エリトランとは? わかりやすく解説

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エリトラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/14 02:40 UTC 版)

エリトラン
識別情報
CAS登録番号 185954-98-7
185955-34-4 (free acid)
PubChem 6450173
日化辞番号 J2.041.121J
特性
化学式 C66H122N2Na4O19P2
モル質量 1401.58 g mol−1
薬理学
投与経路 静脈注射
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

エリトラン (Eritoran, E5564) は、細菌感染に対する過剰炎症反応である重症敗血症に対する治療薬候補である。エーザイによって開発されている(開発コード: E5564)[1][2]。1999年から治験が開始され、2010年現在、第III相臨床試験が行われている[2][3][4]

作用機構

Toll様受容体 (Toll-like receptor, TLR) は免疫系において重要な役割を果たしている。 TLRは病原菌を認識し炎症免疫反応を活性化する。Toll様受容体4 (TLR4) は、グラム陰性菌の細胞壁外膜の成分であるリポ多糖 (LPS) を検出する[5]

エリトランはリポ多糖の構成成分であるリピドAのアナログ(構造類似化合物)であり、TLR4のアンタゴニストとして作用し、TLR4により引き起こされる過剰な反応を抑制する[6]

エリトラン (free acid)

開発

大腸菌 E.coliのLPSの生合成前駆体であるLipid X や、光合成細菌Rhodobacter capsulatus由来のリピドAがTLR4アンタゴニスト活性を示すことが1980年代後半明らかにされた。これらの糖脂質は、糖に直接結合しているアシル基のβヒドロキシル基がアシル化されていない。R. capsulatus由来のリピドAは高いアンタゴニスト活性を示すが、生体内ではすぐに加水分解を受けてしまう。そこで、アシル基をアルキル基に置換することで代謝安定性を向上させたリピドA誘導体E5531がエーザイにより開発された[7]。E5531の活性をさらに向上させたものがエリトラン (E5564) である[6]

Lipid Xの構造
E5531の構造 (free acid)

脚注

  1. ^ “Eritoran: A Potential Therapeutic Agent In Severe Sepsis”. MediNEWS.Direct. (2007年10月17日). http://www.medinewsdirect.com/?p=303 2010年11月4日閲覧。 
  2. ^ a b Kiemer, Alexandra K. (2008年). “TLR eröffnen neue Möglichkeiten” (German). Pharmazeutische Zeitung online. Govi-Verlag. 2009年12月26日閲覧。
  3. ^ Tidswell M, Tillis W, Larosa SP, Lynn M, Wittek AE, Kao R, Wheeler J, Gogate J, Opal SM; Eritoran Sepsis Study Group (2010). “Phase 2 trial of eritoran tetrasodium (E5564), a Toll-like receptor 4 antagonist, in patients with severe sepsis”. Crit. Care Med. 38 (1): 72–83. doi:10.1097/CCM.0b013e3181b07b78. PMID 19661804. 
  4. ^ エーザイ (2010年3月26日). “重症敗血症治療剤「エリトラン(E5564)」の第3相試験を継続”. ニュースリリース. 2010年11月3日閲覧。
  5. ^ Entrez Gene: TLR4 toll-like receptor 4”. 2010年11月4日閲覧。
  6. ^ a b Mullarkey M, Rose JR, Bristol J, Kawata T, Kimura A, Kobayashi S, Przetak M, Chow J, Gusovsky F, Christ WJ, Rossignol DP (2003). “Inhibition of endotoxin response by E5564, a novel Toll-like receptor 4-directed endotoxin antagonist”. J. Pharmacol. Exp. Ther. 304 (3): 1093-1102. doi:10.1124/jpet.102.044487. PMID 12604686. 
  7. ^ Christ WJ, Asano O, Robidoux AL, Perez M, Wang Y, Dubuc GR, Gavin WE, Hawkins LD, McGuinness PD, Mullarkey MA, Lewis MD, Kishi Y, Kawata T, Bristol JR, Rose JR, Rossignol DP, Kobayashi S, Hishinuma I, Kimura A, Asakawa N, Katayama K, Yamatsu I (1995). “E5531, a pure endotoxin antagonist of high potency”. Science 268 (5207): 80-83. doi:10.1126/science.7701344. PMID 7701344. 


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