海事代理士 海事代理士の概要

海事代理士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 04:23 UTC 版)

海事代理士
英名 Marine Procedure Commission Agent((一社)日本海事代理士会が主張している英語名)
実施国 日本
資格種類 国家資格
分野 船舶・法律
認定団体 国土交通省
等級・称号 海事代理士
根拠法令 海事代理士法
公式サイト 日本海事代理士会
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
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資格

海事代理士となる資格を有するのは以下のいずれかに該当する者である(海事代理士法第2条)。

  1. 海事代理士試験に合格した者
  2. 行政官庁において十年以上海事に関する事務に従事した者であって、その職務の経歴により海事代理士の業務を行うのに十分な知識を有していると国土交通大臣が認めたもの

ただし、海事代理士法第3条に定める欠格事由に該当する者は海事代理士になることはできない。

登録

試験合格証書または在職履歴を証明する書面等を添え、国土交通省(各地方運輸局)に登録申請を行なう。他士業が登録要件として士業法で定められる業界団体(士業団体)への強制入会制を採用し、登録と士業団体への入会を一体の手続として行なうのと異なり、海事代理士では登録の完了をもって、海事代理士の資格を得てその業務が可能となる。

登録に伴う登録免許税は3万円(登録免許税法別表第1-32(29))。

開業

海事代理士を開業する者の出身背景は、大きく一般事務系職を背景とする者と、海運関係現業職を背景とする者とにわけられる。他の隣接法律職と異なり、出身背景がこのように二極化するのは海事代理士の特徴的傾向といえる。

前者は、一般企業の総務や経理、公務員、法律関係職の分野にまたがる。後者は船員、海運業、造船業の現業者にまたがる。

  • 一般事務系職を出身背景とする者が開業するには、海運造船という特殊な業界独特の体質・気質、慣習を理解、体得しておく必要がある。また、同業界が閉鎖的な体質を持つため、強い人脈がないと依頼はまず見込めない。
  • 船員等の海運関係現業職を出身背景とする者が開業するには、技術的な現場作業とは異って事務処理業務に特有の精緻な注意力・思考の習得が要求される。さらに海事代理士業務の処理に必要な行政法や登記法、労働法といった試験科目を超える法知識と法的思考力が要求され、法律職業界の慣行・気質・価値観の理解と習得も必要となる。船員や海運業出身の者が海事代理士を開業するには、これらの点が実務処理の上で事実上大きな障害となるため、司法書士補助者や行政書士補助者など法律職業界での実務経験がない者の開業は難しい。

これらの意味で、行政書士や司法書士などに比べ、はるかに開業が困難な資格種といえる。しかしながら、海運・造船業界に人脈を得て開業している資格者の年収は、開業10年程度の者で700万円〜1000万円くらいであることが多い[要出典]。これは、この資格種が特殊な存在であるため、地域市場における競争原理が働かず独占状態になりやすいからだといわれる。もっとも、古くからの港町では、既存の資格者の事務所が何代にもわたって市場を独占しているため、こういった市場での新規参入は簡単ではない[要出典]

業務

海事代理士の業務は、別表2の法令に定められた「申請」「届出」「登記」「その他の手続き」につき、手続き及び書類(電磁的記録を含む)の作成をすることである。

  1. 別表1の行政機関に対し事実行為(委託)としてなすこと
  2. 1の手続きにかかる書類の作成をすること
  3. 2の書類を電磁記録で作成すること

第1条 海事代理士は、他人の委託により、別表第1に定める行政機関に対し、別表第2に定める法令の規定に基づく申請、届出、登記その他の手続をし、及びこれらの手続に関し書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)の作成をすることを業とする。

別表第1(第1条関係)

  1. 国土交通省の機関
  2. 法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所
  3. 都道府県の機関
  4. 市町村の機関

別表第2(第1条関係)

  1. 船舶法(明治32年法律第46号)
  2. 船舶安全法(昭和8年法律第11号)
  3. 船員法(昭和22年法律第100号)
  4. 船員職業安定法(昭和23年法律第130号)
  5. 船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和26年法律第149号)
  6. 海上運送法(昭和24年法律第187号)
  7. 港湾運送事業法(昭和26年法律第161号)
  8. 内航海運業法(昭和27年法律第151号)
  9. 港則法(昭和23年法律第174号)
  10. 海上交通安全法(昭和47年法律第115号)
  11. 造船法(昭和25年法律第129号)
  12. 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)
  13. 国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(平成16年法律第31号)(国際港湾施設に係る部分を除く。)
  14. 領海等における外国船舶の航行に関する法律(平成20年法律第64号)
  15. 前各号に掲げる法律に基づく命令

  1. ^ 平成13年6月22日参議院国土交通委員会国土交通省海事局長国会答弁 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=115114319X02020010622
  2. ^ 海上運送事業の活性化のための船員法等の一部を改正する法律(平成16年6月2日法律第71号)附則第19条(海事代理士法の一部改正に伴う経過措置)
  3. ^ a b c d e 海事代理士法第1条別表2、行政書士法第19条
  4. ^ 旧運輸省回答、登記研究210号質疑応答、昭和25年9月9日民事甲第2449号民事局長通達。なお、第10回国会運輸委員会における立法趣旨説明で運輸事務次官は「司法書士法の解釈論をまたず、法文上積極的に船舶の登記は、海事代願の業務としても、正当に行い得るものであることを明白にしておくことがぜひとも必要であると考えられることであります。」と説明し、立法趣旨の段階から船舶の登記は司法書士と海事代理士の競合業務となることを前提にしている。 https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=101003830X00619510219 また海事代理士法第17条第1項但し書きの「他の法令に別段の定がある場合」に司法書士法が該当するのは明らかであり、司法書士が海事代理士法施行により船舶登記ができなくなるのではないかとの懸念は全くなく、立案当局の運輸省も同様に考えているとする論説がある(鮫島 眞男:衆議院法制局第三部長 論説 最近の法律の動き(その八) 第十回国会通過の法務関係の法律から(収録 登記研究41号))
  5. ^ 船舶登記令は不動産登記法156条を準用しているが審査請求の手続きに関しては基本的に行政不服審査法の定めによる(行政不服審査法第1条第2項)ことから行政不服審査法が別表第二に定める法令に規定されていない以上審査請求ができるとは解せられない。また海事代理士法第1条には「申請、届出、登記その他の手続」とあり「その他の手続き」は法文上申請、届出、登記と同等の手続きを指すことから、この手続きを超える審査請求が「その他の手続き」に入るとは読めない。また、税理士、弁理士は行政不服審査の書類作成を認めているが、それぞれ明文の規定をおいており、その他手続きに含まれるとはしていないことも、この見解を裏付けるものである、海事代理士法第1条別表2、行政不服審査法第1条第2項、司法書士法第3条第1項第3号、司法書士法第73条第1項、弁護士法第72条、税理士法第2条第1項第1号、弁理士法第4条第1項<
  6. ^ a b 海事代理士法第1条別表2、司法書士法第3条第1項第1号、司法書士法第73条第1項
  7. ^ 登記研究210号質疑応答
  8. ^ 第10回国会運輸委員会における運輸事務次官立法趣旨説明   https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=101003830X00619510219
  9. ^ a b 海事代理士法第1条別表1及び別表第2、社会保険労務士法第2条別表第1
  10. ^ a b 平成7年12月22日付法務省民事二課照会回答
  11. ^ 平成7年1月19日海交総交第11号運輸省海上交通局照会回答
  12. ^ a b c 昭和26年7月19日海調総第751号


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