アポシニンとは? わかりやすく解説

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アポシニン

分子式C9H10O3
その他の名称アポシニン、アセトバニロン、アセトグアイアコン、Apocynin、Acetoguaiacone、Acetovanillone、Acetoguaiacon、Apocynine、4'-Hydroxy-3'-methoxyacetophenone、3'-Methoxy-4'-hydroxyacetophenone、1-(4-Hydroxy-3-methoxyphenyl)ethanone、Acetovanillon、4-アセチルグアイアコール、4-Acetylguaiacol、1-(3-Methoxy-4-hydroxyphenyl)ethanone、2-Methoxy-4-acetylphenol、4-Acetyl-2-methoxyphenol
体系名:1-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)エタノン、2-メトキシ-4-アセチルフェノール、4-アセチル-2-メトキシフェノール、1-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エタノン、4'-ヒドロキシ-3'-メトキシアセトフェノン、3'-メトキシ-4'-ヒドロキシアセトフェノン


アポシニン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/30 02:55 UTC 版)

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アポシニン
識別情報
CAS登録番号 498-02-2 
PubChem 2214
ChemSpider 21106900 
UNII B6J7B9UDTR 
日化辞番号 J13.670K
KEGG C11380 
ChEBI
ChEMBL CHEMBL346919 
特性
化学式 C9H10O3
モル質量 166.174
融点

115 °C, 388 K, 239 °F

関連する物質
関連物質 ジアポシニン英語版
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アポシニン(アセトバニロンアセトグアイアコンとも)は天然の有機化合物バニリンと類似した構造を持つ。NADPHオキシダーゼ活性を阻害し活性酸素の生産を抑制する作用があるため、抗炎症効果を持つ。様々な植物から単離することができ、薬理学的研究が行われている。

沿革

アポシニンは1883年、ドイツの薬理学者オスヴァルト・シュミーデベルクによってアメリカアサ英語版の根から単離された。当時、この植物は既に浮腫、心疾患に効くことが知られていた。1971年、アポシニンは民間薬として肝、心疾患、黄疸喘息に用いられていた西ヒマラヤ産コオウレン属の植物、胡黄連 (Picrorhiza kurroaから単離された。1990年、Simons等は薬理学的に利用可能なレベルの単離に成功した。

物性

アポシニンは融点115℃、かすかなバニラ臭のする固体である。熱水、エタノールベンゼンクロロホルムジエチルエーテルに可溶。

作用機序

NADPHオキシダーゼはO2を還元して超酸化物(O2–•)を生産する酵素であり、免疫機構において殺菌に用いられている。アポシニンは好中球顆粒球の超酸化物の生産を妨げるが、食作用などの他の機能を妨げることはない。この選択性のため、免疫機構の他の面に影響しないNADPHオキシダーゼ阻害剤として用いることができる。

アポシニンは腎髄質細胞で、プロトンの膜透過とNADPHオキシダーゼの超酸化物の生産が共役しているかどうか判定するために用いられた。アポシニンを用いて超酸化物の生産を止めることで、プロトンの流出がNADPHオキシダーゼを活性化すると証明できた。[1]

医薬品としての可能性

  • 関節炎: 好中球はコラーゲン誘導性関節炎の主要病因である。アポシニンは炎症前に好中球の出現を抑えることができるが、すでに起こっている炎症には効果がない。[2]
  • 腸疾患: アポシニンはラットにおいて、大腸の障害、また、その炎症と関連するミエロペルオキシダーゼの酵素活性を減らすことが証明されている。[3]
  • 喘息: アポシニン配糖体であるアンドロシンはモルモットで気管支閉鎖を防ぐことが示されており、喘息治療薬として研究されている。抗喘息効果は炎症過程への干渉によるものだと考えられる。[4]
  • 動脈硬化: アポシニンはNADPHオキシダーゼを阻害し、活性酸素種の発生を抑えるため、動脈硬化の治療薬として用いられている。実際、これは内皮細胞へのマクロファージの沈着を抑制すると考えられている。[5]
  • 家族性ALS: アポシニンはスーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD1)変異マウスの寿命を延長し、同様の変異のある培養細胞においてグリア細胞への毒性を低減した。この遺伝子変異は遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に見られる。アポシニンが有効なのは、SOD1がNADPHオキシダーゼの活性を制御しているためだと考えられる。マウスでの知見は遺伝性ALSの治療薬を探索する際の指針となる。[6]

出典

  1. ^ Li, N., Zhang, G., Yi, F.X., Zou, A.P., & Li, P.L. Activation of NAD(P)H oxidase by outward movements of H+ ions in renal medullary thick ascending limb of Henle. American Journal of Physiology-Renal Physiology 289.5 (2005): 1048–1056.
  2. ^ Hart, B.A., Simons, J.M ., Knaan–Shanzer, S., Bakker, N.P., & Labadie, R.P. Antiarthritic activity of the newly developed neutrophil oxidative burst antagonist apocynin. Free Radicals in Biology and Medicine 9.2 (1990): 127–131.
  3. ^ Palmen M.J.H.J., Beukelman C.J., Mooij R.G.M., Pena A.S., & van Rees E.P. Anti-inflammatory effect of apocynin, a plant-derived NADPH oxidase antagonist, in acute experimental colitis. The Netherlands Journal of Medicine 47.2 (1995): 41–41.
  4. ^ Van den Worm, E., Beukelman, CJ., Van den Berg, AJ., Kroes, BH., Labadie, RP., & Van Dijk, H. Effects of methoxylation of apocynin and analogs on the inhibition of reactive oxygen species production by stimulated human neutrophils. European Journal of Pharmacology 433.2 (2001): 225–230.
  5. ^ Peters, E.A., Hiltermann, J.T., & Stolk, J. Effects of methoxylation of apocynin and analogs on the inhibition of reactive oxygen species production by stimulated human neutrophils. Free Radicals in Biology and Medicine 31.11 (2001): 1442–1447.
  6. ^ Harraz, MM., Marden, JJ., Zhou1, W., Zhang, Y., Williams, A., Sharov, VS., Nelson, K., Luo, M., Paulson, H., Schöneich, C. and Engelhardt JF. SOD1 mutations disrupt redox-sensitive Rac regulation of NADPH oxidase in a familial ALS model. J. Clin. Invest. doi:10.1172/JCI34060. Jan 24, 2008.


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