海運
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/17 06:37 UTC 版)
日本
海運会社
- 定義
旧来から世界経済の変化にともない、多くの海運会社が合併し、また経営力のない海運会社の消滅が繰り返されてきた。また、企業やその名称は存続させるものの、その経営権は海運業界以外の別のグループや、他業種の会社が持っているといったように、企業ごとに様々な形態がある。
現在、様々な海運会社があり、その経営形態はまさに千差万別であるが、定義の一例は以下のとおり。
- 会社としての主務が海運業であり、登記上の会社の名称が海運会社として世間一般に知られる名称である場合、その名称を指す(それを第1位海運会社名称とする)。
- 会社としての主務が海運業であり、登記上の会社の名称とは違い、海運会社として世間一般に知られる名称が別にある場合、その世間一般に知られる名称を指す(それを第1位海運会社名称とする)。
- 経営グループもしくは他業種の会社がその海運会社を運営していても(登記上の会社の名称が旧来の海運会社の名称とはなんら関連のないものになってしまっても)、海運会社として世間一般に知られる名称を有している場合、その名称を指す(それを第1位海運会社名称とする)。
- 上記1,2の定義にあてはまるが、違う海運会社に経営権を所有されている場合、その経営権を所有している海運会社の名称を第1位海運会社名称とし、経営権を所有されている海運会社の名称を第2位海運会社名称とする。
歴史
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- 1869年(明治2年) - 民間の船舶保有を解禁。
- 1870年(明治3年) - 商船規則を発布。以後、鴻池組や三菱商会などが商船を取得。
- 1885年(明治18年) - 三菱商会と共同運輸会社の過当競争に政府が介入して日本郵船が設立[2]。
- 1945年(昭和20年)5月1日 - 第二次世界大戦の戦局悪化に伴い、民間会社による貨物船などの運営が廃止され、海運総監部による国家船舶の運営が決定[3]。
海運再建2法と3社体制
日本の海運会社は、1963年に成立した海運再建2法(「海運業の再建整備に関する臨時措置法」および「外航船舶建造融資利子補給および損失補償法および日本開発銀行に関する外航船舵建造融資利子補給臨時措置法の一部を改正する法律」)[4]により海運集約が行われたほか、近年さらに大手海運会社同士の合併が行われ、2012年現在の大手海運会社は日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社体制となっている。
また、外航航路とは別に内航海運として沿海航路が発達し、独自の進化を遂げている。製鉄会社主体の一般在来型貨物船オペレーター、石油会社主体の内航タンカーオペレーター、旅客輸送も行う長距離フェリー船社、島嶼間輸送における独占的なオペレーター、製紙会社主体のRO-RO船オペレーター等多様である。また、利用運送事業の方面も発達し零細企業でも頭角を現す企業がある。
プラザ合意による円高で、それまでドル建で資産を決済していた海運各社は大打撃を受け、バブル景気に反して厳しい経営状態が続いていたが、2000年代には中国国内の好景気によって住宅建設や工業設備への需要が急成長し、中国政府の資源政策や建設と機械装置用の鉄鋼需要の拡大の影響から、鉄鉱石・石炭といった重量資源の輸送需要が拡大した。また、同時に中国製低価格消費財の貿易量も増大したため、その原材料と製品の輸送需要も加わって、国際的な貨物輸送が行なえる船舶への需要が世界的に急拡大した。これにより世界的に船賃(トンキロ)が高騰するとともに、貨物船不足が発生しはじめた。海運各社は新造船発注を増大させ、新造船の価格である船価も高騰して造船各社は活況となった。海運業や造船業で需給が逼迫し、こういった「船バブル」から海運会社の業績は回復してきている。
2008年9月の米国発の世界的金融危機により、船舶が運ぶ製品・資源・エネルギーのうち、特に市況の影響を受けやすい製品の荷動きが減少し、製品を運ぶコンテナ船や自動車船の需要が急落、自動車船や航空輸送等にも資本を投入していた日本郵船や、収益のほぼ半分をコンテナ部門が占めていた川崎汽船などは収益が急落した[5]。2009年8月現在、資源(鉄鉱石・石炭等)、エネルギー(石油・天然ガス)輸送部門で需要の底打ちが見られ、中長期的には今後も世界の人口は増加し、それに伴い荷動きも増加すると見込まれるため、21世紀の現在もなお、海運は成長産業であるといえる。
国内における海上輸送シェア
国内間輸送において、海上貨物輸送はトンキロ換算で42%のシェアを持ち、これは自動車輸送(52.9%)に次ぐ[6]。平均輸送距離は497 kmであった(2005年度)。これは58.7 %(33.5億トンキロ)を占めた自動車の68 kmの7.3倍、4 %(2.3億トンキロ)の鉄道の435 kmの約1.1倍であった。
2005年度 日本国内貨物輸送[7] 内航船 自動車 鉄道 航空機 合計 輸送トンキロ
(100万トン・km)211,576
(37.09 %)334,979
(58.72 %)22,813
(4.00 %)1,075
(0.19 %)570,443
(100 %)平均輸送距離
(km)497 68 435 996 ---
旅客輸送
2005年度 日本国内旅客輸送[8] 一般旅客定期
航路事業特定旅客定期
航路事業旅客不定期
航路事業合計 輸送人数
(100万人)94.0
(91.1 %)0.2
(0.2 %)9.0
(8.7 %)103.2
(100 %)輸送人キロ
(100万人・km)3,870 1 154 4,025
注釈
- ^ 運輸業界では、物流効率や物流量を計る尺度として「輸送トンキロ」を使用する。輸送トンキロは、1トンの貨物を1キロメートル運ぶ場合の人件費、燃料費、減価償却費など、その輸送量を表現するために使用される。まれに「輸送キロトン」とも云う。
- ^ 自動車工業会調べ
- ^ 雑学 - 現在でも日本の損害保険会社に「海上」の名を冠しているものがあるのは、ここから損害保険が発達したからである。
- ^ 日本に偏りすぎた雑学:日本の場合、愛媛県今治市の船主達は「エヒメセンシュ」として世界的に有名である。
- ^ 日本だけの話題:日本郵船が日本貨物航空を傘下に収めたほかヤマトホールディングスと提携したり、商船三井が近鉄エクスプレスと提携したことは、この流れに沿ったものである。
出典
- ^ 池田良穂監修 『船のすべてがわかる本』 ナツメ社 2009年2月9日発行 ISBN 9784816346408
- ^ 吉田準三「わが国明治期の会社制度の展開過程・(続編)」『流通經濟大學論集』第27巻第4号、1993年、1-16頁、NAID 120006218952。
- ^ 船舶の運営は大本営に一元化(昭和20年5月2日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p29 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa39/ind060103/001.html
- ^ フジサンケイビジネスアイ (2009年7月28日). “視界不良、海運に大波 郵船・川汽が通期赤字”. 2009年8月4日閲覧。
- ^ 国土交通省海事局 (2007年8月15日). “26.輸送機関別貨物輸送量の推移” (PDF). 2009年4月16日閲覧。
- ^ 国土交通省海事局 (2007年8月15日). “18.旅客輸送実績” (PDF). 2009年4月16日閲覧。
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