ウムコント_(ミサイル)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ウムコント_(ミサイル)の意味・解説 

ウムコントゥ (ミサイル)

(ウムコント_(ミサイル) から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/17 00:36 UTC 版)

ウムコント-IR
種類 短距離防空ミサイル
個艦防空ミサイル
原開発国 南アフリカ共和国
開発史
開発者 ケントロン社[注 1]
テンプレートを表示

ウムコントゥ英語: Umkhonto)は、南アフリカ共和国のケントロン社が開発した短距離防空ミサイル個艦防空ミサイル(短SAM)[1][2]。ウムコントゥはズールー語で「」のこと[3]

来歴

フランストムソンCSF英語版社のクロタル地対空ミサイル・システムは、元来、南アフリカ国防軍の要求に応じて開発されたものであった[4]。南アフリカ国防軍では同システムをカクタスと称しており、主として飛行場の防空に用いていたが、他に適切なシステムがなかったことから、野戦防空にも投入されていた[4]1980年代後半、南アフリカはカクタスのアップグレードを決定した[3]。クロタルはミサイルの飛翔速度向上を図ったクロタルNGに発展しており、南アフリカとしてもこれに相当するミサイルが目標とされた[3]。これに応じてケントロン社[注 1]が開発したのがSAHV-3(South African High Velocity, Mach 3であり、ミサイルの飛翔速度向上に加えて情報処理装置(Analysis, Management and Systems: AMS)の性能向上も図られた[3]。1991年から1993年にかけての飛行試験を経て、1994年にはシステムの認定を取得した[4][3]

SAHV-3はクロタルと同様の目視線指令誘導(CLOS)方式を採用していたのに対し、誘導装置をダーター空対空ミサイルから導入し、赤外線誘導方式に変更することで、システムのコンパクト化を図ったのがSAHV-IRであった[6][7]。1995年には、エリコン・コントラベス社と協力して、箱形発射機に収容して対空機関砲のマウントに架し、スカイガードドイツ語版射撃統制装置と組み合わせる形でのセールスが行われていた[7]

1997年3月、ケントロン社は南アフリカ海軍の新型コルベット(後のヴァラー級フリゲート)向けに、SAHV-IRの艦載版を開発するための23万ドル相当の契約を獲得した[3][注 2]。そして後にこのミサイルは「ウムコントゥ」と改称された[3]。また後にはアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式を採用したウムコントゥ-Rも開発され、赤外線誘導方式のミサイルはウムコントゥ-IRと称されるようになった[1][2]

設計

SAHV-IRは、ダーター空対空ミサイル赤外線誘導装置をSAHV-3の弾体・弾頭部および推進装置と組み合わせる形で開発された[6]。SAHV-3は、高度30.5 - 7,315メートル・距離2,000 - 12,000メートルの範囲で、高速で襲来する攻撃機が兵装を投じる前に要撃することを目標としていた[4]。この要求を踏まえて、弾体の直径は180ミリに拡張された[7]。SAHV-3では無煙推進薬を用いた固体燃料ロケットによって最大速度マッハ3.5を発揮し、8,000メートルを10秒以内に飛翔可能とされていたが[4]、製品化されたウムコントゥ-IRでは、最大速度はマッハ2、8,000メートルを飛翔するための所要時間は18秒とされている[8]。ウムコントゥ-IRは、ミサイルの外形は変えないままで、射程については、ブロック1では15キロ、ブロック2では18キロ、ブロック3では20キロと順次に延伸している[8]。一方、ウムコントゥ-Rではミサイルの全長を延長して重量も増大させ、射程を60キロに延伸した[2]

SAHV-IRで導入された赤外線誘導装置は、2波長式の採用によりフレアへの耐性に優れているほか、LOAL(Lock-On After Launch)能力も有する[6]。またこれと同時に、中間誘導として慣性航法が導入されたほか、クロタル以来の指令誘導用無線通信リンクも維持されていることから、運動エネルギーを減衰させにくい効率的な飛行プロファイルを指令することもできる[7]。またウムコントゥ-IRブロック2では、沿海域での運用を想定してルックダウン能力を強化したシーカーが導入された[8]。そしてウムコントゥ-Rではアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導方式を採用している[1][2]

SAHV-3では尾翼で操舵を行い、横方向であれば最大40Gの機動力を発揮することができた[4]。ウムコントゥでも尾翼を操舵翼とする設計は踏襲されているほか、推力偏向(TVC)も導入されている[8]。発射機としては、艦載型・地上型いずれもVLSが用いられている[8]

ミサイル諸元表
ミサイル ウムコントゥ-IR ウムコントゥ-R
全長 3.32 m 4.3 m
直径 180 mm
全幅 500 mm
エンジン 固体燃料ロケット
重量 135 kg 195 kg
弾頭 HE破片効果(23kg)
中間誘導 慣性航法 (INS) 目視線指令誘導 (CLOS)
終末誘導 赤外線ホーミング(IRH) アクティブ・レーダー・ホーミング (ARH)
最大射程 ブロック1: 12-15 km
ブロック2: 20 km
ブロック3: 30 km
60 km

採用国

 フィンランド海軍(Umkhonto-IR ブロック2)

VLS発射機8セルを搭載。
VLS発射機8セルを搭載。

 アルジェリア海軍

VLS発射機32セルを搭載。

脚注

注釈

  1. ^ a b 1992年、デネル・グループの創設に伴ってケントロン社はその傘下に入り、2004年にはデネル・エアロスペース・システムズ社、2006年にはデネル・ダイナミクス社となった[5]
  2. ^ バラク 1が購入対象となる可能性は低かった[7]

出典

  1. ^ a b c 多田 2015, p. 80.
  2. ^ a b c d 多田 2022, pp. 25–26.
  3. ^ a b c d e f g Hooton 2001.
  4. ^ a b c d e f Cullen & Foss 1996, pp. 144–146.
  5. ^ Denel Dynamics 2013, p. 2.
  6. ^ a b c Cullen & Foss 1996, p. 264.
  7. ^ a b c d e Friedman 1997, p. 408.
  8. ^ a b c d e Denel Dynamics 2013, pp. 4–7.

参考文献

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、ウムコントゥ (ミサイル)に関するカテゴリがあります。


「ウムコント (ミサイル)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ウムコント_(ミサイル)」の関連用語

ウムコント_(ミサイル)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ウムコント_(ミサイル)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウムコントゥ (ミサイル) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS