合同会社
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 03:31 UTC 版)
概要
合同会社のすべての社員[注釈 1]は、株式会社の株主と同様に、会社の債務について有限責任である(会社法576条4項参照)。このことは、合名会社の全社員および合資会社の無限責任社員が会社の債務について無限責任を負うこと(同条2項、3項参照)と対照的である。
出資と経営が株主と取締役に分離し意思決定機関が事項によって異なる株式会社に対し、合同会社をはじめとする持分会社は出資と経営が一体である。そのため、内部関係・意思決定手続の設計が簡易で、合同会社は社員全てが有限責任であることから、新規設立が認められなくなった有限会社に代わり小規模事業の法人化に利用されることが多い。また、外国企業の日本法人設立に用いられたり、証券化の際の受け皿としても利用されたりする[2]。
会社法の施行によって最低資本金制度が撤廃され、株式会社形態で事業を法人化する障壁も下がったが、法人登記費用など設立費用は合同会社が有利である(後述)。
「合同会社」という名称は、会社法制定に関する法制審議会の議事録によれば特段に積極的な意味はなく、単に従来からある合名会社・合資会社に「合」の字を揃える意図から選ばれたに過ぎず、社員(=出資者)1名のみでも設立可能である。
以下、会社法については条数のみ記載する。
表記方法
合同会社において、法人名を英文表記する場合に「...... LLC」として使用される例もあり、定款に英文社名を記載する際にも使用できる。
LLC 以外では、西友や旧EMGマーケティングのように、Godo Kaishaの略「GK.」や「G.K.」を用いる法人もある。
歴史
2006年(平成18年)5月1日に施行された会社法で新たに設けられた会社形態で、国税庁の2014年(平成26年)度の調査で約39,400社が存在する。
2006年4月30日までは、商法の旧第二編が規定していた株式会社・合名会社・合資会社と、有限会社法が規定していた有限会社の4種類の会社形態があったが、新たな会社法は、旧来の株式会社および有限会社(特例有限会社)を統合した株式会社と、合名会社・合資会社および新設の合同会社を包含する持分会社、の2種の会社類型に整理した。
制度開始から1年で約5,000社が設立され(合資会社は年約1,600社、合名会社は年約100社)、年を追うごとに設立数は増え、2014年(平成26年)度には約19,800社が設立されるまでになった(株式会社は約86,000社)。
現在、合同会社は設立がとても簡単なので、個人事業主の「法人成り」だけでなく、大企業、大学・研究機関等が参画するものまで、さまざまな規模の共同事業や子会社事業・ベンチャー事業などで「合同会社」の形態が利用されている。
また、Google、Apple、Amazon、ワーナーブラザースジャパン、などの外資系企業の日本法人も従来の「株式会社」から「合同会社」に組織変更している。
注釈
出典
- ^ 第一法規 (2006年1月12日). “企業が知っておくべき法律知識 日本版LLP、日本版LLCとは?”. ITmediaエンタープライズ. 2021年8月4日閲覧。
- ^ 川井信之 2021(iBooks、371-372/375)
- ^ 川井信之 2021(iBooks、370/375)
- ^ “公証事務”. 日本公証人連合会. 2024年1月11日閲覧。
- ^ “No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁 (2023年4月1日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “合同会社の設立手続について”. 法務省. 2024年1月11日閲覧。
- ^ “今さら聞けない、「GAFA」日本法人がすべて「合同会社」の理由”. 税理士ドットコムトピックス (2018年9月27日). 2021年8月4日閲覧。
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