坂本健一 (古書店主)とは? わかりやすく解説

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坂本健一 (古書店主)

(さかもとけんいち から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/03 06:47 UTC 版)

坂本 健一(さかもと けんいち、1923年4月30日 - 2016年7月2日[1])は、日本実業家大阪市北区黒崎町天五中崎通商店街にある古書店青空書房」の店主[2]

生涯

坂本は、大阪の薬種問屋に生まれた[3]1943年近畿大学専門学校法学部に入学後、学徒動員で入営した[2][4][5]。坂本は少年期から読書家で、15歳のときに読んだモーパッサンの『女の一生』に衝撃を受け[6][7]召集令状が来た日にはロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』を一挙に読み、『論語』を携えて入営したという[6]

戦時中は千葉県九十九里浜などに配置され[3]茨城県で終戦を迎えた[4][5]

坂本は、1946年から[2]、「父親の薬代を稼ぐ」ために[8]岩波文庫[3][7]などの古書を「戸板に並べて」[3]、あるいは大八車に載せ[8]御堂筋闇市で商売を始めた[5]

1947年2月に、店舗を構えて「青空書房」を開業した[4][9]。店舗はおよそ13平方メートルで、文学、思想、美術史関係の書籍2千冊ほどが置かれている[8]

坂本は「大阪一売れない本屋」を自称し[6]、「たばこを吸いながら本はさわらないで」「本は生きています。オビをきったら怒ります」といった注意書きや[8]、週刊誌のチラシなどを手描きで作り、店内に貼り出す独特の店づくりをした[6]

坂本と個人的な親交のある青空書房の常連客の中には、作家もおり、筒井康隆は『不良少年の映画史』で坂本について言及し[8]山本一力は坂本から『寛政重修諸家譜』を買ったエピソードを踏まえて「青空書房は、本好き全員の海路を照らす灯台だと確信する」と評したほか[10]田辺聖子とも親交があり[4][11]、店内には筒井、山本、田辺からそれぞれ贈られた色紙が飾られている[12]

青空書房は、元日以外は休まない営業を、2002年ころまで長らく続けていたが[8]、その後、坂本が脳梗塞を患ったこともあって、日曜日を定休日とし[13]2010年に妻に先立たれた[9]前後から、さらに木曜日にも休むようになった[13]。日曜日を休むようになった坂本は、定休日であることを告げる手描きポスターを、そのつど新たに作成してシャッターに貼り、やがて、そこに添えられた絵や言葉が徐々に注目されて、メディアにも取り上げられるようになった[13]。その後、この手描きポスターは、大阪の画廊[14]や書店で展示され、さらに書籍として出版された[13]

2016年7月2日、心筋梗塞のため死去[1]

著書

さかもとけんいち 名義

  • 浪華の古本屋 ぎっこんばったん、SIC、2010年[7]
  • 夫婦の青空、天理教道友社、2012年[9]
  • ほんじつ休ませて戴きます : 人生最晩年、あふれ出た愛の言葉集、主婦の友社、2013年[13]
  • だれにも一つの青空がある : 大阪「青空書房」店主90歳、休業ポスターに込めた人生の応援メッセージ。、天理教道友社、2013年

出典・脚注

  1. ^ a b 『現代物故者事典2015~2017』(日外アソシエーツ、2018年)p.260
  2. ^ a b c 夫婦の青空 道友社きずな新書”. 天理教道友社. 2013年11月23日閲覧。
  3. ^ a b c d 加来誠 (2008年2月11日). “(週刊まちぶら 第143号)天五中崎通商店街 大阪市北区”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪府: p. 31  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  4. ^ a b c d “青空書房の戦後65年記 生きる道しるべ 交流つづる”. 読売新聞・大阪朝刊: p. 24. (2010年8月15日)  - ヨミダス歴史館にて閲覧
  5. ^ a b c “エッセー集:本は人生の心の糧 大阪の古書店店主・坂本さん「浪華の古本屋」”. 毎日新聞・大阪朝刊: p. 25. (2010年8月18日)  - 毎索にて閲覧
  6. ^ a b c d 近藤順子 (1998年1月23日). “感動売ります、古本屋(関西現代焼 カンサイモダンヤキ)”. 朝日新聞・夕刊: p. 3  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  7. ^ a b c 宮崎園子 (2010年8月23日). ““古本店主、自らの一冊 大阪の87歳、本通じた出会い回想録”. 朝日新聞・夕刊: p. 10  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  8. ^ a b c d e f “頑固50年、本モノ店主 天五の「青空書房」坂本健一さん”. 朝日新聞・夕刊: p. 12. (2002年11月18日)  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  9. ^ a b c 宮崎園子 (2012年10月13日). “愛する妻へ、永遠のメッセージ 大阪の古書店主、手紙110点を本に”. 朝日新聞・朝刊: p. 33  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  10. ^ 山本一力 (2006年10月31日). “(陽を浴びた朝つゆ)本好きの海路照らす灯台”. 朝日新聞・夕刊: p. 4  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  11. ^ 宮崎園子 (2012年4月14日). “本日休業、愛を込めて 絵と言葉、名物ポスター 大阪・中崎町「青空書房」”. 朝日新聞・夕刊: p. 1  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  12. ^ 橋本誠司 (2009年6月20日). “[今日のノート]本は生きもの”. 読売新聞・大阪朝刊: p. 24  - ヨミダス歴史館にて閲覧
  13. ^ a b c d e 宮崎園子 (2013年7月10日). ““出版させて戴きます”古書店主・坂本さん「休み伝えるポスター」一冊に”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪府: p. 32  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  14. ^ 宮崎園子 (2012年11月9日). “「休みます」ポスター110点 古本屋店主の手描き集め個展”. 朝日新聞・大阪朝刊・大阪市内: p. 31  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧

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