尺 朝鮮の尺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 15:07 UTC 版)

朝鮮の尺

朝鮮では、目的によって黄鐘尺・周尺・造礼器尺・布帛尺・営造尺などの多様な尺が使われていた[30]。また、朝鮮では田地の面積を測るのに実際の大きさによる「頃畝法」と収穫量を元にした「結負法」があった(なお、同様の制度は日本の古代および中世にも存在した。を参照)。この計算のために量田尺という尺が導入された。これは量田尺1尺四方の田の収穫量を1とするもので、実際の量田尺は周尺で5尺ないし6尺とされた。

大韓帝国時代の1902年にメートル法との対応が導入され、それによると周尺1尺は20 cm、また1把は周尺5尺四方の面積(1 m2)とされた。1909年には日本式の度量衡法が導入され、旧来の尺は使われなくなった。

大韓民国では1964年に尺貫法が廃止された。

映画フィルムにおける「尺」

35ミリ映画フィルムにおいて、1フィートは16コマに相当する。

サイレント映画時代の映画は、16コマを1秒として1フィートが1秒となっていた。正確にはサイレント時代は、撮影と映写も手動のクランクでフィルムを送っており、1秒は大体16コマから18コマとなっていたが[31][32]、1フィートが1秒というのは(ヤード・ポンド法では)計算に便利なため、16コマが一応の目安となっていた[33]

映画に音声がついたトーキー時代となってから、音声が変速で一定しないのでは具合が悪いため、モーター送りによる一定速度で、1秒は24コマと定められた[31]。トーキーでは、1秒は1 12フィートということになる。

映画の上映時間は、何フィートと表記される[34]。日本に映画が輸入された時代は、まだ日本はメートル法ではなく尺貫法であった。フィートは304.8 mm、尺は約303.03 mmであって長さが近いために、映像の時間のことを、業界用語で「尺」と呼ぶのである[35]

さまざまな尺

古代中国

  • 古代中国の嘉量による尺
    • 代の尺 : 約23.09 cm
    • 代の大尺 : 約29.4 cm
    • 代の小尺 : 約24.6 cm
    • 代の大尺 : 約29.4 cm
    • 代の小尺 : 約24.6 cm

日本

  • 大宝律令の大尺 : 約356 mm
    高麗尺に由来。土地の計量など。
  • 大宝律令の小尺 : 約296 mm(小尺一尺二寸=大尺一尺)
    唐尺に由来。平安時代以降はこれが一般的になる。
  • 又四郎尺・鉄尺 : 約302.58 mm
    永正年間に京都の指物師又四郎が定めたとされ、大工が主に用いた。
  • 享保尺・竹尺 : 約303.63 mm
    徳川吉宗が紀州熊野神社の古尺を写して天体観測に用いたとされる。
  • 折衷尺 : 約303.04 mm
    伊能忠敬が測量のために又四郎尺と享保尺を平均して作ったとされる。明治度量衡取締条例における曲尺の根拠とされた。
  • 曲尺(かねじゃく)(明治度量衡法) : 約303.030 mm
    明治度量衡法で、10/33 mと定義された。又四郎尺、享保尺、折衷尺などを勘案して明治期に定められた。通常は「尺」といえば曲尺のことをいう。
  • 鯨尺(くじらじゃく) : 約378.788 mm(曲尺の一尺二寸五分(1.25倍)に当たる。)
    明治度量衡法で、25/66 mと定義された。主に呉服について用いられる。六尺褌や三尺帯といったときは鯨尺の長さのことである。またタオルなどの織物の場合、織機に使われる筬の鯨尺1寸(約37.88 mm)当たりの本数によって密度が決められる。
  • 呉服尺(ごふくじゃく)、呉服差し(ごふくざし) : 約363.636 mm(曲尺の一尺二寸(1.20倍)に当たる。)
    明治度量衡法では定義されていない。鯨尺より五分短く、呉服の裁断に用いる[36]

注釈

  1. ^ a b 計量法施行法(1951年6月7日法律第208号 廃止:1993年11月1日)第4条第1項による定義
  2. ^ 度量衡法、明治二十四年(1891年)三月二十四日法律第三號、「第四條による定義
  3. ^ 李強「解剖学骨名「尺骨」の由来を巡って医学文化史の世界を瞥見する」『大阪物療大学紀要』第2巻、学校法人物療学園 大阪物療大学、2014年、53-61頁、doi:10.24588/bcokiyo.2.0_53ISSN 2187-6517NAID 110009771617 
  4. ^ 季旭昇 (2014), 説文新証, 芸文印書館, p. 679 
    石小力 (17 December 2022). 尺度同源分化説. 首届出土文献語言文字研究学術研討会.
  5. ^ 『漢書』律暦志「以子穀秬黍中者、一黍之広、度之九十分、黄鐘之長。一為一分、十分為寸、十寸為尺、十尺為丈、十丈為引、而五度審矣。」
  6. ^ 第44回・企画展「度量衡と交易」 ~長さ・容積・重さをはかる~ 岩手県立農業博物館、2020年2月8日閲覧。
  7. ^ 説文解字』夫部「夫、丈夫也。从大、一以象簪也。周制以八寸為尺、十尺為丈。人長八尺、故曰丈夫。」
  8. ^ 小泉袈裟勝、「歴史の中の単位」、p.193、1974-11-10、総合科学出版
  9. ^ 二村隆夫、「丸善 単位の辞典」、p.40、黄鍾管の項、ISBN 978-4-621-04989-1、丸善(株)、2002-03-25
  10. ^ 隋書』律暦志に南北朝時代の度量衡の変遷が見える
  11. ^ 小泉(1977), pp.214-215 「竹尺の主産地は京都となり、鉄尺または曲尺は難波であった。」
  12. ^ 小泉(1977), p252の天野清による実測値に基づく計算値
  13. ^ 計量法施行法(昭和26年法律第208号)第4条第1号
  14. ^ [1] 15/26.4の数値が刻印されている。
  15. ^ 度量衡法、明治二十四年(1891年)三月二十四日法律第三號、「第四條 從來慣用ノ鯨尺ハ布帛ヲ度ルトキニ限リ之ヲ用ヰルコトヲ得 鯨尺一尺ハ一尺二寸五分トシ其ノ十倍ヲ鯨尺一丈、十分ノ一ヲ鯨尺一寸、百分ノ一ヲ鯨尺一分トス」とある。
  16. ^ ちなみに、奈良の大仏は像高14.98 m・台座3.05 m。一方、古式捕鯨で捕られていたセミクジラは体長15 m – 18 mであり、実際にいい勝負である。
  17. ^ 小泉(1977), pp.241-242
  18. ^ 小泉(1977), p.240
  19. ^ 小泉(1977), p.242
  20. ^ 小泉(1989), p. 47 この経緯は明治初期度量衡を所管した大蔵省と内田の記すところ以外に根拠となる資料がなく、史実としては疑問が持たれている。
  21. ^ 平凡社 大百科事典 第6巻(サ-シャ)、「尺貫法」の項、「ただし、これらの尺についてのいわれは明治初期になって現れたものであり、疑わしい点もある。」(執筆者:三宅 史)、p.1297、1985年3月25日、平凡社
  22. ^ 小泉(1989), p. 47
  23. ^ 小泉(1961), p.35
  24. ^ 小泉(1977), p.246
  25. ^ 小泉(1977), p.246
  26. ^ 小泉(1989), p. 149 折衷つまり平均の説は、大蔵省度量衡改正掛が作りあげたもので、その実は枡座の容量に変更を加えないために行われたものである。
  27. ^ a b 小泉(1977), p.248
  28. ^ 小泉(1961), p.51
  29. ^ 小泉(1977), p252
  30. ^ 韓国国立民俗博物館한극의 도량형 (韓国の度量衡)』1997年http://www.nfm.go.kr/Data/daPub_view.nfm?seq=153&select_tab=0&searchYear=&searchWord=&nowPage=68&gubun_list=year  (朝鮮語)
  31. ^ a b 杉原賢彦+編集部編「なぜ1秒間に24コマと決まっているのか」『ムービー・ラビリンス 映画の謎に答えるQ&A』フィルムアート社、2003年、pp.36-37
  32. ^ 森卓也『映画この話したっけ』ワイズ出版、1998年、p.306
  33. ^ 杉本五郎『映画をあつめて これが伝説の杉本五郎だ』平凡社、1990年、p.124
  34. ^ 映画フィルムのデータベース化と「フィルム調査カード」の作成プロセス 大傍正規(フィルムセンター研究員)、フィルム調査カード内の「フィート数 feet」、NFC NEWSLETTER、p.12
  35. ^ 映画フィルムのデータベース化と「フィルム調査カード」の作成プロセス 大傍正規(フィルムセンター研究員)、フィルム検査業務の重要性、「・・・フィルムの資産価値を査定するうえで、フィート長が欠かせない尺度となるからである。また、コマ単位で尺を測っておくことは・・・、」、NFC NEWSLETTER、p.13
  36. ^ 日本国語大辞典、第8巻(こく~さこん)、p.351、小学館、1976年4月15日第1版第2刷発行
  1. ^ 二村隆夫の指摘の原文箇所は正確には次の通りである。「実験は必ずしも一致しないし、漢書においても、この制は黄帝の定めることろと記しているので、制度に権威をもたせるために伝説を持ってきたものと考えられる。」
  2. ^ 狩谷棭斎の指摘は正確には次の通りである。『秬黍の事は牽強の説なれども、『漢書』に是れを載せしより、後の尺度の起りを云ふ者、皆なこの説に従ひたり。』


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