間質性肺炎 間質性肺炎の概要

間質性肺炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/15 05:36 UTC 版)

特発性間質性肺炎は日本特定疾患で、その予後は臨床診断によって様々である。例えば特発性器質化肺炎 (Cryptogenic organizing pneumonia: COP) は一般に予後良好であるが、特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis: IPF) 及び急性間質性肺炎 (acute interstitial pneumonia: AIP) については難治性である。

原因による分類

感染
ウイルス感染は間質性肺炎の形態をとることがあり、間質性肺炎の鑑別診断の一つとして考慮すべきである。血液疾患などで見られることの多いサイトメガロウイルス肺炎が代表的なものであるが、インフルエンザウイルス等も原因となることがある。
膠原病
関節リウマチ全身性強皮症皮膚筋炎多発性筋炎MCTDなど線維化を来す膠原病の一症候として間質性肺炎が出現する頻度が高い。特に皮膚筋炎のうち筋症状が乏しいもの (amyopathic DM) に合併するものは急速に進行し予後が悪い傾向がある。
吸入抗原
カビ、キノコの胞子、動物性蛋白質などの原因物質の長期曝露により発症する[1]
放射線
画像診断程度の線量ではまず発生することはなく、放射線療法程度の強い被曝に起こる。照射野に一致した炎症像を呈する。また、基礎疾患として間質性肺炎のある患者の場合は照射野外にも広範囲に広がる重篤な間質性肺炎を起こす可能性がある。
薬剤性
ブレオマイシンゲフィチニブなどの抗癌剤、向精神作用性てんかん治療剤のカルバマゼピン[2][3]漢方薬小柴胡湯[4]PHMGインターフェロン抗生物質などや胆道疾患改善薬(ウルデストン錠)によるものがよく知られている。特にゲフィチニブによるものは日本(人)での発症率が高く、主として先行販売されていた海外でのデータをもとにして薬事承認されていたため上市後に危険性が顕在化することとなり、社会的にも大きな影響を生じた。これらが疑われたときには原因薬剤の速やかな中止が第一となる。

特発性

以上に挙げた明確な原因を持たないものは特発性間質性肺炎 (IIPs: Idiopathic Interstitial Pneumonias) と呼ばれ、臨床病型や組織型によりいくつかに分類される。剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺炎は喫煙との関連が明らかになっている。

病理学的分類:Liebow (1968) の分類

  1. 通常型間質性肺炎 (UIP: usual interstitial pneumoniae)
  2. 閉塞性細気管支炎を合併したびまん性肺胞障害 (BIP: bronchiolitis obliterans and diffuse alveolar damage)
  3. 剥離型間質性肺炎 (DIP: desquamative interstitial pneumoniae)
  4. 巨細胞性間質性肺炎 (GIP: giant cell interstitial pneumoniae)
  5. リンパ性間質性肺炎 (LIP: lymphoid inerstitial pnumoniae)

その後、検討され、2002年のATS (American thoracic society) /ERS (European respiratory society) の分類では、以下の7つに分類されることとなった。

  1. 通常型間質性肺炎 (UIP: usual interstitial pneumonia) ※特発性肺線維症 (IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis)
  2. 非特異性間質性肺炎 (NSIP: Non-Specific Interstitial Pneumonia)
  3. 特発性器質化肺炎 (COP: Cryptogenic Organizing Pneumonia)
  4. 剥離性間質性肺炎 (DIP: Desquamative Interstitial Pneumonia)
  5. 呼吸細気管支炎関連間質性肺炎 (RB-ILD: Respiratory Bronchiolitis - associated Interstitial Lung Disease)
  6. 急性間質性肺炎 (AIP: Acute Interstitial Pneumonia)
  7. リンパ球性間質性肺炎 (LIP: Lymphocytic Interstitial Pneumonia)

2013年に分類が改訂され、以下のように分類されるようになった。2019年現在の最新版である。

  • 慢性線維化性間質性肺炎
    • 特発性肺線維症 (IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis)
    • 特発性非特異性間質性肺炎 (NSIP: Non-Specific Interstitial Pneumonia)
  • 喫煙関連間質性肺炎
    • 呼吸細気管支炎関連間質性肺炎 (RB-ILD: Respiratory Bronchiolitis - associated Interstitial Lung Disease)
    • 剥離性間質性肺炎 (DIP: Desquamative Interstitial Pneumonia)
  • 急性・亜急性間質性肺炎
    • 特発性器質化肺炎 (COP: Cryptogenic Organizing Pneumonia)
    • 急性間質性肺炎 (AIP: Acute Interstitial Pneumonia)

上記の主な6疾患に加えて稀な間質性肺炎としてリンパ球性間質性肺炎、特発性PPFEの2病型が加えられ、またいずれにも該当しない場合には分類不能型間質性肺炎というカテゴリーに入ることとなった。

病態概念

通常、肺炎(肺胞性肺炎)という場合には気管支もしくは肺胞腔内に起こる炎症を指すが、間質性肺炎は、肺胞性肺炎とは異なり、肺胞毛細血管を取り囲む間質と呼ばれる組織に炎症や線維化を引き起こす。肺胞性肺炎とは異なった症状・経過を示す。

肺の線維化
肺コンプライアンスの低下、いわば「肺が硬くなる」状態で、肺の支持組織が炎症を起こして肥厚することで、肺の膨張・収縮が妨げられる。肺活量が低下し、空気の交換速度も遅くなる。
ガス交換能の低下
間質組織の肥厚により毛細血管と肺胞が引き離される。その結果、血管と肺胞の間でのガス交換(拡散)効率が低下し、特に酸素の拡散が強く妨げられる。

  1. ^ 過敏性肺炎(外因性アレルギー性肺胞炎) メルクマニュアル
  2. ^ カルバマゼピン KEGG MEDICUS
  3. ^ 宇治正人,洲鎌芳美,松下晴彦、「偶然の再投与により確定診断したカルバマゼピンによる薬剤性肺炎の1例」 日呼吸会誌, 43(3): 150-154, 2005
  4. ^ 築山邦規,田坂佳千,中島正光 ほか、「小柴胡湯による薬剤誘起性肺炎の1例」 『日本胸部疾患学会雑誌』 1989年 27巻 12号 p.1556-1561, doi:10.11389/jjrs1963.27.1556
  5. ^ 4月から「特発性間質性肺炎」の厚生労働省の診断基準、重症度分類が変更”. 2024年3月15日閲覧。
  6. ^ Kondoh Y, et al. Respirology 2017;22:1609-1614.
  7. ^ 野崎博美,小野清子,大我仁美 ほか、「【原著】重症間質性肺疾患患者に対する呼吸リハビリテーションの効果」 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2010年 20巻 2号 p.170-174, doi:10.15032/jsrcr.20.2_170
  8. ^ オフェブ:特発性肺線維症に初の分子標的薬 日経メディカル 記事:2015/9/11
  9. ^ 肺移植|一般社団法人日本呼吸器学会”. www.jrs.or.jp. 2019年7月23日閲覧。


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