隠し砦の三悪人 隠し砦の三悪人の概要

隠し砦の三悪人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 06:53 UTC 版)

隠し砦の三悪人
ポスター
監督 黒澤明
脚本 菊島隆三
小国英雄
橋本忍
黒澤明
製作 藤本真澄
黒澤明
出演者 三船敏郎
千秋実
藤原釜足
上原美佐
藤田進
音楽 佐藤勝
撮影 山崎市雄
編集 黒澤明
製作会社 東宝
配給 東宝
公開 1958年12月28日
上映時間 139分
製作国 日本
言語 日本語
製作費 1億9500万円[1]
興行収入 3億4264万円[2]
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あらすじ

三船敏郎千秋実藤原釜足上原美佐

百姓の太平と又七は、褒賞を目当てに山名家と秋月家の戦いに参加したが、何も出来ないまま秋月の城は落ち、山名の捕虜になって焼け落ちた秋月城で埋蔵金探しの苦役をさせられる。夜、捕虜たちが暴動を起こし、それに紛れて二人は脱走する。二人は谷で、薪の中から秋月の紋章が刻まれた金の延べ棒を発見する。そこに屈強な男が現れる。

男の正体は秋月家の侍大将・真壁六郎太で、落城後、大量の金を薪に仕込んで泉に隠し、秋月家の生き残りである雪姫や重臣らとともに、山中の隠し砦に身を潜めていた。秋月家再興のため、同盟国の早川領へ逃げ延びる方法を思案していた六郎太であったが、秋月領と早川領の国境は山名に固められている。しかし太平と又七が口にした、一度敵の山名領に入ってから早川領へ抜けるという脱出法を聞いてこれを実行に移すことと決める。六郎太について隠し砦に行った二人は、そこで女に出会う。六郎太はその女を「俺のものだ」と言うが、その女こそ雪姫だった。彼女の落とした櫛から姫だと目星をつけた又七は、恩賞欲しさに町へ出かけるが、姫はすでに打ち首になったと聞く。しかし、それは雪姫の身代わりとなった妹の小冬だった。

六郎太は、気性の激しい雪姫の正体を百姓二人にも隠し通すために唖(おし)に仕立て、太平と又七を連れて早川領を目指す。彼らが出立した後、重臣らが残る隠し砦は追っ手に攻められて燃え落ちてしまう。最初の関所でさっそく一行は怪しまれるが、六郎太は隠している金を逆に見せて、番卒に突き出す。そして「褒美をくれ」と駄々をこねるうちに、関所を通される。夜、山名の城下町にある木賃宿に泊まり、人買いに売られた百姓娘を見た雪姫は、彼女を買い戻させ仲間に入れる。

道中、六郎太一行を怪しんだ騎馬武者に発見される。六郎太は武者を斬り捨てるうちに、かつての盟友にして宿敵である山名の侍大将・田所兵衛の陣に駆け込んでしまう。二人は槍で果たし合いをし、六郎太は兵衛を打ち負かす。又七と太平は姫に手を出そうとするが、彼女の正体を姫と見抜いて恩義を感じている百姓娘に阻まれる。

一行は火祭りの準備のために薪を運んでいる群集にこれ幸いと紛れ込む。しかし祭りの場には、不審な素振りの者がいればすぐに捕えるべく監視の山名兵が配されていた。又七と太平は祭りの火に薪をくべることを拒むが、六郎太は「燃やせ燃やせ!踊れ踊れ!」と薪を炎の中に投げ込んで燃やしてしまい、楽しそうに踊る姫に反して、二人は情けない顔で踊る。翌朝、灰の中から拾い上げた金を背負って一行は再び進むが、追手が迫り、又七と太平は姫からかけられた別れの言葉に戸惑いつつも逃亡してしまう。そして、早川領まであと一歩というところで姫と六郎太と娘は山名兵に捕えられる。峠の関所で捕らわれの身となった三人の前に兵衛が現れる。果たし合いの件で大殿に罵られ、弓杖で顔を打たれて傷を負った兵衛は六郎太を恨む。雪姫は「姫は楽しかった。潔く死にたい」と腹をくくり、六郎太も男泣きする。それに心動かされた兵衛は、処刑の日、「裏切り御免!」と宣言して姫と六郎太を解放し、三人は馬に乗って早川領へ逃げのびる。

又七と太平は早川の城に連行されると、本来の姿に戻った雪姫と六郎太、そして兵衛に再会し、ようやく彼等の素性を明かされて仰天する。六郎太は、運んだ金は秋月家再興に用いるため雪姫ですら自由にできないと、せめてもの褒美として大判一枚を二人に渡す。金にこだわり続けていた二人だったが、今は褒美の大判を譲り合いながら仲良く家路につく。

キャスト


注釈

  1. ^ 時代設定は明確にされていないが、作中鉄砲が使用されていることから鉄砲伝来後(1543年以降)ということが判別できる。

出典

  1. ^ a b c d e 尾崎秀樹 編『プロデューサー人生 藤本真澄 映画に賭ける』東宝出版事業室、1981年12月、241-242頁。 
  2. ^ a b c 85回史 2012, pp. 148, 156.
  3. ^ 都築 2010, p. 290.
  4. ^ a b c d 浜野保樹「解説・世界のクロサワと挫折―『隠し砦の三悪人』」(大系2 2009, pp. 692–695)
  5. ^ a b 浜野保樹「解説・世界のクロサワと挫折―時代劇三部作」(大系2 2009, pp. 683–684)
  6. ^ a b 菊島隆三「すぐれた作品のかげにはストイックなまでの自虐」(『黒澤明ドキュメント』キネマ旬報社、1974年)。キネマ旬報 2010, pp. 108–116に所収
  7. ^ 佐藤忠男『黒澤明作品解題』岩波書店〈岩波現代文庫〉、2002年10月、202-203頁。ISBN 9784006020590 
  8. ^ 「黒澤明、自作を語る―隠し砦の三悪人」(キネマ旬報 2010, p. 53)
  9. ^ 「製作メモランダ」『全集黒澤明』第4巻、岩波書店、1988年2月、432-433頁、ISBN 9784000913249 
  10. ^ 黒澤明第3部-PAGE6”. 日本映画写真のキネマ写真館. 2016年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月30日閲覧。
  11. ^ 浜野保樹「解説・世界のクロサワと挫折―黒澤プロダクション」(大系2 2009, pp. 695–696)
  12. ^ 『芸能画報』1958年2月号、国際写真通信社、1958年、33頁。
  13. ^ ガルブレイス4世 2015, p. 325.
  14. ^ 研究会 1999, p. 204.
  15. ^ 上原美佐「雪姫になって」(DVDの解説書)、東宝、2003年、37頁。
  16. ^ a b 丹野達弥 編『村木与四郎の映画美術「聞き書き」黒澤映画のデザイン』フィルムアート社、1998年10月、115頁。ISBN 4845998858 
  17. ^ a b 都築 2010, pp. 293–294.
  18. ^ a b 松田美智子『サムライ 評伝三船敏郎』文藝春秋、2014年1月、59-60頁。ISBN 9784163900056 
  19. ^ 塩澤幸登『KUROSAWA 映画美術編』河出書房新社、2005年7月、323頁。ISBN 9784309906447 
  20. ^ ブルーリボン賞ヒストリー 第9回(1959年2月5日)”. シネマ報知. 2012年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
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  22. ^ Festival Awards - 1959” (英語). fipresci.org. 2020年9月1日閲覧。
  23. ^ 85回史 2012, p. 588.
  24. ^ 「オールタイム・ベスト 映画遺産200」全ランキング公開”. キネマ旬報映画データベース. 2009年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月1日閲覧。
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  27. ^ ガルブレイス4世 2015, pp. 333.
  28. ^ オーディ・E・ボック「素顔の黒澤明」(『話の特集』1979年6月号、佐藤美和子訳)。『大系黒澤明 第3巻』講談社、2010年2月、pp.260-271に所収
  29. ^ 研究会 1999, p. 198.
  30. ^ 読売新聞 縮刷版読売新聞社、1981年4月4日付けラジオ・テレビ欄。 
  31. ^ a b c d e f g 黒澤映画「隠し砦の三悪人」舞台化決定、真壁六郎太役の上川隆也「壁の高さは計り知れません」”. ステージナタリー. ナターシャ (2023年4月6日). 2023年4月6日閲覧。
  32. ^ a b c d e f 黒澤映画「隠し砦の三悪人」舞台版に佐藤アツヒロ登場「これは怖い…怖すぎです」”. ステージナタリー. ナターシャ (2023年5月9日). 2023年6月10日閲覧。


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