カフワ・アラビーヤとは? わかりやすく解説

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カフワ・アラビーヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/29 01:07 UTC 版)

パレスティナでのコーヒータイム
伝統的なコーヒー用ポットダッラ英語版。カップは取っ手が無いものでフィンジャーンないしはフィンジャールなどと呼ばれる。

カフワ・アラビーヤ (アラビア語フスハー:قهوة عربية qahwah ʿarabiyyah、英語: Arabic coffee) は、アラブ諸国で飲まれているコーヒーの総称。レバノンでは qahwi カフウィ、エジプトではʿahwah アフワと称する。日本や英語圏では「アラビアコーヒー」や「アラビックコーヒー[1][2]」などとも呼ばれる。

概要

入れ方はトルココーヒーと同じく、粉に挽いたコーヒー豆イブリーク(إبريق)と呼ばれる取っ手のついた小さな鍋に入れ、水を注いで、何度か沸騰を繰り返した後小さなカップに入れて飲む。イブリークという名前はアラビア語フスハーibrīqイブリークに由来し、もともと細口のポットを意味する。アラビア語では、エジプト等:kanaka カナカ、レバノン:raqwi ラクウィと呼ばれている。

カフェフスハー:مقهى maqhā マクハー、エジプト口語:カフワ又はカハーウィ)で飲む他、家庭で飲む場合は、飲む都度コーヒー豆を煎って挽くこともある。とくにベドウィンにはこのような習慣が残っている。スーダンでは、コーヒー豆を煎ってからコーヒーをいれるまでの手順の美しさが喜ばれる。

砂糖を入れ、カルダモンで風味をつけることが多い。イエメンでは、コーヒーノキから採取される果実(コーヒーチェリー)からコーヒー豆を取り除いた際に生じる殻(果皮果肉および内果皮)を使ったカフワ・キシュリーヤと呼ばれる”コーヒー”も飲まれている。生姜を加えて風味付けされるので、英語圏ではジンジャー・コーヒーの名でも知られている。

お茶請けとして、ナツメヤシの実デーツなどの果物、菓子と一緒に饗される[3]

レバント

レバント地域では、カフワが一日を通して飲まれており、トルココーヒーに似た方法で淹れられることが多く、カルダモンで香り付けされ、通常は無糖である[4]。ブロンドローストとダークローストをブレンドし細かく挽いたコーヒー豆が使われ、伝統的にブラックで大変濃いものとなっている[5]

ベドウィンや多くのパレスチナアラブ人の間では、「プレーンコーヒー」を意味するカフワ・サーダ(qahwah sādah)と呼ばれる苦いコーヒーが、歓待(ホスピタリティ)の象徴とされている。カフワの提供はしばしば儀式的に行われ、家長またはその長男が客人の間を時計回りに巡り、年齢や地位に応じてフィンジャーン(finjān、持ち手の無い小型のカップ[6])にカフウを注ぐ。 伝統的には、客人は三杯のコーヒーを受け入れるのが礼儀とされ、最後の杯を飲み終える際には、「あなたがいつもカフウを振る舞える豊かさがありますように」という祝意を込めて「ダイメン(daymen、いつも、いつまでもの意味)」と言い、締めくくる[7]

カフウを淹れるのには、イブリーク(ラクウィまたはカナカ)が使用されるが[6]、大きなまたは長い集まりの際はマサブ(masabダッラ英語版の一種)と呼ばれる真鍮のポットが利用される[8]

蜂の巣型家屋英語版があるシリアのアレッポの村で、伝統的なムッラ(murra、苦い)・カフウを飲むベドウィン男性。(1930年)

ヨルダンでも、カルダモンで香りづけされたブラックコーヒー、カフワ・サーダは、「歓迎のコーヒー」とも頻繁に呼ばれ、今なお伝統的な敬意の表現であり、もてなしの重要な要素とされている。カフウを振る舞うことは、ヨルダンの社会生活において中心的な役割を果たし、来客を敬う慣習的な儀礼となっている[9]。集まりの場でカフウが振る舞われるなか、詩が詠まれたり、さまざまな議論が行われ、氏族間の集まりでは、やはりカフウが提供されるなか和解と紛争解決が図られ、カフウは文化的、政治的、そして社会的な伝統を支えてきた[10]。注がれ続けるカフウを断る際は、フィンジャーンを振って意思を示すなど、独自の礼儀作法も受け継がれている[10]

レバノンでは、カフウィを飲まないレバノン人は「国籍を失う恐れがある」と冗談まじりに言われることがある[6]

歴史

飲用されていたとされる証拠として、15世紀のイエメンにあるスーフィー派の寺院に記録があり、夜の祈りで目を覚ますために用いられたとされる。

1511年に、メッカの宗教裁判でコーヒーの効用から禁止され、メッカ事件などが起きた[11]。しかし、この裁定は1524年にオスマントルコのスルタン、スレイマン1世の命令により撤回された[12]。その後もさまざまな場所で禁止と撤回のいざこざが起きた。

2015年、ベドウィンの来訪者に対してアラビアコーヒーを振る舞う行為(ホスピタリティ)が、「Arabic coffee, a symbol of generosity(アラビアコーヒー、寛容さの象徴)」として、アラブ首長国連邦サウジアラビアオマーンカタールの共同申請によりユネスコ無形文化遺産に登録された[13]。2024年にはヨルダンが申請国として加わり、その申請が認証され追加登録された[10]

脚注

  1. ^ https://www.city.okayama.jp/orientmuseum/0000023148.html
  2. ^ https://palmyra-dates.com/product/arabic-coffee/
  3. ^ Gulf Arabic coffee - qahwa arabiyyah”. web.archive.org (2017年5月6日). 2025年2月15日閲覧。
  4. ^ “IMEU: The rich flavors of Palestine”. imeu.net. (2008年12月1日). オリジナルの2009年4月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090416133124/http://imeu.net/news/article001840.shtml 
  5. ^ Lebanese Coffee, Coffee passion”. maatouk.com. 2018年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月20日閲覧。
  6. ^ a b c Food Heritage Foundation – Lebanese coffee” (英語). food-heritage.org (2014年10月27日). 2018年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月20日閲覧。
  7. ^ Shihab, Aziz (1993). A Taste of Palestine: Menus and Memories. San Antonio, Tex. : Dallas: Corona Pub. Co.; Distributed by Taylor Pub. Co. p. 5. ISBN 978-0-931722-93-6 
  8. ^ על כוס קפה Y-net, 2020年12月10日
  9. ^ Jordanian Coffee Traditions”. Ammanjo. 2023年8月21日閲覧。
  10. ^ a b c Decision of the Intergovernmental Committee: 19.COM 7.B.55” (英語). UNESCO. 2025年8月26日閲覧。
  11. ^ resource for Arabic books”. www.alwaraq.net. 2019年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月3日閲覧。
  12. ^ Schneider, Irene (2001). “Ebussuud”. In Michael Stolleis (ドイツ語). Juristen: ein biographisches Lexikon; von der Antike bis zum 20. Jahrhundert (2nd ed.). München: Beck. p. 193. ISBN 3-406-45957-9 
  13. ^ Arabic coffee, a symbol of generosity Intangible Cultural Heritage - UNESCO

関連項目




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