MOTHER (ゲーム)
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他機種版
No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 売上本数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | MOTHER1+2 | 2003年6月20日 |
ゲームボーイアドバンス | 任天堂 | 任天堂 | 64Mbitロムカセット | - | - | |
2 | MOTHER | 2015年6月14日 2015年6月15日 2015年6月15日 |
Wii U | エイプ パックスソフトニカ |
任天堂 | ダウンロード (バーチャルコンソール) |
- | - | |
3 | ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online |
2022年2月10日 2022年2月10日 2022年2月10日[6][7] |
Nintendo Switch | エイプ パックスソフトニカ |
任天堂 | ダウンロード | - | - |
開発
コピーライターの糸井重里は、RPGを将棋のようにかったるいと感じて好きになれなかったが、『ドラゴンクエストII』を遊んだことで考えが変わった[27]。他者の仕事に対してヤキモチを妬く性格だったことに加え、考えるうちにRPGに対する疑問[注 5]も浮かんだ。[27]。さらに考える中でスティーブン・スピルバーグがRPGを作ったらどうなるのかという発想に至り、様々なアイデアが浮かんでそれをノートに書き留めた[注 6][27]。
その後、糸井はテレビでファミリーコンピュータについて語る機会を得て、その際『スーパーマリオブラザーズ』への恩義[注 7]からゲームに対して好意的な発言をしたところ、番組を見た任天堂の社長(当時)である山内溥から1987年に発売された『中山美穂のトキメキハイスクール』のサジェスチョンとして招かれた[27]。
その機会に、糸井は書き溜めていたアイデアのノートを宮本茂に見せたものの、想像と違う宮本の冷淡な対応にとまどい、帰りの新幹線の中では人生最大級の無力感を味わい涙したという。東京に戻り普段の広告業をこなす日々がだいぶ経った頃、突然任天堂からスタッフを集めたので会ってほしいと電話がかかり、そこからようやくゲーム開発が始まった[27]。
その後、千葉県市川市のアパートに開発拠点を据え、彼らとの信頼関係を築く中で、アイテムのネーミングをユーモラスにするというアイデアが生まれた[27][注 8]。これまでの開発現場では「言葉の専門家」がおらず、コピーライターである糸井のアイデアを宮本茂も高く評価していた[27]。
本作の作風はスティーブン・スピルバーグの冒険映画がモチーフとなっており、父親が登場しないのは『E.T.』のオマージュである[28]。同様の理由からおんなのこの家を教会にしたほか、「Eight Melodies」も讃美歌を意識したものとなった[29]一方、主人公が喘息持ちという設定は前述の糸井の体質に由来しており、同様の持病を持つプレイヤーを励ましたいという意向もあった[28]。また、ゲーム本編の中でプレイヤーの本名を入れた後、エンドロールでそれが表示されるという演出は、映画『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』の劇中でメンバーのジュリー(沢田研二)が観客に向かって声をかけてくれと呼びかける場面をヒントにしている[27]。
パッケージ・ロゴデザイン
本作のパッケージとロゴのデザインは、当時西武百貨店の広告制作に携わっていたアートディレクターの髙田正治が手掛けている。当時は糸井も西武百貨店のキャッチコピーを制作しており、髙田との仕事の繋がりがあった[30]。
パッケージのデザインは、赤[注 9]一色の下地にタイトルロゴ等の文字だけが表記されているというシンプルなものになっている。赤色にしたのは糸井の提案によるもので、エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズのアルバム『ブラッド&チョコレート』のジャケットのオマージュとなっている。一方、髙田は本作がストーリー重視のRPGであることを考慮し「ドーンとタイトルロゴがあって、それだけで訴えられる感じのほうがいい」としてキャラクターを排したパッケージにすることを提案した。こうしたことには、子供向けのデザインが多かった当時のパッケージとの差別化を図る狙いがある[31][32][5]。
『MOTHER』の文字の書体はBank Gothicを元に調整したものだが、「O」の部分はリアルな地球として描写されている。『MOTHER』というタイトルについて糸井から「母」「マザーシップ」というキーワードを聞いた髙田は「地球」を連想し、『MOTHER』という母船が地球を包み込んでいるというドラマチックなイメージで描いた。この地球のデザインは、髙田の事務所にあった地球儀の写真を複数枚組み合わせてトレースしたもので、実際の地球の地形と異なるものになるよう意図的に描かれている[32][33]。
なお、髙田は、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のパッケージとロゴのデザイン、および『MOTHER3』のロゴデザインの草案[注 10]も手掛けている[34]。
注釈
- ^ 森のやや木の間隔が広い場所では、斜め移動することで、木の間をすり抜けるように移動できる。これを使わないと行けない場所がある。
- ^ 仲間に加わっていても意識不明の場合はストーリーを進められない。
- ^ おんなのこ・もうひとりのおともだちは仲間に加えなくてもクリアが可能である。
- ^ この墓のグラフィックは、ファミリーコンピュータ版では十字架を模したデザインだが、『MOTHER1+2』では別のデザインに変更されている。
- ^ 例:「なぜ、鎧・兜・盾に剣という装備でなくてはならないのか」、「なぜ主人公は勇者でなくてはならないのか」
- ^ 例:「平凡な日常の中でポルターガイストが発生して冒険が始まる」、「普通の少年が身の丈だけでモンスターに立ち向かう」
- ^ もともと糸井は喘息をかかえており、症状をしのぐために『スーパーマリオブラザーズ』を遊んでいた。
- ^ 例:「ボロのバット」や「とびきりのフライパン」などアイテムの等級を子どもが使うような平易な言葉にする。[27]
- ^ 正確には、マゼンタ100%とイエロー100%を合わせた「金赤」という色に黒を数%混ぜたもの[5]。
- ^ 2000年にNINTENDO64版『MOTHER3』が開発中止となったことで髙田は制作から離れ、後の2006年に発売されたゲームボーイアドバンス版『MOTHER3』のロゴは髙田の草案を元に整えられた[34]。
出典
- ^ a b c 「5月10日号特別付録 ファミコンロムカセット オールカタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第7巻第9号、徳間書店、1991年5月10日、175頁。
- ^ a b “Earthbound Beginnings for Wii U - Nintendo Game Details”. Nintendo of America. 2017年2月9日閲覧。
- ^ a b “EarthBound Beginnings”. Nintendo UK. 2017年2月9日閲覧。
- ^ a b “MOTHER|Wii U”. 任天堂. 2017年2月9日閲覧。
- ^ a b c “第4回 「マザー・レッド」は金赤じゃない?|『MOTHER』のロゴの地球はなにが元になっているのか?”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2022年7月30日). 2023年12月11日閲覧。
- ^ a b “『MOTHER』『MOTHER2 ギーグの逆襲』が「ファミリーコンピュータ&スーパーファミコン Nintendo Switch Online」で本日追加。プラチナポイント交換グッズも登場。”. 任天堂 (2022年2月10日). 2022年2月10日閲覧。
- ^ a b “Nintendo Switch Onlineに『MOTHER』と『MOTHER2 ギーグの逆襲』が追加。糸井重里氏からファンに向けたメッセージも公開【Nintendo Direct】”. ファミ通.com. KADOKAWA (2022年2月10日). 2022年2月10日閲覧。
- ^ 『百科』, p. 30.
- ^ 『百科』, p. 40.
- ^ 『百科』, p. 38.
- ^ 『百科』, p. 42.
- ^ 『百科』, p. 152.
- ^ 『百科』, p. 54.
- ^ 『百科』, pp. 56–57.
- ^ 『百科』, p. 59.
- ^ 『百科』, p. 60.
- ^ 『百科』, pp. 72–74.
- ^ 『百科』, p. 80.
- ^ 『百科』, pp. 91–92.
- ^ 『百科』, p. 100.
- ^ “MOTHER 主人公達”. 任天堂. 2017年2月9日閲覧。
- ^ 『百科』, pp. 18–19.
- ^ 『百科』, pp. 20–21.
- ^ 『百科』, pp. 22–23.
- ^ 『百科』, pp. 24–25.
- ^ 『百科』, pp. 12–17.
- ^ a b c d e f g h i j “若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春『MOTHER』編”. 電ファミニコゲーマー (2017年10月26日). 2023年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月8日閲覧。
- ^ a b “WILD MOTHER PARTY(3/8)”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2018年12月21日). 2023年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月8日閲覧。
- ^ “WILD MOTHER PARTY(4/8)”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2018年12月22日). 2023年9月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月28日閲覧。
- ^ “第1回 糸井重里との出会い|『MOTHER』のロゴの地球はなにが元になっているのか?”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2022年7月27日). 2023年12月11日閲覧。
- ^ “WILD MOTHER PARTY(1/8)”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2018年12月19日). 2020年11月8日閲覧。
- ^ a b “第2回 真っ赤なパッケージが生まれた理由|『MOTHER』のロゴの地球はなにが元になっているのか?”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2022年7月28日). 2023年12月11日閲覧。
- ^ “第3回 『MOTHER』のロゴの地球マークは|『MOTHER』のロゴの地球はなにが元になっているのか?”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2022年7月29日). 2023年12月11日閲覧。
- ^ a b “第5回 『MOTHER』のデザインの強さ|『MOTHER』のロゴの地球はなにが元になっているのか?”. ほぼ日刊イトイ新聞 (2022年7月31日). 2023年12月11日閲覧。
- ^ a b “MOTHER まとめ [ファミコン]/ ファミ通.com”. KADOKAWA CORPORATION. 2015年3月21日閲覧。
- ^ a b 池谷勇人「ユーゲーが贈るファミコン名作ソフト 100選」『ユーゲー 2003 Vol.07』第7巻第10号、キルタイムコミュニケーション、2003年6月1日、25頁、雑誌17630-2。
- ^ a b 飯田和敏「20th Anniversary 僕たちの好きなファミコン100」『CONTINUE』Vol.13、太田出版、2003年12月18日、9 - 59頁、ISBN 9784872338225。
- ^ a b 『ファミコン通信』第16・17合併号、アスキー、1989年8月4日。
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