熊鈴虫
クマスズムシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/08 23:54 UTC 版)
| クマスズムシ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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クマスズムシ雄成虫
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| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Sclerogryllus punctatus (Brunner von Wattenwyi, 1893) |
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| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| クマスズムシ |
クマスズムシ(熊鈴虫[1]、学名: Sclerogryllus punctatus)は、バッタ目コオロギ科の昆虫の1つ。全体に黒くてスズムシに多少似ているが、より体が太くて脚が短い。
特徴
体長は雄で10-13mm、雌で11〜12mm[2]。ただし雌は産卵器の端までなら15〜16mm[3]。頭部が大きく、後肢が短いずんぐりした体型をしている[4]。その独特な体型は『スイカの種』そっくりとも評される[5]。
体は雌雄共に全体に黒で、各歩脚の先端側の半分ほどは色が薄くなっており、また触角の中程が白い[6]。前翅は雄では幅が広く、大きな鏡面を持ち、翅脈はほとんど直角に曲がる分脈を持つが、雌では比較的短くてやや角質化しており、8本の縦に走る翅脈があり、その後端は丸くなっている[7]。
体形は雄では前翅が幅広くなっており、そのためにややスズムシに似た姿をしている[8]。
希に長翅型が出現する[9]。
分布
本州、四国、九州および対馬、八丈島と沖縄島以北の南西諸島に知られる[10]。東洋熱帯に分布する[11]との記述もあるが、国外ではミャンマーに知られるもので、タイプ産地もミャンマーである[12]。
生態など
年1化性で、卵で越冬し、成虫は8月中旬頃から姿を見せる[13]。本州では成虫は10月頃まで見られるが南西諸島では11月末でも鳴いている声が聞けるという[14]。産卵はある程度の太さのある草本の枯れた茎に行われる[15]。
草むらの中の地上や石の下に生息する[16]。森林の周辺の草地に多く見られる[17]。やや背丈の高い草地に見られ[18]、普通種である[19]。あるいは湿度の高い草地や河川敷でよく見られる[20]、とも。
跳躍力は低く、逃げる際にも他のコオロギ類のように積極的に跳ねて逃げるよりはもそもそと堆積物に潜り込むように逃げることが多い[21]。
夜間に高く弱い声でネネネネネ……と鳴く[22]。初めはジ・ジ・とゆっくり始まり、後にネネネネネ……と高い連続音に変わる鳴き方をする[23]。鳴き終わりは唐突に終わる[24]。あるいはキーンと耳鳴りにも思える高い声で鳴き、あまりに高いので高齢者には聞き取りにくいとの声もある[25]。
分類、類似種など
本種はスズムシの名を持ってはいるが、スズムシの所属するマツムシ科のものではなく、またシバスズやマダラスズなどを含むヒバリモドキ科でもなく、コオロギ科のものである。ただしその外見は一般的なコオロギとは少々趣が異なり、他のコオロギ科のものにはあまり似たものがない。以前にはスズムシもコオロギ科に所属させていたものであり[26]、むしろマツムシ科が分けられた際に取り残された形である。外見的には確かにスズムシに似ているが、分類上重要な形態などの特徴ではコオロギ科に含まれるとの判断である。
本種の属するクマスズムシ属は世界で4種が知られている[27]が、日本本土から沖縄島まででは本種のみが知られ、同属の別種としては与那国島にネッタイクマスズムシ S. coriaceus があり、この種は本種によく似ているがやや頭が大きい体形をしている[28]。
利害
一応鳴く虫の範疇ではあるが、その声は小さく鑑賞価値は高くない。ネット上では飼育や販売などの情報も見られるようだが特筆すべきものはない。害も特にはないようである。
出典
- ^ 山崎柄根「クマスズムシ」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。コトバンクより2025年11月9日閲覧。
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 町田監修(2016) p.252.
- ^ 町田監修(2016) p.252.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 平嶋、森本監修(2008) p.85.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 日本直翅類学会編(2006) p.466.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 平嶋、森本監修(2008) p.85.
- ^ 町田監修(2016) p.252.
- ^ 平嶋、森本監修(2008) p.85.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 平嶋、森本監修(2008) p.85.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 村井(2022) p.276.
- ^ 村井(2022) p.52.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
- ^ 村井(2022) p.52.
- ^ 日本直翅類学会編(2006) p.466.
- ^ 奥山(2016) p.71.
- ^ 平嶋、森本監修(2008) p.84.
- ^ 町田監修(2016) p.252.
- ^ 日本直翅類学会監修(2011) p.255.
参考文献
- 平嶋義宏、森本桂監修、『新訂 原色昆虫大圖鑑 III巻(トンボ目・カワゲラ目・バッタ目・カメムシ目・ハエ目・ハチ目 他』、(2008)、北隆館
- 町田龍一郎監修、『日本産直翅類標準図鑑』、(2016)、株式会社学研プラス
- 日本直翅類学会監修、『バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑』、2011)、北海道大学出版会
- 村井貴文、『原色鳴く虫検索図鑑』、(2022)、北隆館
- 日本直翅類学会編、『バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑』、(2006)、北海道大学出版会
- 奥山風太郎、『鳴く虫ハンドブック―コオロギ・キリギリスの仲間―』、(2016)、文一総合出版
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