内積
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/24 22:16 UTC 版)
例
様々な空間に複数通りの内積が定義できる。一覧表で概要を、各節で詳細を説明する。
ベクトル空間 | 内積関数 | notes |
---|---|---|
ℝn | 別名: 標準内積 | |
A は正定値対称行列
とも表記 | ||
ℂn | ||
H は正定値エルミート
とも表記 | ||
Sn×n | ||
L2(Ω) |
- 実n次元ベクトル空間 ℝn
- 実 n-次元数ベクトル空間 ℝn において、任意の二元 x = (x1, x2, …, xn), y = (y1, y2, …, yn) に対し、とすると、この ⟨,⟩ は(正定値な)内積の性質を満たす。これを、ℝn の標準内積と呼ぶ。標準内積は ℝn を n行1列の行列と同一視することで、転置⊤と行列積を用いてと表わせる。また、n 次の(正定値)対称行列 A を用いてとおくと、これも(正定値)内積の性質を満たす。
- 複素n次元ベクトル空間 ℂn
- 複素 n-次元数ベクトル空間 ℂn において、任意の二元 x = (x1, x2, …, xn), y = (y1, y2, …, yn) に対し、 とすると、この ⟨,⟩ はエルミート内積の性質を満たす。また、n 次の(正定値)エルミート行列 H を用いてとおくと、これも(正定値)エルミート内積の性質を満たす。
- 対称行列の空間 Sn×n
- n 次対称行列の空間 Sn×n について、X, Y ∈ Sn×n に対して と取ると、これは内積を与える。
- L2空間 L2(Ω)
- Ω をユークリッド空間の開集合とする。Ω 上の二乗可積分な関数全体の成す集合を関数がほとんど至る所等しい(測度零の集合上でとる値を除いて等しい)という同値関係で割って得られるルベーグ空間 L2(Ω) には、二乗可積分関数 f, g について と置いて、エルミート内積が定まる。より一般に、(Ω, F, μ) を測度空間とすると、L2(Ω, μ) の二元 f, g についてと置いたものはエルミート内積の性質を満たす。
注釈
- ^ エルミート対称性のもと、第一変数に関する線型性は第二変数に関する共軛線型性から出る。同様に、第二変数に関する共軛線型性は第一変数の線型性から出る。
- ^ 注意 文献によっては、エルミート内積および半双線型形式は第二引数に関して線型、従って第一引数に関して共軛線型とするもの(特に物理学や行列環に関するもの)と、それとは逆に第一引数に関して線型、第二引数に関して共軛線型とするものがある。前者の分野においては、上記の内積 ⟨x, y⟩ を(量子力学におけるブラケット記法で)⟨y | x⟩ と書いたり、(点乗積を行ベクトル A と列ベクトル B との行列の積 AB と見て)y†x などと書くことも多い。ここでは、ケットベクトルと列ベクトルはベクトル空間 V に属するベクトルと同一視され、ブラベクトルと行ベクトルは双対空間 V* に属する双対ベクトル(つまり線型汎函数)と同一視され、複素共軛は双対性と関連付けられる。また現在ではより抽象的な文脈においてもこの ⟨x, y⟩ が(y に関してではなく)x に関して共軛線型とする定義を採用するものが時折みられる[1]。また、いくつかの文献で妥協点として ⟨ , ⟩ と ⟨ | ⟩ を両方使い、それぞれどちらの引数に関して共軛線型なのかを区別するものとして扱うものがある。
出典
- ^ Emch, Gerard G. (1972). Algebraic methods in statistical mechanics and quantum field theory. New York: Wiley-Interscience. ISBN 978-0-471-23900-0
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