剛体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/28 02:26 UTC 版)
剛体の静力学
物体に作用する力を表現するには、大きさ(magnitude)、方向(direction)、作用点(point of application)の3つの要素が必要となる[1]。 物体が広がりを持たない質点の場合は、力の作用点は質点の位置に一致するため考える必要がない。 一方、広がりを持つ物体の場合は作用点がどこにあるかを考える必要がある。しかし、変形を考えない剛体の場合は、作用点を力の方向に平行な直線に沿って動かしても力が及ぼす効果は変わらない[1]。作用点を通り、力の方向に平行な直線は力の作用線(line of action)と呼ばれる。
大きさと方向を持つ力は、ベクトル量として表される。剛体の場合はこれに加えて作用線の情報が必要となる。作用線の情報は、適当な点のまわりの力のモーメントとして表される。 剛体の釣り合いを考える際は、力の釣り合い(力のベクトル的な和がゼロ)の条件とともに、力のモーメントの釣り合い(力のモーメントのベクトル的な和がゼロ)の条件が必要となる。
剛体に作用する力
剛体の部分 i に作用する力 Fi は、外力 fi と、部分 j から及ぼされる内力 fi,j の和
として表される。
剛体に作用する総ての力の合力は
で表される。内力の合力は剛体の部分 i と部分 j についての和であるが、添え字を入れ替えて
と変形できる。これは作用・反作用の法則により各々の i,j の組に対して であり、外力についてのみ和を取れば良い。
剛体に作用する総ての力のモーメントの合力は
で表される。内力の部分の添え字を入れ替えて、作用・反作用の法則を用いれば
と変形できる。内力の作用線が i,j の相対位置に平行である場合には、ベクトル積の性質によりゼロとなり、やはり外力についてのみ和を取れば良い。
静力学的自由度
3次元空間において、剛体の静力学的な自由度は6である。 剛体の自由度が6であることは次のように示される[2]。
- 剛体に固定された点の位置は3次元空間において3つの自由度で指定される。
- 剛体に固定された第2の点を考えれば、第1の点との距離が変化しないという剛体の条件から、2つの自由度で指定される。
- 直線上にない第3の点を考えれば、第1と第2の点との距離が変化しないという剛体の条件から、1つの自由度で指定される。
- 第4の点以降は、第1と第2、第3の点との距離が変化しないという剛体の条件から自由度が増えることなく決まってしまうので合計の自由度が6であることが示される。
これは第1と第2の点を結ぶ軸の方向が2つの自由度で指定され、この軸の周りの回転1つの自由度で指定されると言い換えることもできる。すなわち、3つの自由度で剛体の位置が指定され、残り3つの自由度で剛体の姿勢が指定される。自由度の選び方にはある程度の任意性があるが、通常は剛体の位置は重心座標で指定され、剛体の姿勢は重心周りの回転角で指定されることが多い。
- ^ a b 中村 他『建築構造力学』 pp.9-10
- ^ 藤原『物理学序論としての力学』
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