装幀 大久保明子
装画 水口理恵子
作品ページ数 536
id ISBN 978-4163219509
受賞
第31回泉鏡花文学賞2003年
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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グロテスク』は桐野夏生による日本の小説。

1997年(平成9年)に起きた東電OL殺人事件をモチーフとして、現代の階級社会を身一つで闘う女性たちの生き様をセンセーショナルに描いた作品。

キャッチコピーは『光り輝く夜のあたしを見てくれ』。『誰よりも美しく醜い私の妹』。

あらすじ

幼少期から恐ろしいほどの美貌を誇っていたユリコと、一流企業の総合職というエリートOLの肩書を持つ佐藤和恵。なぜ彼女たちは娼婦となり、無残に殺されなければなかったのか。ユリコの姉であり、和恵の同級生の"わたし"は彼女たちとの過去を思い起こしながら、事件について考えを巡らせる。

物語の語り手である"わたし"は幼い頃から容姿端麗な妹ユリコと比較され、自尊心を傷つけられていた。平凡な容姿の自分とは違い、一目で愛され、畏怖されるほどの美貌を持つ妹を<怪物>と評し、激しく憎みながら生きてきた。

高校受験を控えていた時期に父親が事業に失敗し、父親の故郷のスイスへ移り住むこととなるが、どうしても家族から離れたかった"わたし"は名門女子校への進学を理由に両親を必死に説得し、母方の祖父の家で暮らしはじめる。

ようやくユリコと離れることができた解放感と憧れの女子校生活に胸を高鳴らせていた"わたし"だったが、入学早々、生徒間での厳しい差別を目の当たりにする。初等部からエスカレーター式のQ学園は内部生と外部生の間ではっきりとした格付けがあり、外部から受験した生徒たちは皆、選民意識の強い内部生たちの冷ややかな目に晒され、常に顔色を窺いながら学園生活を送っていた。

学園に溶け込もうとせずひっそりと生活していた"わたし"は、とある出来事から成績トップの優等生ミツルに好感を持ち、親しくなる。そして自身と同じく高等部からの外部生であり周囲から孤立していた和恵に対しては嫌悪感を抱き、徹底的に陥れようと画策する。

ユリコと離れて四カ月、祖父と二人きりの自由な暮らしに安心感を抱いていた"わたし"だったが、母親が自殺したことを知らされ、さらにユリコが自分と同じQ学園の中等部に通うために帰国すると聞き、深く絶望する。瞬く間に学園中の注目を浴びるユリコと比べられる日々に鬱屈していた"わたし"は和恵の話にヒントを得て、ユリコが同級生の男子と組んで売春をしていると教師に密告し、学園から追い出すことに成功する。

大学卒業後、翻訳家の道を志すも諦め、職を転々としながら中年になった"わたし"は、美しかった妹と地味で冴えなかった和恵が娼婦となり、そっくりな方法で殺されたことを知り衝撃を受ける。容姿も性格も育った環境もまるで違う二人が、なぜ娼婦として悲惨な末路を辿ることとなったのか。ユリコと和恵、そして二人を殺害した犯人として逮捕された不法滞在者の中国人チャンの手記を交えながら、それぞれの人生を回顧していく。

登場人物

主要人物

わたし
物語の語り手。区役所でアルバイトをしている39歳の独身女性。常に周りから美しい妹と比較され、明確に優劣をつけられて育ったため自己肯定感が低く、消極的で卑屈な性格。
平田百合子(ひらた ゆりこ)〈ユリコ〉
誰もが目を奪われる圧倒的な美貌を持つ、"わたし"の1歳違いの妹。学力は低いが要領は良く、持って生まれた優れた容姿と愛嬌を駆使して家族に頼ることなく生きてきた。絶えず男性から求められ、自身も男性を欲するニンフォマニアのため、高校時代から売春をして大金を稼いでいたが"わたし"の密告により退学処分となる。その後も美しい容姿を生かしてモデルやクラブのホステスなどの華やかな仕事をしながら裕福に暮らしていたが、30代後半に差し掛かり年相応に老け始め、若い頃のように稼げなくなったことで娼婦に身を落とす。
佐藤和恵(さとう かずえ)
"わたし"のQ女子高での同級生で、同じく高等部からの外部生。比較的裕福な家庭で育ち、気位が高い。一流企業であるG建設株式会社に勤める父親を尊敬している。人一倍競争心が強く、学園内で認められようと奮闘する姿が酷く空回りしていたため、変人と認識され孤立していた。自身より家柄も成績も良くない"わたし"を見下しながらも家に招いたり恋愛相談をしたりと交流を持っていた。Q大学経済学部に進学し、卒業後は父親と同じ会社に女性初の総合職として入社するが、先輩から「佐藤さんはコネ入社だから」と言われたことで無力感に覆われる。社内で目立つため努力を重ね、順調に出世して将来を嘱望されるも男社会の中では自身の望むような評価を得られず、不満が蓄積されていった。高校時代に父親が他界してからは自身が大黒柱となり懸命に働いてきたが母親との折り合いは悪く、親しい友人や恋人もいないため激しい孤独感に襲われて心身のバランスを崩し、食事を十分に摂らなくなり拒食症で入院する。30歳頃からは水商売を始め、退勤後に終電まで働いて昼間の仕事を疎かにするなどの奇行が目立ち、周囲から奇異の目で見られるようになる。
ミツル
"わたし"のQ女子高での同級生で、中等部からの内部生。"わたし"が生まれて初めて興味を抱き、魅力を感じた人物。前歯が特徴的で小動物のような愛らしい顔立ち。学年で一番の成績優秀者で運動神経も良いが、決して驕らず控えめで優しい性格のため外部生だけでなく内部生からも一目置かれていた。キャバレーを経営している母親の存在を疎ましく思っている。
張万力(チャン ワンリー)〈チャン〉
ユリコと和恵を殺害した犯人として逮捕された中国人男性。貧しい村の出身で、日常的に虐げられてきた人生を変えるため日本に不法入国した。歌舞伎町の飲食店や風俗店で働き、中国籍の男性たちと共同生活をしていた。

"わたし"の家族たち

ポーランド系スイス人。高圧的な態度で家族を束縛していたため、娘たちからは好かれていなかった。貿易商をしていたが事業に失敗し、妻とユリコを連れて故郷のスイスに戻る。
小柄で平凡な容姿の日本人。気が弱いため夫の支配下に置かれ、子供たちよりも夫の機嫌を優先していた。自身に全く似ていないユリコに対しては内心怯え、距離をとっていた。"わたし"が高校生の時に睡眠薬を大量に摂取して自殺する。
祖父
母方の祖父。妻とは死別しており、東京の下町にある公団で年金暮らし。話好きで知り合いも多く、近所の便利屋をしている。趣味の盆栽のため倹約生活を送っている。

書誌情報

脚注




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