本尊 (日蓮正宗)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/31 02:48 UTC 版)
概説
日蓮書写の曼荼羅本尊(現存約130幅)については、文字曼荼羅・十界曼荼羅・御本尊などと呼んでいるが、日蓮正宗ではそれらすべては伝本門戒壇之大御本尊を根元として、木の幹が戒壇本尊ならば他は枝葉のようなものであるとしている。
本尊の特徴は中央に「南無妙法蓮華経」の題目と宗祖の名「日蓮」および判形が独特な筆さばきで縦書きされている。その四隅に四天王が書かれ、南無妙法蓮華経の左右に仏界の釈迦牟尼仏・多宝如来、四菩薩や諸天等神々、地獄界の提婆達多に至るまで、十界の衆生を代表する名前が首題を取り囲むという構造になっており、事の一念三千を文字によって顕している。
これは弘安頃の本尊から徐々に形が完成し、1280年(弘安3年)頃に安定した形となっている。
この本尊の姿は、伝本尊七箇之相承の「中央の首題、左右の十界、皆悉く日蓮なり」と伝えられるごとく、霊山会上の儀式の姿を借りて、日蓮の一心に具わるところの十界互具・百界千如・事の一念三千の全体を文字をもって顕したものとされる。すなわち中央の南無妙法蓮華経・左右の十界の聖衆ともに、日蓮の生命全体を顕わすとし、故に日蓮は「日蓮が魂を墨にそめながして書きて候ぞ、信じさせ給へ」と説明している、とされる。
日蓮正宗の各寺院・施設および各信徒宅には、時の大石寺法主によって授与された日蓮書写の本尊、それを板に彫った板本尊、もしくは歴代法主による戒壇本尊を書写した本尊、それを板に彫った板本尊、印刷された形木本尊などが安置されており、本尊に対する日々の給仕は「生身の日蓮にお仕えするのと同じ気持ちで行うべき」とされている。
この本尊は末法の本仏、「日蓮」の悟りそのものであり、本仏としての日蓮の境界を人法一箇の大法として顕わされたものとし、この本尊に朝夕に勤行唱題することによって、“成仏”という永遠に崩れぬ境涯を得ることができるとされている。
大石寺第二祖の日興は、謗法厳戒を厳格に主張して、他宗の寺院や神社をすべて謗法と断じて参詣を禁じている。しかしその反面、戒壇本尊への宗教の統一である広宣流布が達成された暁においては、神仏習合も行われ、日本全国の神社仏閣すべてに日蓮正宗の本尊を安置し、参拝を解禁すべき旨を書き残している[要出典]。このため、氏子総代全員が檀信徒である大石寺周辺地域(静岡県富士宮市上条)の神社に於いては、神体として日蓮正宗の本尊が安置されているところがある。
日興以降の歴代法主の本尊は南無妙法蓮華経と書いた直下に日蓮在御判と書き、その左下に書写した法主の名前と花押を加えており、日蓮花押とは書かない。また、日蓮の本尊には一切書かれていない本尊の賞罰についても、左右に小さく書き足しているのも特徴的であるほか、戒壇本尊には二千二百二十余年と書いてあるが、歴代法主は二千二百三十余年と書写する。
例外であるが日蓮在御判の部分を日蓮聖人と書いた日目の本尊も存在する。
本尊の形態
本尊の形態には「紙幅本尊」と「板本尊」がある。
紙幅本尊は表具をつけて掛軸の形にしてあり、法主直筆の「常住本尊(書写本尊)」と、法主直筆の曼荼羅を印刷した「形木本尊」に分けられる。寺院所蔵の紙幅本尊はすべて「常住本尊」であり、葬儀の際に掲げられる「導師本尊」も同じく「常住本尊」である。信徒宅に貸し下げられる本尊は「形木本尊」(特別形木本尊もある)で、信心熱心な信徒が所属寺院を通して総本山に申請すれば「常住本尊」が授与されることもある。
「板本尊」は、日興門流のみに代表される「常住本尊」である。総本山の諸堂、各寺院の本堂に安置され、伝「本門戒壇之大御本尊」を模して、黒漆塗りの板に文字を刻み、文字には金箔が施されている。また、末寺の客殿や納骨堂に安置される板本尊には法主直筆の白木の板本尊もある。蓮華座に本尊の臍を差し込んで安置されている。大石寺客殿安置の「御座替わり御本尊」(日興書写)など、周囲に金色の枠が施されている本尊もあるが、施設に関しては紙幅本尊のところもあれば板本尊のところもある。
なお、此処に書かれている常住板御本尊と本門戒壇大御本尊の形状は同じである。また、本尊には書写年月日、所蔵寺院名、安置場所、願主名などが脇書として書かれることもあり、本尊を書写した時の法主の名と判形(花押)も下部に書かれている。
- ^ a b 日蓮宗 法名教会(日蓮宗側サイト)
- ^ 地涌239[リンク切れ](創価学会側サイト)
- ^ 宗旨建立750年慶祝記念出版委員会 2002, pp. 111–112.
- ^ 日蓮正宗宗務院 2008, p. 13.
- ^ 日蓮正宗宗務院 2004帰命依止の本尊と位置付ける。
- ^ 日蓮正宗公式サイト 御書解説 聖人等御返事
- ^ 本門戒壇の大御本尊は偽作? 信じ得ぬ人々へ - 日蓮正宗 妙通寺 <ホームページ>
- ^ a b 創価学会と日蓮宗の「小樽問答」再現記録(日蓮宗現代宗教研究所主任)伊藤立教
- ^ 大御本尊を信じてきた創価学会の皆さんへ | 慧妙(えみょう)オフィシャルサイト(日蓮正宗側サイト)
- 1 本尊 (日蓮正宗)とは
- 2 本尊 (日蓮正宗)の概要
- 3 本門戒壇の大御本尊
- 4 導師本尊
- 5 参考文献
- 6 外部リンク
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