近畿日本ツーリスト 概要

近畿日本ツーリスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/26 08:15 UTC 版)

概要

近畿日本ツーリスト株式会社の名称は、1955年9月、主に近畿地方を拠点とする大手私鉄近畿日本鉄道(近鉄)の子会社であった近畿日本航空観光株式会社と、独立系の日本ツーリスト株式会社が合併し近畿日本ツーリスト株式会社になった時から使用されてきた。

その会社が2013年1月1日に持株会社化のため事業を分割・譲渡し社名を KNT-CTホールディングス株式会社に変更した際、近畿日本ツーリスト株式会社の名は団体旅行事業の分割譲渡先会社に引き継がれた。合併以降における会社名の呼びなしの区切りはきんきにっぽん+つーりすとが一応正当だが、合併前の社名の偶然もあるためきんき+にっぽんつーりすとと脳内で区切られて認識している人も多い。また、「日本」部分の正式な読みはにっぽんでありにほんではないが、後者のきんきにほんつーりすとという読み方も、社員や顧客をはじめとして広く慣用されている。

略して近ツー(きんツー)、近ツリ(きんツリ)[注釈 1]KNT(主にグループでの略称、ドメイン名“knt.co.jp”にも使われている)とも呼ばれ、団体旅行のセールスに強みを持ちつつ、個人向けに国内旅行の「メイト」、海外旅行の「ホリデイ」をはじめとする数多くのパッケージツアーを提供してきた。2021年度より「メイト」は「日本の旅」、「ホリデイ」は「世界の旅」に改称しており、現在、それらのブランドは系列会社に引き継がれている。早くからダイレクトマーケティングにも力を入れ、クラブツーリズム株式会社を設立している。情報化にも力を入れており、業界初のオンラインリアルタイムシステム(旅館予約システム)の導入[1] や、携帯電話でホテルの予約ができる Eクーポンシステムも他社よりもいち早く導入した。

団体旅行に強みがあるのは、この会社の前身の一つである日本ツーリストが修学旅行をはじめとする団体旅行を中心に営業活動をしてきたことによる。シンクタンクの「旅の文化研究所」を1993年に開設する等、多方面からアイデアを生み出し、学校・企業・宗教などの団体に積極的に営業活動を行い、特に日本初の修学旅行専用列車を走らせるなどの実績から修学旅行には強みを持っている。その積極的な営業姿勢から「野武士集団」と称され、経済小説にもなった。

1963年以降に進出した世界各国では、現地の子会社が旅行客に対して到着地での各種サービスの提供、航空券や旅行商品の販売、再保険引受事業などを行っている。世界各国の子会社の社名は “Kinki Nippon Tourist 〜” ではなく “Kintetsu International Express (〜) Inc.” となっている。これは Kinki という単語が英語の Kinky(変態)に語感が似ているためである[注釈 2]。なお、日本での会社の英語社名は “Kinki Nippon Tourist 〜” である。

大手総合旅行会社であった初代の近畿日本ツーリスト(現:KNT-CTホールディングス)は2013年1月に持株会社に移行し、団体旅行事業の譲渡先として設立した会社が近畿日本ツーリスト株式会社(2代目)となった[2][3]。初代の旧会社とは別法人で事業内容に差異がある。

2代目の会社は主に学校、企業、自治体などを顧客とする団体旅行専門の旅行会社で、訪日旅行も手がけ、関東地方甲信越地方中部地方関西地方に支店を置いていた。団体旅行以外にも団体内のイベント企画・提案など旅行以外の事業も行っていた。個人向けの営業がないため多くの支店窓口は1階にない。なお、関東・甲信越・中部・関西以外の地域には、この会社の支店は置かれておらず、その地域にある系列会社の営業所が存在し団体旅行や訪日旅行を取り扱っている。またその地域でのイベントの企画も行う。

2017年9月までは関東・甲信越・中部・関西地区の個人旅行事業(商品企画、Web・提携販売)は近畿日本ツーリスト個人旅行株式会社が営んでいた。それ以外の地方では、その地域にある関連会社が団体旅行と個人旅行の両方を扱っていた。

2018年4月に近畿日本ツーリスト株式会社(2代目)は東京地区の法人を対象とした一部事業のみを行う法人となったため、株式会社近畿日本ツーリストコーポレートビジネスに商号変更した。

2021年10月に、株式会社近畿日本ツーリスト首都圏が、他地域子会社など8社を吸収合併して、近畿日本ツーリスト株式会社(3代目)に商号変更し、全国規模の旅行会社として復活した。


注釈

  1. ^ 当時の近畿日本ツーリスト広報部では「近ツー」のほうがよいとしている(小島郁夫 『最新 業界の常識 よくわかる旅行業界』(第3版) 日本実業出版社、2002年4月、93頁より)。
  2. ^ 同様の理由から、かつてKNT本社の一部が置かれていたことのある大阪府東大阪市に本部を置く近畿大学も2016年に英語名称を “Kinki University” から “Kindai University” に変更している。
  3. ^ 1947年6月1日付けで近鉄から南海が再分割
  4. ^ 合併後の社名については、両者が旧名にそれぞれ愛着を持っていたため制定で揉めたといわれるが、当時の近鉄グループの総帥・佐伯勇が「『近畿』を『日本ツーリスト』につければ両方の顔が立ち、さらに『近畿日本』を示せるのでいいのではないか」と提案し、結局それに決定したとされる。

出典

  1. ^ 会社情報 > 沿革 - 株式会社NTTデータテラノス
  2. ^ a b 近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合へ - 観光経済新聞 2012年8月18日
  3. ^ a b c KNT、クラツー統合後の社名決定、「近ツー」ブランド強調 - トラベルビジョン 2012年9月28日
  4. ^ 橋本亮一 『最新 業界の常識 よくわかる旅行業界』 日本実業出版社、2009年9月、126頁
  5. ^ 城山三郎 『臨3311に乗れ』 集英社文庫、1980年4月、105-107頁
  6. ^ 城山三郎 『臨3311に乗れ』 集英社文庫、1980年4月、137頁
  7. ^ 城山三郎 『臨3311に乗れ』 集英社文庫、1980年4月、141頁
  8. ^ 城山三郎 『臨3311に乗れ』 集英社文庫、1980年4月、143頁
  9. ^ 2004年度殿堂入りした方々 馬場勇 - 日本国際ツーリズム殿堂
  10. ^ 近畿日本ツーリストの歴史 - 近畿日本ツーリストグループ 新卒採用サイト
  11. ^ a b c d 小島郁夫 『最新 業界の常識 よくわかる旅行業界』(第3版) 日本実業出版社、2002年4月、93頁
  12. ^ 城山三郎 『臨3311に乗れ』 集英社文庫、1980年4月、230頁
  13. ^ 近ツー、クラツーの営業譲渡でクラツー商品取扱は05年3月末まで - トラベルビジョン 2004年5月6日
  14. ^ トラベルデータ研究会 『業界快速ナビ 旅行業界がわかる』 技術評論社、2008年1月、69頁
  15. ^ 期間限定 WiLL Shopを大阪、東京でオープン - 近畿日本ツーリスト(初代・旧会社)ニュースリリース 2000年2月1日
  16. ^ 近ツー・日本旅行連合に冷ややかな目 - 日経BPネット 2001年1月30日
  17. ^ 近畿日本ツーリスト株式会社と株式会社日本旅行の統合中止について (PDF) - JR西日本 2002年2月4日
  18. ^ トラベルデータ研究会 『業界快速ナビ 旅行業界がわかる』 技術評論社、2008年1月、68頁
  19. ^ KNT、イオンクレジットサービスと業務提携−共通カードや独自商品の販売へ - トラベルビジョン 2007年9月4日
  20. ^ KNT、電子マネー「WAON」でイオンと業務提携、旅行先の決済も順次開始 - トラベルビジョン 2008年11月21日
  21. ^ KNT、外貨両替機能とショッピング機能つきの国際デビッドカードを発行 - トラベルビジョン 2007年5月24日
  22. ^ KNT、コクヨグループのカウネットと業務協力、新規BTMの取扱10億円を目指す - トラベルビジョン 2007年8月21日
  23. ^ KNT、次世代店舗のホリデイ9割増と好調、太田社長「狙い通り」と評価 - トラベルビジョン 2007年3月8日
  24. ^ KNT、富裕層獲得狙い銀座に新店舗、新ブランド立ち上げ08年20億目標 - トラベルビジョン 2007年4月26日
  25. ^ KNT、中国人訪日旅行強化で組織改正、新会社「KNT ASIA」も設立 - トラベルビジョン 2010年11月10日
  26. ^ 近ツー、新企業ブランド「KNT!」、ロゴマークも新たに、年明けから順次変更 - トラベルビジョン 2006年9月22日
  27. ^ KNT、地域別カンパニー制から6事業制に再編−店頭販売会社設立へ - トラベルビジョン 2007年8月30日
  28. ^ 「KNT北海道」「KNT九州」設立へ−団体旅行事業分社化、地域密着営業を展開 - トラベルビジョン 2009年10月26日
  29. ^ KNT、希望退職は192名−転身支援金7億円の特損、12億円の費用削減見込む - トラベルビジョン 2009年10月26日
  30. ^ 近ツー、加賀電子に32億円で本社売却 - 日本経済新聞 2010年5月27日
  31. ^ KNTは上場来安値、債務超過状態となり、上場維持に向け抜本的対策必要か - モーニングスター 2010年11月10日
  32. ^ KNT、4期ぶりに黒字転換 - 観光経済新聞 2011年2月26日
  33. ^ KNT、東北と中国四国を分社化 9月に新会社設立 - 日刊トラベルニュース 2011年8月25日
  34. ^ 移転、近畿日本ツーリスト本社 - トラベルビジョン 2012年1月30日
  35. ^ KNT、クラツーを子会社化、13年から-持株会社新設し新体制、分社化も - トラベルビジョン 2012年8月11日
  36. ^ "KNT-CT"新体制スタート 「近ツー」ブランドに回帰 - 日刊トラベルニュース 2013年1月29日
  37. ^ 子会社の設立および連結子会社間の会社分割(吸収分割)に関するお知らせ - KNT-CTホールディングス
  38. ^ 子会社の設立および連結子会社間の会社分割(吸収分割)等に関するお知らせ - KNT-CTホールディングス
  39. ^ a b 事業構造改革の実施について” (pdf). 2020年11月11日閲覧。
  40. ^ 新生「近畿日本ツーリスト株式会社」について - KNT-CTホールディングス
  41. ^ ISO14001に続きISO9001の認証を取得 - 近畿日本ツーリスト(初代・旧会社)ニュースリリース 2003年1月30日
  42. ^ 近ツー、相鉄観光子会社化、3ヶ年でメイト・ホリデイ4倍の取扱を計画 - トラベルビジョン 2004年11月26日
  43. ^ 相鉄観光が社名変更、「近畿日本ツーリスト神奈川」に - トラベルビジョン 2010年12月2日
  44. ^ 近ツー、読売旅行と販売提携、共同販売キャンペーンなども検討へ - トラベルビジョン 2005年1月11日
  45. ^ 近畿日本ツーリスト、宿泊予約サイト「楽宿」を公開 - INTERNET Watch (Impress Corporation) 2005年1月19日
  46. ^ 近ツー、北部九州地域の販売網拡充で昭和トラベラーズクラブを子会社化 - トラベルビジョン 2005年10月26日
  47. ^ 近ツー、神奈川新聞子会社の旅行事業を譲受、地域に強い会社とシナジー見出す - トラベルビジョン 2006年3月22日
  48. ^ 近ツー、三喜トラベルサービスの株式を取得、ECC需要の開拓図る - トラベルビジョン 2006年4月28日
  49. ^ 近ツー、京浜急行と資本・業務提携、京急観光での商品増売目指す - トラベルビジョン 2006年4月27日
  50. ^ 近ツー、京王観光と業務提携、京王観光はメイト・ホリデイの販売倍増ねらう - トラベルビジョン 2006年7月4日
  51. ^ KNT、南海電鉄と相互に株式取得、プラットフォーム戦略の一環 - トラベルビジョン 2006年10月27日
  52. ^ KNTと京成グ、業務提携、京成トラベルでKNT商品を主力商品として販売 - トラベルビジョン 2007年1月5日
  53. ^ KNT、新しい宿泊予約総合サイト「ステイプラス」をオープン - トラベルビジョン 2007年1月24日
  54. ^ KNT、宿泊予約サイト「ステイプラス」を終了−経営資源を集中 - トラベルビジョン 2009年10月28日
  55. ^ KNT、店頭販売専門会社名は「KNTツーリスト」に、2008年1月1日始動 - トラベルビジョン 2007年10月3日
  56. ^ KNT、本社ビルと土地を売却、売却益7.5億円を特別利益に計上へ - トラベルビジョン 2010年5月28日
  57. ^ 岡山の中学の修学旅行でカルテル容疑 JTBなど5社 - 朝日新聞 asahi.com関西 2009年3月11日
  58. ^ 近畿日本ツーリストなど3社に排除措置命令、修学旅行カルテル - 日経BPネット 2009年07月13日
  59. ^ 近畿日本ツーリスト元社員、7億円詐欺容疑、逮捕へ - 朝日新聞 asahi.com関西 2010年1月21日
  60. ^ 元近ツー社員に懲役6年判決 7億円詐取で大阪地裁 - 日本経済新聞 2010年7月1日
  61. ^ 大阪地裁、元社員の詐欺事件で近畿日本ツーリストに約2億円の損害賠償判決 - niftyファイナンス マーケットニュース 2011年9月14日
  62. ^ 訴訟の判決および特別損失の計上に関するお知らせ (PDF) - 近畿日本ツーリスト(初代・旧会社)IRニュース 2012年7月18日
  63. ^ 読売新聞を無断勧誘 近畿日本ツーリスト、郵便局側に - 朝日新聞asahi.com 2013年3月1日
  64. ^ “近畿日本ツーリストの過大請求、86自治体で最大最大16億円…コロナ関連事業で人件費水増し”. 読売新聞. (2023年5月2日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20230502-OYT1T50157/ 2023年6月15日閲覧。 
  65. ^ “近ツー支店長ら3人逮捕 5.9億円詐欺容疑―ワクチン業務で過大請求・大阪府警など”. 時事通信. (2023年6月15日). https://www.jiji.com/amp/article?k=2023061500535 2023年6月15日閲覧。 
  66. ^ “近ツー元支店長ら3人を再逮捕 過大請求額は約9億円に 詐欺容疑”. 毎日新聞. (2023年7月5日). https://mainichi.jp/articles/20230704/k00/00m/040/343000c 2023年7月5日閲覧。 
  67. ^ “近ツー元支店長ら3人を追起訴 ワクチン業務の過大請求、9億円に”. 毎日新聞. (2023年7月25日). https://mainichi.jp/articles/20230725/k00/00m/040/212000c 2023年7月25日閲覧。 
  68. ^ 東大阪市、近ツリを入札参加停止 ワクチン業務過大請求受け1年間”. 毎日新聞 (2023年4月24日). 2023年7月28日閲覧。
  69. ^ 有資格業者の指名停止措置について”. 近畿地方整備局 (2023年7月18日). 2023年7月28日閲覧。
  70. ^ 近畿日本ツーリスト株式会社(令和5年7月4日公表:指名停止)”. 広島市 (2023年7月4日). 2023年7月28日閲覧。
  71. ^ 新潟市、近畿日本ツーリスト(東京)など2社を指名停止”. 新潟日報 (2023年7月26日). 2023年7月28日閲覧。
  72. ^ “近ツー静岡支店リーダーも過大請求、焼津・掛川両市から2億円超だまし取ったか…コロナ関連事業”. 読売新聞. (2023年7月18日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20230718-OYT1T50180/ 2023年7月18日閲覧。 
  73. ^ 近ツーを指名停止 掛川市、過大請求問題で”. あなたの静岡新聞 (2023年6月14日). 2023年7月28日閲覧。
  74. ^ a b “人件費水増し、大阪府でも 近ツー元支店長ら追送検 1億7000万円詐取疑い”. 産経新聞. (2023年8月7日). https://www.sankei.com/article/20230807-3EWLUSDYGBL3NASKZ6Y77YQDOE/ 2023年8月7日閲覧。 
  75. ^ “新たに1.7億円を詐取した疑い 近ツー元支店長ら5人を書類送検”. 朝日新聞. (2023年8月7日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASR875STFR87PTIL004.html 2023年8月7日閲覧。 
  76. ^ “近ツーの高浦雅彦社長が辞任、コロナ事業で9億円過大請求…役員ら報酬返納し社員37人も処分”. 産経新聞. (2023年8月9日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20230809-OYT1T50241/ 2023年8月9日閲覧。 
  77. ^ “辞任の近ツー社長、会社ぐるみの過大請求否定 調査報告書は「コンプラ意識欠如」”. 産経新聞. (2023年8月9日). https://www.sankei.com/article/20230809-ZCK3Z3RRMZNOTI2BV2DEWGPJOM/ 2023年8月9日閲覧。 
  78. ^ “新型コロナ関連受託業務で過大請求の近畿日本ツーリスト元社員に有罪 静岡支店、2億円詐取”. 日刊スポーツ. (2024年1月16日). https://www.nikkansports.com/m/general/news/amp/202401160000229.html 2024年1月16日閲覧。 





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「近畿日本ツーリスト」の関連用語

近畿日本ツーリストのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



近畿日本ツーリストのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの近畿日本ツーリスト (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS