大阪府和泉市元社長夫婦殺害事件
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刑事裁判
大阪地方裁判所堺支部は、公判前整理手続を、2013年(平成25年)4月25日に終えた[31]。直接証拠が乏しいため、手続きには長期間を要していた[31]。同日、大阪地裁堺支部は、裁判員裁判で審理される強盗殺人事件について、公判予定期日を指定し、5月20日に初公判を開き、6月26日に判決公判を開くことを決定した[31]。検察側は、状況証拠を積み重ねた結果「S以外に犯人はいない」と立証する構えを見せた反面、Sの弁護人は、強盗殺人事件について無罪を主張する方針を決めた[31]。
第一審(大阪地裁堺支部)
別件窃盗罪などの区分審理
裁判員裁判の対象事件と、対象外の事件を分割して審理する「区分審理」を適用の上で、2013年5月7日、大阪地裁堺支部(畑山靖裁判長)で、裁判員裁判の対象外の、窃盗罪など3事件についての初公判が開かれた[32]。その3事件の起訴状によれば、Sは「2003年11月頃、新築工事の作業員として出入りしていた夫婦宅で、腕時計を盗んだ」「2003年11月10日頃、泉南市内で、勤務先の経営者の高級腕時計を盗んだ」「2008年7月14日、堺市西区内の元同僚男性宅で、高級腕時計・ネックレスを盗んだ」とされた。冒頭陳述で、検察側は「犯行後、盗品を質入れしていた」などと主張した[32]。罪状認否で、Sは起訴事実を否認し、弁護側は「公訴時効が完成している」などと主張し、免訴を求めるなどした[32]。この公判では、3事件について有罪・無罪を判断の上で、量刑に触れない部分判決を15日に言い渡した後、20日から強盗殺人事件について審理し、量刑を含めた最終的な判決を、6月26日に言い渡すこととなった[32]。
5月10日の公判で、検察側論告・弁護側弁論が、それぞれ行われた[33]。検察側は「Sが腕時計を盗んだことは明らかだ」などと主張した[33]。その一方で、弁護側は夫婦宅の窃盗事件について「時計は敷地外の道路上に落ちていた」と主張し、占有離脱物横領罪を適用した上で、同罪の公訴時効成立による免訴を求めた[33]。また、「勤務先経営者に対する窃盗事件は、犯行日に誤りがある」として、公訴時効の成立を主張し、3件目の元動力宅での事件については「元同僚から譲り受けた」として、無罪を主張した[33]。
5月15日、大阪地裁堺支部(畑山靖裁判長)は、3事件すべてについて「Sの犯行と推認できる」として、有罪とする部分判決を言い渡した[34]。
本事件についての審理(裁判員裁判)
大阪地裁堺支部(畑山靖裁判長)で、2013年5月20日、強盗殺人罪などについての初公判が開かれた[35]。冒頭陳述で、検察側は「Sは、遺体の見つかったガレージを管理しており、犯行直後には夫婦の高級腕時計を質入れした」などの状況証拠を挙げ、「犯人はSで間違いない」と主張した[35]。続いて、弁護側は冒頭陳述で、「真犯人は、Sとは別人の2人の男と思われる」と主張した上で、事件後、大阪府警が採取した血痕などを、鑑定せずに紛失し、取り調べ時に警察官がSを怒鳴りつけるなど、違法な捜査が行われていたとして、公訴棄却を求めた[35]。罪状認否で、被告人Sは「夫婦の殺害など絶対にやっていない」と述べ、起訴事実を否認し、無罪を主張した[35]。
2013年6月5日に開かれた公判で、被害者参加制度を利用して、被害者の息子・娘が、それぞれ意見陳述した[36]。2人は、両親への思いを涙ながらに語り、Sに死刑を適用するよう求めた[36]。それまでの公判で、Sは殺害についての起訴事実を否認し、一部黙秘した[36]。
2013年6月10日午前、論告求刑・最終弁論公判が開かれ、検察側はSに対し、死刑を求刑した[37]。論告で、検察側は「事件前年の2003年、Sは夫婦宅に、新築工事で出入りしていた」「遺体が発見されたガレージの借主だった」「事件直後、奪われた男性の腕時計を質入れした」などの状況証拠を挙げた上で、「Sが犯人であることは明らかで、残虐・冷酷な犯行だ。Sは反省しておらず、矯正は不可能だ」と主張した[37]。同日午後、最終弁論が行われ、弁護側は「Sは殺害に関与していない。検察側は、状況証拠を積み重ねた上で、Sを犯人視しているが、直接的な証拠はなく、憶測にすぎない」として、検察側の死刑求刑に反論し、無罪を主張した[38]。最終意見陳述で、Sは「遺体を損壊し、遺棄したのに関与したのは事実で、本当に申し訳ない」と謝罪したが、その一方で「殺害は絶対にやっていない」と述べ、この日で公判は結審した[38]。
2013年6月26日、判決公判が開かれ、大阪地裁堺支部(畑山靖裁判長)は、検察側の求刑通り、被告人Sに死刑判決を言い渡した[39][40]。大阪地裁堺支部は、判決理由で「Sが、▽遺体をガレージに運搬・遺棄した▽事件直後、被害品の腕時計を質入れし、得た50万円をすぐに使った」などと認定した上で、「いずれもSと犯人とを強く結びつける証拠だ」と指摘した[40]。その上で、「Sが犯人でないとすれば、S以外の第三者が、強盗殺人の犯行に及んだうえ、被害品の腕時計を処分することを許し、Sに遺体を遺棄させるといった、特段の事情がない限り、合理的な説明がつかない」と述べた[40]。また、S・弁護人が「真犯人は別の男2人だと思う」と主張していたことに対しては、「徹底した裏付け捜査を尽くしたにもかかわらず、そうした男らの存在は確認されていない。Sが架空の人物を作り上げているとしか考えられない」と退けた[40]。そして、「Sが犯人だと確実に認められる」と認定した地裁支部は、「2人の命を奪った非人間的で冷酷な犯行だ。Sには反省・悔悟の気持ちが全くなく、改善・矯正の可能性はない」と述べた[39][40]。弁護側は判決を不服として、大阪高等裁判所に即日控訴した[39][40]。
控訴審(大阪高裁)
2014年(平成26年)7月30日、大阪高等裁判所で、控訴審初公判が開かれた[41]。弁護側は「Sは殺害には関与していない。犯行内容も証拠上明らかではないのに、捜査機関のストーリーに沿い、Sを犯人と認定した第一審判決は、疑問が残る」と主張し、改めて無罪を主張した[41]。一方、検察側は、被告人S・弁護人の控訴を棄却するよう求めた[41]。
2014年12月19日、控訴審判決公判が開かれ、大阪高裁(笹野明義裁判長)は、第一審の死刑判決を支持し、被告人S・弁護側の控訴を棄却する判決を言い渡した[42][43]。大阪高裁は、判決理由で「Sが遺体を遺棄したこと、被害者の腕時計を質入れし、50万円を得ると、その大半をすぐに使っていたことから、Sが犯人であることは明らかだ。別の人物が殺害したとうかがわせる証拠もなく、死刑とした第一審の判断は妥当だ」と認定した上で、「非人間的で冷酷な犯行であり、極刑をもって臨むしかない」と結論付けた[42][43]。弁護側は判決を不服として、最高裁判所に即日上告した[42][43]。
上告審(最高裁第三小法廷)
2017年(平成29年)8月3日までに、最高裁判所第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は、上告審口頭弁論公判開廷期日を、2017年11月7日に指定し、関係者に通知した[44]。
2017年11月7日、最高裁第三小法廷(戸倉三郎裁判長)で、上告審口頭弁論公判が開かれ、結審した[45][46]。弁護側は、Sの犯行を裏付ける物的証拠などがないことを根拠に、「犯行状況などから、真犯人が別にいる可能性がある」として、改めて無罪を主張した[45]。一方、検察側は「第三者の関与を示す証拠はなく、Sの主張は、刑事責任を免れるための虚偽の弁解だ」と反論し、上告棄却を求めた[45]。
2017年11月15日までに、最高裁第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は、上告審判決公判開廷期日を、12月8日に指定し、関係者に通知した[47]。
2017年12月8日、上告審判決公判が開かれ、最高裁第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は、一・二審の死刑判決を支持し、Sの上告を棄却する判決を言い渡した[48][49]。これにより、Sの死刑が確定することとなった[48][49]。
判決文出典
報道出典
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- ^ a b c d e f g h i j k l 『読売新聞』2010年12月4日大阪朝刊第一社会面39面「阪南ドラム缶遺体 夫婦強殺容疑 男を再逮捕 借金数百万円、車など奪う」
- ^ a b c d e f g h i j 『読売新聞』2009年11月27日東京夕刊第一社会面19面「ドラム缶遺体 駐車場借り主を逮捕 夫婦の車内に血痕/大阪府警」
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- ^ a b “夫婦強殺:50歳男の死刑確定へ 最高裁が上告棄却”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2017年12月8日). オリジナルの2017年12月8日時点におけるアーカイブ。 2017年12月8日閲覧。
- ^ a b インパクト出版会 2017, pp. 205
- ^ インパクト出版会 2017.
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